幕間 レティシアside(作者が風邪引いたから幕間で許して)

「———……アルト……」


 私———レティシア・フリージングは、既に5日の間眠り続けている男の子の名前を呟く。

 そんな男の子———アルトは今、私の目の前で全く身体を動かさず、静かに規則正しい寝息を立てていた。


 医者が言うには、『身体は既に元の状態に戻っていますが……体内に溜まった異常なまでの魔力によって覚醒が妨げられているようです』とのことらしい。

 同時に『これほどの魔力を体内に宿していながら、身体が爆散しないどころか命を落とさないなんてそんな奇跡があるんですね……』と驚いていた。


 そう言われた時は流石に悲鳴が出たわね……。


「アルト……いつになったら起きるの?」

「…………」


 私の問い掛けに返事はない。

 それどころか聞こえているのかすら怪しく、生きているのに死んでいるみたいで胸が痛くなった。


「私はどうすればいいの……?」


 私は考える。

 何か彼のために出来ることがあれば、私は何でも出来る。


 あ、そう言えばお父様と陛下、医者を交えて話していたわね……。

 確か……魔力を体外に放出するには本人の魔力操作で吐き出すか……せ、性行為をするか……だ、だったわね。


 私は自然と頬に熱が帯びるのを感じながら、チラッとアルトを見る。

 

「……間抜けで……頼もしい顔……」


 少しも昔と変わらない———私の好きな人。


 そう、私が彼と初めて出会ったのは、この学園じゃない。


 アルトは覚えていないようだけれど……最初に彼と出会ったのは私の初めての社交界である1年に1度行われる国中の貴族が出席するパーティーだった。

 そんな中で、7歳だった私は初めての社交界、そして家族以外の貴族達に圧倒されていた。


 だからか、貴族達の視線や陰口に全く怯まずひたすら食べ物に食らいついている1人の少年の姿に視線が吸い寄せられた。

 そして、少し話てみたくもなったのだ。


「———ねぇ、何でそんなに急いで食べてるの?」

「ん? 誰だよアンタ」


 私が話し掛けると、彼は一瞬だけ私に視線を寄越すとぶっきらぼうにそう言った。

 普通の貴族ならそれだけで激怒案件だろうが……普段から皆んなに丁重に扱われてきた私にとっては新鮮で、より興味が湧いた。


「そんなの何だって良いじゃない」

「なら俺の久し振りの豪華な食事の邪魔をしにきたのか? それならあっち行って! 食い溜めしないと折角神のお陰———ん生したのに直ぐ死んじまう。ほら、邪魔するならあっち行った行った」

「じゃ、邪魔なんかしないわよ!! ……と、ところで、さっきから他の人に沢山見られてるけど……緊張しないの?」


 これは純粋な疑問だった。

 彼は見た感じ私と同い年くらいで……服も新しそうだったからきっと私と同じで社交界は初めてのはずだ。

 それなのに全然気にしてなさそうなのはどうしてなんだろうか。

 

 そんな意図の籠もった私の問いに———。




「———馬鹿じゃねぇの?」

 



 彼は呆れたように私に言葉を返した。

 馬鹿と言われて咄嗟に言い返そうとする私だったが、それより先に彼が話を続ける。


「あのな……周りの目なんて気にしても意味ないんだよ。どれだけ取り繕ったってその内素なんかバレるし、問答無用で嫌う奴だっている。ならさ、自分の好きなように振る舞って、それでも好意的に近付いてきた人のことを大切にすれば良いじゃん。そうすれば楽だろ? まぁ俺はそもそも気にしてたら死ぬから気にしないんだけどな」


 彼はそれだけ言うと、再び胃の中に食べ物を詰め込むような食事を再開する。

 そんな彼を見ながら……私は返す言葉が見つからなかった。

 

 でも———自分がこれから目指す姿が定まった気がした。


 

 私は……自分を全面に出して生きるわ。



「———ねぇ、貴方の名前は?」


 私に助言をくれた、少年に尋ねる。

 すると少年は———パチパチと目を瞬かせる。


「美幼女に名前を尋ねられるとは……フィクションみたいだな」

「え?」


 私から漏れた声に、咄嗟に少年はなんでもないと首を横に振ると……ニヤリと笑みを浮かべた。





「俺の名前は———アルト・バーサク。日々借金返済のための小銭稼ぎに勤しむ世界一大忙しな貴族子息だよ」




 






「———ほんと、今も昔も変わらないわね……アンタは」


 私は昔のことを思い出して小さく笑みを零す。

 同時に———覚悟も決まった。

 

 私はそっと自分のネグリジェの肩紐に手を添え、肩から外す。

 もう片方もずらせば……ネグリジェが地面に落ちた。

 更に付けていた下着も脱ぐ。

 

「……〜〜っ」


 私とアルト以外誰も居ないし来ないとわかってはいるが……異性の前で裸体を晒すのはやはり恥ずかしい。

 でも……止まるつもりはない。

 


 彼は、私が歩く暗い道を照らす光だった。

 彼がいなければ今の私は居ないかもしれない。



 だから今度は———私が、彼が見失った道を照らす光になるわ。





「———アルト、ずっと前から……貴方が好きよ。それと……ごめんね」





 私は眠る彼の唇にそっと自らの唇を合わせ、彼の服の中に手を這わせた。





 この夜———私と彼はお互いの純潔を捧げ合った。


 

 


—————————————————————————

 短いけど……許して皆んな。

 作者、喉痛くて鼻もズビズバ、身体も怠いんだ……。

 明日は多分……治ってるはず。

 た、多分ね?


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!


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