第4話

A(旅 人)「『あの村は、あなたの村ですか?』⁉」

B(正直者)「……はい」

A(旅 人)「だから、また変なこと言って…………え? はい?」

B(正直者)「はい」

A(旅 人)「ホ、ホントに……?」

B(正直者)「はい」

A(旅 人)「……?」


A(旅 人)「いや…………じゃあ、もうこれで終わりじゃん。だって、村人が正直者でも嘘つきでも『はい』って言った方に行けば、そこが正直村なんだから……」

B(正直者)「……はい。……はい。……う、うう」

A(旅 人)「あ?」


B(正直者)「そのときの私には、『はい』と言うことしか出来なかった。だってその言葉しか、しゃべることを許されていなかったから……」

A(旅 人)「おいおいおい、なんか変なナレーション始まったよ?」

B(正直者)「もしも、『はい』以外の言葉を話すことが出来たなら……私は絶対に、彼女を止めていたはずだ。彼女が私の村……あの、恐ろしい『正直村』に行ってしまうことを、阻止したはずだ。だって……だって……あの村に行ってしまったら……きっと彼女はもう……生きては帰れない……。そんなこと、私には分かっていたから……」

A(旅 人)「だ、だから、おかしな設定を付け足すな……っていうか、すでに普通に『はい』以外の言葉しゃべってるし!」


B(正直者)「私はきっと、全力で彼女を止めるべきだったんだと思う……。『はい』しか言えないなんてルールを無視してでも、彼女を『正直村』に行かせてはいけなかったんだと思う……。私は、きっと今日のことを一生忘れることが出来ないだろう……。私のせいで一人の女性の命が失われた、今日という日を……」

B(嘘つき)「気にしないほうがいいよ……」

A(旅 人)「もう一人も出てきちゃったっ⁉」


B(嘘つき)「きっと、大丈夫さ……。あの村のやつらだって、鬼じゃない。きっと、きっとあの旅人も…………う、うう……」

B(正直者)「あなたは相変わらず、嘘が下手ね……」

A(旅 人)「なんかよくわからないドラマが始まっているし!」

B(正直者)「さあ……もう行きましょう? 私たちだけでも、ここから逃げないと……」

B(嘘つき)「ああ……そうだな。あの旅人の犠牲を、無駄にしないためにも……」



A「おい、勝手に殺すな! っていうか、何の話だったか、わけわかんなくなっちゃってるしーっ! いい加減にしなさーいっ!」

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