第3話
B(正直者)「ティロリ、ティロリ、ティロリ……。ああ、久しぶりに故郷の村に帰ってきたわ」
A(旅 人)「ポテト揚げるな! っていうかさっきから思ってたけど、このパートいらないよね⁉ さっさと行くよ! 『あの村は、あなたの村ですか?』!」
B(正直者)「そうね、まず言っておきたいのは……私は村長ではないから、『私の村』なんてものは存在しない、ということね」
A(旅 人)「うわぁ……」
B(正直者)「そして、仮に『私の村』という言葉が『私が住んでいる村』という意味だと解釈した場合でも。実は、その質問は簡単に答えられるものではないわ。なぜならば……さっきから言っているように、私はあの村に『久しぶり』に帰ってきたの。つまり、実はすでにあの村が、私が住んでいたころとは大きく変わってしまっているかもしれない。あるいは何かの手違いで、あの村の私の住民票がなくなってしまっているかもしれない。そんな可能性も、ゼロではないわけよ。
だから、あの村が、私が知っている正直村ではない可能性が少しでもある以上、ここで私が『はい』と言い切ってしまうことは、本当のことしか言えない『正直者』としてのアイデンティティが……」
A「うるっせえわ! めんどくさいこと言うの禁止! 次!」
A(旅 人)「『あの村は、あなたの村ですか?』!」
B(嘘つき)「そうね。もしもあの村が私が知っている『正直者の村』のままだったなら、嘘つきの私としては『はい』と言うことができるでしょう。けれど、もしも私が離れている間に、『正直村』と『嘘つき村』が合併して一つの村になっていたりしたら……」
A「おーいっ⁉ こっちの村にもめんどくさいヤツいるんだけどっ⁉ っていうか、同一人物でしょっ⁉」
B「違うわ。生き別れた姉妹よ」
A「複雑な家庭事情設定を作るんじゃないよ!
ああもう、次が最後だからね⁉ 次の質問には、『はい』だけで答えること! これまでみたいな、めんどくさい言葉とか、トンチは無しだからね⁉」
B「はいはい、分かりました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます