第30話 金銀パールはプレゼントできないけどクレープをどうぞ!

「今日は何食べたいですか?」


「え?」


「ご飯です」


みさきがそう言って壱にニッコリ微笑む。


「うん」


「……ダメですか?」


「うんん」


「何食べます?」


「うーん」


「決まらないならとりあえずこのままスーパーに行きましょう」


「うん」


「では、お手を拝借」


みさきはそういって一の手を握りしめる。


「え?」


「逃しません」


「うん」


一の顔が真っ赤になる。


「おいおいおいおい」


すると金髪に鼻ピアスをつけた青年が現れる。


「なんでしょう?」


「随分仲が良さげだな」


「なにか問題でも?」


みさきが警戒を強める。


「ああ、お前らは手をつないで俺の目の前を通り過ぎた」


「はい」


一はうなずく。


「俺は決めているんだ。

 俺の目の前で手をつないだカップルにこの店のとっておきのクレープを馳走することをな!」


「え?」


一とみさきには何が起きたのかわからない。

ただニッコリと笑った金髪鼻ピアスの青年がクレープをふたつ差し出した。


「ほら書いているだろ?

 ここに!【手をつないだカップル限定・クレープを2個プレゼント】って!

 なのに誰も来ないんだ!なんでだ!」


金髪鼻ピアスの青年はそのままがっくりと肩を落とした。

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