第28話 何もなく終わるわけなく……!?

「———ほ、本当にそれだけで良いのか……?」


 借金の請求書にサインをした陛下が肩透かしを食らった様子で呻く。

 はぁ……陛下は借金が無い生活の素晴らしさが分かってないな。


 俺は長年に渡って俺を苦しめて来た借金を返済しきったという現実を噛み締める。(自分で返したとは言ってない)


「勿論です……! あぁ……遂に数年に渡る借金返済の重荷が消えた……ははっ……ははははははははは!! これでもうあのクソ両親と堂々と絶縁できるぜ!! ざまぁあああああああああああああああ!!」


 俺はあまりの清々しさに人目も気にせず高笑いを響かせる。

 ははっ、今ならどんなヤバい奴が来ても真正面から煽りに煽りまくってはっ倒せそう。

 

 傍から見れば完全にイカれた奴な俺をドン引きした様子で見ながら陛下が零した。


「……ほ、本当に嬉しそうだな……」

「当たり前ですよ! 陛下に分かりますか!? 俺が作った借金じゃないのに何故か俺が払わされる地獄!! そのせいか取り立てのヤクザみたいな奴らとめちゃくちゃ仲が良くなったくらいですよ!!」


 そう、俺が借金の返済を始めたのは10歳の頃。

 始めは親が払う金額に少し添える程度だったが……1、2年前からは完全に俺が全額払っていた。

 そのため、いつの間にか超強面な取り立て屋のハンさんとゼンさんと仲良くなり、毎月借金の返済日の夜は豪華なご飯を奢って貰える関係にまでなった。

 何なら始めの頃は俺の修行の手伝いまでしてもらっていたほどだ。


 あの2人のお陰でメンタルも鍛えられたし、今度は2人に何か奢らないとな……。

 あ、そう言えばハンさんの娘さんが俺と同い年で同じ学園に入るって言ってたな。

 今度訊いて会ってみようかな。


 俺がもはや家族より仲の良い取り立て屋のことを思っていると……先程までずっと無言だったレティシアが俺の袖を引っ張る。

 何事かと思ってレティシアの方を向けば……全く感情の浮かんでいない真顔で尋ねてきた。


「……アルトの両親は亡くなってるの?」

「え……死んではないけど……」

「それなのにアルトに借金を払わせてるの……? 両親は何をしているの?」

「領地の経営じゃないですかね? もう数年間くらいマトモに話してないのであまり分からないんですよね」

「そう……なら、取り敢えず私のアルトを苦しめた罰として、私の手でぶん殴っていいかしら?」

「あ、どうぞどうぞ。寧ろ殴ってやって目を覚まさせてやってほしいくらいです」


 そうは言ったものの……俺は内心ガタガタ震える。


 こ、こえぇ……俺のために怒ってくれてるのは分かるけどこえぇ……。

 絶対怒らせないようにしよ……あ、クソ親達は全然殴ってもらって構いませんよ。


 俺は、拳を握りながら殺意を滾らせるレティシアに恐怖すると同時に誓う。

 その殺気から逃れるためにそっと離れ———。


「アルト君」


 ようとした俺だったが、突然後ろからゼノン様に話し掛けられてビクッと肩を震わせる。

 普通に心臓飛び出るかと思った。


「な、何でしょうか……?」

「生活費と言ったが……レティシアと結婚するなら必要ないだろ?」

「え、いや……」

「———必要ないわ。今まで頑張ってきたアルトがこれ以上頑張る必要なんて無いもの。勿論死ぬまでフリージング家が負担するから」


 きゃーーレティシア様素敵!!

 結婚し———するんだったな。

 てかこれだと完全に将来は妻に金をせがむゴミクズニートルートにまっしぐらじゃない?

 ……楽を追求するならそれも悪くない……いやその前に追い出されそうだな。


 心の中で冷静なセルフツッコミを入れている俺に、ゼノン様が提案してきた。




「生活費が必要ないなら———俺の娘はどうだ?」

「へっ?」




 ……何言ってんのこの人??

 真横にレティシアがいるんだが??


 因みにレティシアの方は怖くて見れない。

 同じくララ様の方も結婚を断ったのでどんな顔をしているか怖くて見れない。

 ただ……別々の所から視線を感じるのは俺の思い違いではないと思う。


 俺は失言すれば修羅場が確定するという最悪な状況に冷や汗をかきながら恐る恐る尋ねる。


「えっと……それは、結婚と言うことですか……?」

「ああ。勿論ん正妻はレティシアで、娘は側室でいい。どうせ領地なんか渡しても喜ばんだろ。勿論謝罪金は出すが……それだけじゃあ俺の気が済まん。どうだ? セナは21だが……親の贔屓目を介さずともかなりの美貌と器量の持ち主だ」

「……でも……そのセナ様が良しとしないんじゃ……」


 俺が苦し紛れにほんの僅かな希望に縋って尋ねてみるが……。


「安心しろ、アルト。お前は……娘から訊いたタイプの男性像ドンピシャだ。娘は尽くしたがりでな……優しくて少しダメ人間の方が良いらしい」


 ナチュラルに俺を貶すやんこの人。

 ……さて、後ろの視線がそろそろ痛くなってきたな。

 喉元に刀身を当てられてる気分ってこんな感じだったんだな……。


 知りたくなかったよチクショウ……と内心愚痴を零したその時———。



「———それは見過ごせないですよ、ゼノン様。先に結婚を申し込んだのは私ですから。それに———実はもうキスだってしたんですよ」

「「!?!?!?」」



 まさかのララ様から爆弾が投下された。



 完全に空気が凍る。

 陛下、ゼノン様が目を見開いて俺の方に視線を向ける。

 特に陛下の目が凄まじい。


 対して、元から知っていたレティシアは特に動じることなく只管に俺の答えを待っているようだ。

 それもそれで怖いのだが。


「アルト……?? ララの言っていることは本当なのか……? 結婚する気のない女性にキスをしたのか……??」

「は、ははっ……ははは……結局こうなるのね……」


 俺は———腕を使って『T』を作って叫ぶ。




「———タイムっ!!」




 さぁ———後は頼んだ、スレ民!!

 どうか俺を助けてください!!



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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!


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