第9話
ボスフィールドからダンジョンのスタート地点に戻ってきた
(クリシのこともだいぶ知られるようになってきたし、そろそろ召喚したまま外に出てみるか)
一応学生ハンターたちの視線から、さり気なくクリシを隠すようにして、ダンジョンを出ようとしたところで、
彼女たちも無月たちに気付いたようで、駆け足で近寄ってきた。
「無月君、クリシさん、お疲れ様」
柊がクールな微笑みで声をかけてきた。
「お疲れ様! 無月くん、クリシちゃん!」
秋澤もにっこりと笑って挨拶する。
「お疲れ様。2人は今からクエスト?」
無月は二人に問いかけた。
「ええ。今日の授業が終わったから、少しダンジョンに潜ろうかと思って」
「2人はクエスト帰り?」
柊が答え秋澤の問いかけに無月はうなずき、
「へへーん! 今日はゴブリンキングを倒してきたんだ!」
ドヤドヤっとクリシが笑う。
「もうランクアップクエスト受けれたの?!」
「確かにすでにそれだけの実力はあるものね」
秋澤がクリシの頭をわしゃわしゃ撫でながら驚き、柊もさり気なくそれに混ざりながら納得している。
「そうだ! これから
突然クリシが思いついた! という風に3人に向けて提案する。
「また唐突だな…」
無月は髪がくしゃくしゃになってしまっているクリシの髪を整えながら苦笑する。
一般的に、クエスト中に使い魔を他のパーティーに一時的に預けたり、パーティー同士で勉強や訓練のためにメンバーを数日間入れ替えるというのは意外に多い。
今回の場合はクリシの戦闘能力が高いがゆえに戦闘に参加してしまうと、柊たちの経験にならないのは明白で、クエストを成功させても実績や評価が低くなってしまう。
なので、クリシはクエストの妨げにならないように、戦闘の時は見学することになる。
「うん! クリシちゃんともっと仲良くなりたいからあたしは賛成!」
「私も無月君がよければ構わないわ」
無月に関しても、魔力量をまったく気にする必要がないため、特に問題はない。
どんなに使い魔と離れていても、魔力を供給し続ければ召喚していられるし、使い魔も
「柊さん、秋澤さん、クリシを頼むね。クリシは2人に迷惑かけないようにな?」
無月の言葉に、クリシたちは返事を返して、
ダンジョンワープまで戻ってきた無月は、HMDS《ヒムダス》を取り出す。
ダンジョンワープを利用するための支払い方法はとして、ギルド協会からワープするときは、クエスト受注時などに受付嬢にそのまま支払いうのが手っ取り早い。
しかし今回のような場合は、HMDSから簡単に使用料を電子マネーやクレジットカードなどから支払うことができる。
無月は初クエストで得た報酬を半分ほど電子マネーに変えていたため、そこからチャリンと支払った。
続けてクエストクリアのデータ情報をギルド協会に送り、数秒と経たずに承認されたのか、報酬金額が指定の口座に支払われた。
そして新たに、『Iレベルウルフダンジョン、ウルフを10体討伐:成功報酬10.000円』のクエストを受注した。
HMDSだけでこういうやり取りが可能になっている理由は、諸事情によってギルド協会に行けない、またはダンジョンをはしごするためにわざわざギルド協会に戻るのも手間だからなど、様々な理由があった。
ちなみに
無月が背負っているリュックサックには、普通のモンスターより大きいゴブリンキングの魔石が入っているものの、まだまだ余裕があった。
多少なりともクリシのことは心配なものの、無月は新たなダンジョンにワープした。
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