第21話 アルト、思い出す(大失態)
「———あ、アルト君が初めてマトモに学園の授業を受けてる……!?!?」
「……失礼ですね……ミール先生……」
「失礼じゃないですよ! 初日はお腹が痛いとか言って数時間もトイレに篭り、昨日なんて全く授業に顔すら出してないじゃないですか!!」
……そう言えばそうだったな。
昨日は色んなことがありすぎて全然気にしてなかったわ……。
俺は緑の髪に150あるかないかの子供体型の美少女先生———ミール先生の怒りの指摘に納得する。
現在は2時間目の授業が始まったばかりで、1時間目からミール先生が担当していたのだが……今の今俺がいることに気付いたらしい。
何かポンコツな先生だな……と思っていると、先生はクラスメイト達に『少し待っててくださいね。私はアルト君と話がありますから』とだけ言って俺を問答無用で生徒指導室に連行した。
そして俺を部屋にある唯一の机を挟んだ対面の椅子に座らせると……反対側に座ったミール先生が足が地面に付かなくて一瞬バタバタした後で訊いてくる。
「アルト君。担任として聞いておきますけど……昨日は何をしていたのですか?」
「……爆弾売って精霊石を買いに行って生徒会に連行されて退学の危機で王子殿下とセノンドール様と対決が決まって……その後は国王陛下に口に出すことは禁止されてまして言えません……」
「………………へっ……わ、私の耳がおかしかったのでしょうか?」
「爆弾売って精霊石を買いに行って生徒会に連行———」
「私の聞き間違いでは無いことがよ〜〜く分かったのでもうそれ以上は言わなくても大丈夫です!! ああああああ〜〜〜〜〜〜っっ」」
もうこれ以上は何も聞きたくないとばかりに手で耳を塞いで現実逃避に浸るミール先生だったが……ふと耳から手を離して言った。
「———もういいので教室に戻ってください」
「……え、先せ———」
「私は今後の身の振り方を考えるので授業はお休みです」
こうして俺は、問答無用で生徒指導室を追い出された。
そして、ミール先生は本当にあれから1度も姿を表さなかった。
「———いよいよ魔法の授業か……まぁ王子殿下達との対決に比べたらちっとも怖くないな」
昨日の後悔でテンションだだ下がりでぼんやり過ごしているとあっという間に午後となり———俺はクラスメイトの全員から距離を置かれているため、ボッチで魔法競技場に向かっていた。
因みに口ではこう言っているものの、実際は物凄く足が重たい。
ああ……放出系の魔法を使えない俺はどうしたら言いんだ……。
というか王子殿下達との対決っていつなんだ……。
何て心の中で嘆いていると……前方に俺と同じく魔法競技場に向かっていると思われるレティシアの姿が見えた。
そしてレティシアの視線と俺の視線が交差する———が、直ぐにレティシアが頬を紅潮させて照れた様子で目を逸らす。
あ、あれ……何かおかしいな……。
何で目が合っただけでそんなに照れてるの??
俺が普通に混乱を極めている傍ら、レティシアがキョロキョロと周りを頻りに気にしながら此方にやってくる。
そして俺の目の前に立ち…………立ち?
「れ、レティシア……?」
目の前に立つも何も話そうとしないレティシアに耐えきれなくなった俺が勇気を出して話し掛けてみた。
すると彼女は、耳まで顔を真っ赤に染めてチラチラと俺の顔を見ながら消え入るような小さい声で言った。
「……き、昨日のキスとか好きは……やり過ぎたけど……ぜ、全部本心だから……」
———…………お、思い出したぁ……そして最悪だ……。
———全ては皆んなが酔ってきてそろそろお開きに……となった頃に遡る。
「———アルトさまぁ……本当に私と結婚しないのですか……?」
飲み始めて数時間が経ち、陛下が仕事で早めに退席して少しした時。
流石に酔ったらしいララ様がしなだれかかっては、艶やかな吐息も混えながら耳元で囁いてきた。
酔ったせいで頬や肩が上気し、上からだと胸の谷間が見えて余計にえっちぃ。
「ら、ララさま……? あの……ものすんごくえっちなので寄りかからないでください」
「ふふふー……あ〜、もしかして襲いたくなっちゃいましたぁ?」
ララ様がお酒で完全にタガが外れているのかドレスの肩紐をゆっくりと……まるでコチラの情欲を煽るようにずらしていく。
そしてチロッと舌を出して唇を舐めると上目遣いで此方を見上げて囁く。
「……襲っちゃってもいいですよ……?」
「ちょっとララ様!? それはレティシアが許しませんからねっ!! 彼は大切なレティシアの夫なんですっ!」
しかし俺が答えを出す前に、俺のもう片方の隣に座るレティシアが俺とララ様の話に割り込んできた。
と言うか一人称がレティシアなのと語尾に『っ』が付く感じの口調が可愛すぎる!
普段のクールっぽさが抜けて、大事なものを取られまいと威嚇する子供みたいなのが特にキュート。
俺が可愛いなぁとニコニコしていると、レティシアが真っ赤になった顔のまま、潤んだ瞳で上目遣いをしながら手を広げた。
「ねぇねぇアルトっ! レティシアのこと……ぎゅーってして?」
俺は勿論無言でぎゅーをする。
レティシアはきゃーっとはしゃぎながら抱き締め返してきた。
かわゆい。
「……むーっ、レティシアずるいですよ! アルトさま、私もぎゅーってしてください」
俺とハグをするレティシアが羨ましくなったのか、ララ様がバグり散らかしたテンションでこくっと小首を傾げながら言ってきた。
勿論同じくテンションも情緒もバグり散らかしている俺は速攻でぎゅーをすれば、嬉しそうにむふーと笑みを浮かべるララ様。
「……あぁー本当に結婚してくださいよぉ……アルト君〜〜。君と結婚するのが1番幸せになれそうなの〜〜」
「ララ様……」
「ダメよアルトっ! アルトは私と結婚するんでしょっ!」
そう言って俺をララ様を引き離そうと俺の腕を抱いて引っ張るレティシアに俺は何を気が狂ったのか、試すような口調で言った。
「うーん……なら、レティシアが俺のことを今度から『あなた』って言ってキスしてくれるならレティシアに傾くだろうなぁ……」
「ほんとっ!? 言うわっ! これから2人の時はアルトのことをあなたって言うっ!」
そんな超絶馬鹿なお願いに、又もや同じくテンションや情緒がくるったレティシアがまさかの俺の唇にそっとキスをして言った。
「す、好きよ、あなた……」
「……っ、あーっ! 何でレティシアだけ……! 私もしますよ。んー!」
「っ!?!?」
まさか本当にされるとは思わず放心する俺に同じく唇にララ様もキスをして来た。
更に驚愕で目を見開く俺を見ながら、俺の唇に触れた部分をそっと舌で舐めて耳打ちする。
「……実はこれ……私のファーストキスなんですよ?」
「!?!?」
「ふふっ、これでまだ私にもチャンスはありますよね?」
———ここで陰キャの
……じ、地獄だ……終わってる……。
てかララ様のファーストキスを俺が奪ったとかマジで洒落になんねぇって!?
それに何でこんなにレティシアに好かれてるのかもさっぱり分からないしさ!!
俺は昨日の全てを思い出し、あまりのカオスさと朝思い出したやらかしが可愛く思えるほどのやらかし度合いに———膝から崩れ落ちた。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
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