しょうてんがい

九戸政景

プロローグ

はい、お待たせ。いやー、良いものがあったからちょっと、いやかなり興奮しちゃったよ。やっぱりしょうてんがいで掘り出し物を見つけるとテンションが上がるよね。


え? なんでわざわざしょうてんがいにきたのかって? ほら、最近あまり一緒に出掛けられてなかったでしょ? そうそう、私が少し体調を崩したから。まあそれで心配をかけたお詫びでさっきパン屋さんのパンを奢ってあげたからそれで良いことにしてよ。


はあー……それにしても、やっぱりしょうてんがいって良いよね。街の人達の活気も漂ってくる美味しいものの香りも目を惹くお店の外装も、その全部がしょうてんがいの売りって感じがして私は大好き。


そんなにしょうてんがいが好きだと知らなかったって? そうかな……私、前から結構しょうてんがいは好きだよ? あまり来る機会こそ無かったけど、さっき言った理由があるからしょうてんがいは大好き。もうしょうてんがいなしだと生きられないくらい。


そこまで言う程か、って……もう、そんなに笑わないでよ。もちろん、あなたの事だって好きだよ。でも、あなたへの好きとしょうてんがいへの好きはまた違うだけ。


ほら、見てみてよ。お店の人達のツヤツヤとしていてにこにこ笑ってるあの顔。すれ違う人達もにこにこしながら会釈してくれるし、やっぱりしょうてんがいのこういう雰囲気は良いなぁって思うよ。あなただって嫌いじゃないでしょ?


うんうん、正直者はもっと大好き。なんか本当に天国みたいで私は本当にしょうてんがいが好きだなぁ。


そんなにしょうてんがいが好きになったのは何か理由があるの、って? まあ、そうだね。せっかくだから聞いてもらおうかな。でも、その前に……おじさん、そのコロッケを二つくださいな。わあ、ありがとうございます。


はい、あなたの分。え、お代は良いのかって? これも私の奢り、あなたにはいっぱい色々な物を食べて、しょうてんがいをもっと好きになってほしいから。


よし、美味しいものも持ったし、それじゃあ話すのに相応しいとこまで行ったら話してあげるね。私がしょうてんがいを好きになったその理由を。

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