第15話 物語ダンジョンはつづくよ

いやぁ〜〜上裸パイセンは強敵でしたねー!!


「ミカエルくん、ほどほどにね」


鍛え上げられた肉体の上を這いずるミカエルくん。こっちを振り向きもせず(目がどこにあるかわからないけど)触手で⚪︎を作る。普段のドッグフードが主食なミカエル君はスキルに伴う魔力の残光が大好物なのだ。あ〜〜〜喜んでますねぇ〜〜〜。


「ゲス男、終わったようね」


焔が現れる。シュパっと忍者みたいな移動はどうやってるんだろう。


「花月じゃ相手にならなかったみたいね」


倒れ伏す上裸パイセンを見下ろす焔。

いや、上裸パイセン強かったよ。ミカエルくん(親)と同じぐらい大変だったんじゃないかな。アホみたいに分身し始めると詰んだし。


「敵側の勇者はこれで全員みたいね」


時間感覚を失った俺にはわからないが、焔のほうも無事終わったらしい。


「でも、まだ帰還は表示されてない」


焔が空中に指を滑らせた。おそらくdoorsを確認してるのだろう。ダンジョンに入ると共有しない限りは他者のdoorsは見れない。


「とにかく一旦城に帰りましょうか。味方ももういないし」


掘り起こされたようなこの場所に俺たち以外に立ってる人はいない。味方は上裸パイセンたちにやられてしまったようだ。


「そうだな。よし、ミカエルくん帰るよー」


元気に体全体を使ってオヤツを食べるミカエルくんは名残惜しそうに⚪︎を作った。あとで少しだけドックフードを食べさせてあげよう。そういえば、焔はミカエルくんを見るのが初めてだったか。


「え──かわいい」


悲鳴を上げないのは喜ばしいが、日本最強の美的センスは独特だった。触手と美少女。あると思います!!



「うーむ……」


えっちらおっちら戻ってきたはいいのだが、王城は異様な姿になっていた。

まず暗雲立ち込めてる。城の上以外は青空が見えるから、なんだか合成映像のように見える。次に目につくのは入り口に立っている兵士。もう明らかに人間ではないオーク的なやつが立っている。城を見上げる俺たちをがっつり睨みつけていた。


「焔サン住所間違えてない?」


番地が一緒の家がいくつかあるとかさ。


「怒りの日……白の試練……」


残念ながら難しい顔をして考え込む焔には俺の言葉は届かない。

そうこうしてるうちにオーク兵が俺たちの前まできてしまった。


「krgjlajgairlasdkfa──!!」


「ddjlsjglsjrigjaojg!!」


こちらを指差し、何やら叫んでいるオークさん。完全にロードオブ的な顔付きでポップさは欠片もない。血管マシマシの血色の悪い腕が怖い。


「邪魔よ」


おーくさんのなか、あったかいなりぃ……。登場5秒でオークさんは2本の火柱に変わってしまった。


「中に入りましょうかゲス男」


スタスタと歩いていく焔。とにかく、この王城がダンジョン攻略の鍵らしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る