第12話
──
「ニシシ、2人ならすぐにでもランクアップクエストを受けれそうだね!」
「ほんとに?! クリシちゃんにそう言われると、物凄く自信になるよ!」
クリシの言葉に秋澤は嬉しそうに目を輝かせる。
クリシのお世辞に聞こえない言動に、柊はクールで切れ長な目を微笑ませながら、
「クリシさんの太鼓判なら、そうなれるようにもっと努力しなくちゃね」
と静かに応じる。
その後もゴブリン系統の群れを何度か倒したあと、
「ねえねえ、ハンター育成専門高等学校ってどんなところなの?」
クリシはふと思ったことをそのまま口にした。
秋澤は上手く説明できる自信がないようで、アイコンタクトで柊に説明を任せた。
「そうね……」
秋澤のアイコンタクトに気づいた柊は、少し考え込んだあと、口を開きクリシに説明する。
『ハンター育成専門高等学校』とは、ここ、日本唯一のダンジョン都市に位置し、各学年に300人、1年生から3年生の合計およそ900人の生徒が在校している、次世代を担うダンジョンハンターを育成するために設立された学校だ。
この学校の入学試験は、学力は平均的な偏差値にされているものの、魔力量を含めた身体能力が要求される実技試験を通過した者のみが入学でき、入学後、各自の適性や希望に応じてクラス分けされる。
国語・数学・理科・社会などの一般教養科目、また、保健体育・音楽・家庭科などの副教養科目、これらの科目は通常の高校と同様のカリキュラムで行われているが、やはりこの学校1番の授業とは、ハンターに必須な専門科目だ。
ダンジョン学はダンジョンの構造や探査方法について学ぶ。
モンスター学は、各種モンスターの生態、弱点、討伐方法について学ぶ。
戦闘訓練も当然あり、剣術科、魔法科など、生徒の得意分野に合わせた指導が行われてる。
校内には授業や放課後に開放している大型魔道具を使用した、模擬ダンジョンが設置されている。
生徒はこの模擬ダンジョンという環境で本格的な訓練を受け、パーティーとしての連携や専門の教師から助言が貰える。
多少の怪我を負う場合もあるが、死ぬ危険性は皆無なため、本物のダンジョンに挑む前にまずはここで経験を積む生徒は多い。
学校施設は模擬ダンジョンをはじめ様々なものがあり、トレーニングジムは貸し出し専用で各種武器や防具、トレーニング機器が揃っている。
図書館ではダンジョン、モンスター、戦闘技術に関する膨大な情報が揃っており、生徒は自由に閲覧や研究ができるし、食堂も全学生が余裕で収容できるほど大きく、栄養バランスの取れた食事が提供されてハンター向けの高カロリーメニューも多数用意されている。
教師陣も経験豊富な現役ハンターや引退したベテランハンターが教師として教鞭をとっていて、彼らは実戦で培った知識と技術を生徒たちに伝授している。
ハンター育成専門高等学校は、次世代のハンターを育成するための最前線として機能しており、生徒たちは厳しい訓練と学習を通じて、一流のダンジョンハンターを目指しているのだ。
「へぇ~! なんだか楽しそうだね!」
クリシは興味津々にあれやこれや質問しながら楽しそうに笑う。
「あはは、専門科目は楽しいんだけどね~」
秋澤はなぜか乾いた笑みを浮かべ、遠い目をしながら呟く。
そんな
「……クリシさん?」
柊はクリシの様子にすぐ気付き、心配そうに声をかけた。
「あー……私たち夜空と契約している使い魔は、使い魔どうし念話みたいな感じで会話できるんだ。でね? いまフレイから連絡が来たんだけど、違うダンジョンで軽くクエストしてたらしくって、どうやら裏ハンターっていうのに襲われたらしんだ」
「え?! って、よくよく考えれば、フレイアシエさんがいるなら余裕だったんじゃ……?」
「うん、今回はネーベルっていう使い魔が一瞬で無力化したみたいだね」
自分のご主人様はすーぐトラブルに巻き込まれるなぁ~と、クリシは苦笑いする。
それからは、特に何事もなくクエストも達成した柊と秋澤は、そこそこプラスで討伐したこともあり、今日は帰ることにした。
クリシもダンジョンの入り口まで一緒に同行することにして、またまた会話を弾ませながら帰路につく。
こうしてクリシにとって、初めての女子友達との楽しい冒険は終わった。
──クリシはまた一緒に冒険しようと約束して、2人と別れてそのまま無月のところに還ってくる。
どうやら既に家に帰っていたようで、しかしどうやら様子がおかしい。
「?? 夜空~? どうしたの? って──」
クリシがひょこっと顔を覗かせると、そこにはテーブルに置かれた500万円とそれを青い顔で眺めている無月がいた。
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