第17話 216層へ
この7日間、私はふてくされまくり。
チャンネル登録者数は60万前後をいったりきたり。
閲覧者数はどんどん減って、現在は8万から10万ほど。
女子中学生がだらだら寝ているだけの配信だ。
この人数が見ているだけでも奇跡だった。
ドラゴンの経験値はとてつもないものだった。
なんと、脅威の10億超え。
ちなみに、私が与えたダメージは小さい。
ほとんどがマグマのダメージだった。
つまり、全HPを私が与えていたらと考えると、その経験値の総量は2,000億から3,000億と推定された。
けれど、普通は単独で挑むような相手ではないのだ。経験値を独り占め、なんてことは起こらないのが普通。
経験値は討伐隊の人数で割られるわけで、それを考えると私のもらった経験値はしごく妥当なものだ。いや、むしろおつりがくるくらいだ。
10億の経験値がどのくらいすごいかというと、今ワールド1位のミランダ・モリスさんが次のLV88に到達するのに200億くらいの経験値が必要だそうだ。
だから、今回のドラゴン討伐を20回くらい繰り返したら、レベルがあがる。……ってすごいのか、すごくないのか、わかりにくい数値だけれど。
でもLV88になるまでに3年はかかるとか聞いていたから、きっとすごい数字なのだろう。
そして、ドラゴンのドロップアイテム。
もうね、レアアイテムのオンパレード。
レア装備のオンパレード。
レア素材のオンパレード。
すごいアイテムばっかり。
いやあ、これを売ればうはうは。私は大金持ち。
でもね。
私はふてくされている。
レア装備っていってもお兄ちゃんの装備と同じくらいの強さ。だったら、お兄ちゃんの装備を使い続ける。
あとさ。
帰還用のアイテムはなかったし、レベルアップシードもなかったし、ステータスを大幅に増加させるアイテムもなかった。
唯一役に立ったのが、知力の実。
現在の知力を2倍に上げる。ただし、上限は50。
まあ、私のINTが1だったからね。
なにげにいままでスルーして触れてこなかったところなんだけれど、知力の実で1から2に上がった。やったぜ。
この知力の実ね、すぐに食べないと消えちゃうんだと。
しかたないから消費した。
他にも腕力の実だとか、素早さの実だとか、あったんだけれど、やはり消費期限つき。
この知力の実だけが例外で、超希少アイテムだった。
他の実は1.05倍だとか、1.1倍だとか、5%増や1割増などの効果。
普通ならこれだけでも奇跡と言ってもいいほどすごくて、レベルで言ったら数レベル分にも相当する。高レベルだったらね。
だけどね。
小数点以下は切り捨てだと?
HP 7→7(生命力の実で1.1倍)
STR 2→2(腕力の実で1.2倍)
AGI 4→4(素早さの実で1.05倍)
意味ねえ!
意味ねえじゃねえか!
知力の実以外がすべて無駄打ち!
まあ、コメント欄が爆笑の渦だったからよかったけれど。
って、私はお笑い芸人じゃあねえんだよお。
腕力の実とか、素早さの実とか、高レベルを前提として用意されているとしか思えない。LV2の私が使うなんて想定がされていないのだ。
レベルも上がらず、まったく強くもなれず、でも多額のダンジョンポイントと高価なアイテムを所持している。
いや、そんなことより、水と食糧だ……
毎日毎日、ダンジョンをうろついてモンスターを探す。
でも見つからないから、ごろごろ寝てばかり。
これは推測なのだけれど、どうやら階層主を倒したことでモンスターのポップが一時的になくなったようなのだ。7日間のあいだの平和が訪れ……
って、本当に余計なお世話だ。
まじで、まじで、餓死するかと思った。
下へ降りるシューターもなかなか見つからないし。
罠に落ちるときはすぐにハマるくせに、探すと見つからない。やっとのことでシューターを見つけたのが7日目で、モンスターがぽつりぽつりとポップし始めたのも同じ頃。
お腹をすかせまくった私は鬼のような形相でモンスターに飛びついた。
今の私は神王の長剣があるからなんとか倒すことができる。
きっと、フレイムドラゴン・ロードの百倍くらい恐ろしい形相でモンスターに向かっていたことだろう。
ダンジョンデバイスは私の頭の上に装着していた。
私の顔が視聴者に見えなかったことだけが幸いだ。
とりあえずここで水と食料を確保し、私は216層へのシューターへと飛び込んだ。
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