第13話
「ただいま! ねえねえ、
クリシが還ってきたことにまだ気づいていない
「──っと。おかえり、クリシ。このお金は裏ハンターたちにかけられていた賞金らしんだ」
ブレイブに無力化した裏ハンターの引き渡しをして、状況説明をしたのち、そのまま解放された無月はギルド協会に足を運んで今回のことを報告した。
佐名田が曰く、無月を殺そうとしてきた裏ハンターは『闇のフクロウ』という裏ハンターギルドの幹部たちらしい。
Sレベルの魔力量を持つボスを筆頭に、ここ最近頭角を現してきた新勢力の1つだと言う。
しかしながら、闇のフクロウは、他の裏ハンターギルドや黒い噂が絶えない要人に対してしか手を出していないという。
一部の界隈では、彼らのことを義賊と呼ぶ者もいるほどには、少なくないファンがおり、悪人にしか敵対していないギルドらしかった。
賞金首があるのは、闇のフクロウの存在が目障りで、かつお金を持っているあくどい人物たちが設定していると噂されていた。
そんななか、5人の裏ハンター全員が1人につき100万、5人合わせて500万円の賞金首かかけられている。
「これが賞金です」
どんな事情があるにしても、それはそれ、これはこれである。
佐名田はニッコリ笑って現金そのまま一括ドンっと15歳の目の前に置く。
「え、えっと? クエスト報酬と同じように口座にそのまま送金ってできないんですか?」
「はい、一応は可能です……が、規定によって様々な手続きがかかり、指定の口座に送金できるまで最低でも1ヶ月ほど必要です。しかしながら、金額にもよりますが、今回は現金で直接お渡しした方が時間のロスがありません。いかがいたしますか?」
少々悩んだ無月だったが、万が一の時にすぐに使えるお金は多い方がいいと判断して、顔を強張らせながら何とか家に帰ってきて今に至る。
無月にとっては下手なモンスターよりもお金の方がよっぽど脅威だった。
「ニシシ、それはお疲れさまだね! それでそのお金はどうするの?」
「今日はもう夜だし、明日にでも銀行で口座に入金するよ」
クリシと会話しているうちに、冷静になってきた無月は、とりあえずテーブルに置いたお金は、汚れないように部屋の隅になるべく視界に入らないように置く。
「闇のフクロウの幹部を5人も倒したってことは、もしかしたら報復されるかもねぇ」
「それは全然ありえる。俺を捕まえるのか殺すのかしらないけど、依頼は続いてる可能性はあるし、俺の周りの人達が万が一でも巻き込まれる前に、なんとかした方がいいよな?」
「相手は倫理観のかけらもない犯罪集団だもんね」
「それに——」
ピタッと無月が途中で口を閉ざして、クリシに向けて人差し指を口に当てて静かにするように指示する。
クリシも無月の意図に気づき、コクリと頷いて警戒するように周囲の気配を探る。
無月とクリシはほぼ同時に、自分たちに向けられた複数の殺気を感じた。
魔力というのはどんな人間も魂と繋がっており、完全には消せるものではない。
よっぽどの魔力操作が巧みな者か、もしくは魔法、あるいは魔道具で相手に知覚させないようにもできるが、無月たちを遠くから囲んでいる者たちはそれに該当しないようだ。
無月とクリシが黙った理由はもう1つあった。
もしかしたら、部屋の中に盗聴器のような効果のある魔法が発動している可能性が生まれてしまった。
今のところそのような魔法の感知はできないが、無月やクリシが気づけていないのかもしれない。
それどころか、周りから感じる殺気は陽動で、それ以外になにかしらの奇襲を受けることも視野に入れないとならない。
(はぁ、そもそもなんで義賊と呼ばれてる裏ハンターギルドから命を狙われてるんだ? それに、こんなところで戦闘おっぱじめる訳にはいかないし。……とりあえず、まずは移動するか)
無月はクリシを
目的地は、戦闘をしても支障のない場所。
ダンジョン以外に無月が思いつくところは、初めてクリシたちと契約した、彼にとって思い出深い場所だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます