第44話 覚醒レベル3
エンシェント・ヴァンパイアから獲得したURアイテム。
帰還石。
これはもりもりさんのダンジョンデバイスに入っていたものだ。
モンスターとのレベル差が大きいほど、レアなアイテムが獲得できる。
もちろん私のデバイスにもヴァンパイアから獲得したアイテムが入っている。
私のレベルは1だった。
今は経験値を取り戻してレベル2に戻っている。
けれど、レベル1がエンシェント・ヴァンパイアを倒したのだ。とどめを刺したのはもりもりさんだが、そのダメージの大半は私が与えたものだった。
私は新しいアイテムを入手していた。おそらく誰も見たことも聞いたこともない、新規のEXRアイテム。
もりもりさんは今にも帰還石を発動させようとしている。私はそれを止めようと手を伸ばしたが、彼女は決してやめないだろう。
私にはわかる。もりもりさんの意思は固い。もりもりさんも覚醒者で間違いがない。おそらく覚醒レベル2だ。同じ覚醒者だからこそ、彼女の行動が変わらないことがわかる。
私が止める前に、帰還石は発動する。その運命に逆らわなければならない。
私は自分のダンジョンデバイスから、アイテム一覧を表示する。
――――――――――――――――――――――
『EXR
対象の覚醒レベルを1上げるとともに、
覚醒ユニークスキルが開花する。
――――――――――――――――――――――
本当なら私が使うべきではない。ここまで来てくれたもりもりさんに献上してもいいし、売却して高く売れるのならば、ハンターを引退しなくてはならないもりもりさんにそれを渡してもいい。
けれど。
私は使った。
ダンジョンデバイスでは開示されない情報。
秘匿されたステータス。
更新された新たな情報が流れる。
私は新しいスキルを獲得していた。
――――――――――――――――――――――
覚醒レベル:3
覚醒ユニークスキル:ダンジョンシミュレーター使用者権限取得
――――――――――――――――――――――
ダンジョンシミュレーター。これがいったいどういうスキルなのか。まだ私にはわからない。
そして、更新された情報
――――――――――――――――――――――
人類領域侵攻計画:
まもなく人類は終焉を迎えます。
この世界に隠された秘密が暴露され、人類は絶望と恐怖の中で滅びの道を進みます。
〝A〟が人類領域へ向けて、着々と侵攻しています。
さらなる詳細に関しては覚醒LV4が必要です。防衛率0%
――――――――――――――――――――――
この〝A〟がいったい何なのか? その正体は?
わからないことだらけだが、そんなことを考えている余裕はない。
帰還石の発動を止めなければならない。
「覚醒ユニークスキル……」
――ダンジョンシミュレーター……。起動……。
見えている景色。中学校の制服を着たもりもりさん。青白く光る2つの帰還石。周囲の洞窟。それらがモザイクのようにタイル状になっていく。
これ……。使ったことがある……。
私はデジャヴを感じた。
そうか。
このダンジョン自体、巨大なシミュレーターなんだ……。
私がフレイムドラゴン・ロードと戦ったとき、2回目だと感じた気がした。
初めて戦ったはずなのに、なぜか負ける気がしなかった。
……覚醒レベル3
……ダンジョンシミュレーターが実行されます。
……
……
……
……
……
私の脳内にビジョンが流れる。鮮明な映像で、未来も過去も見える。
すべてがわかるわけではない。知ることのできる情報には制限がある。
様々な情報が私の脳内に流れてくる。
そうか、そういうことなのか……。
人類領域侵攻計画……。
人類は終焉を迎えてしまう。
今はまだ帰るわけにはいかない。
覚醒ユニークスキルであるダンジョンシミュレーター。
これは人類が使うべきではない能力だ。
何が正しいのか、何が正解なのか。
覚醒レベルはいくつまであるのか。人類は覚醒すべきなのか? あるいは覚醒するべきではないのだろうか?
本当は、ずっと眠っているべきではないのだろうか?
眠っていたほうが幸せなのかもしれない。
これは、使ってはならない禁忌のスキル。
けれど、今だけは。
今だけは使わせてもらおう。
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