「ブラックベリーシンドローム」第58回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画
プレイヤーは最初に星を1つ選べる。生命を発生させ、可能であれば文明を発展させることもできる。文明を発達させるには知的生命体まで進化しそうな生物に手を掛ける必要があるが、そんなことをしなくても多くの生物に関与することで複雑な生態系を作って楽しめる奥の深いゲームだ。
人気は恐竜と同時に人類も進化させることで、多くのユーザーが挑戦を試みる遊び方だ。これを他のプレイヤーに見せてジュラシックパークごっこをするのである。クラウドゲームなので他のプレイヤーが作っている惑星を自由に見られるのだ。
他にもケイ素生命体やタコのような知的生命体を進化させたり、巨大ガス惑星の衛星を選び、氷の下の海で独特な生態系を構築できたりもした。そんなSF的なシミュレーションができるのもこのゲームの醍醐味だ。
しかしリリース前は『天の川を渡るウォーゲームを体感せよ』というキャッチフレーズが使われていた。そのうちそのキャッチフレーズは消えたのだが、それを顧みるにどうやら別の趣向があったらしい。当初のアップデートで消えたのだろう。どんな仕様だったのか興味はあるが、
私の惑星は鳥の惑星だ。
知的生命体は発生させず、巨大隕石の衝突で恐竜を絶滅させ、哺乳類の進化を抑制し、鳥が支配する生態系を構築した。陸では恐鳥類が生態系の頂点に立ち、海ではペンギンが鯨のように進化する星だ。鳥好きの私にはたまらなく面白くできた自信作であった。
しかしある日、毎朝の日課の表面チェックをしていると、突然、黒い森ができていることに気がついた。ゲーム内のスピードは各自変えられるのだが、私の場合は1日1000年という緩い進行にしている。それで1日でこんな異常繁殖をする植物が発生するのは緊急事態だ。その森は翌日には一回り大きくなっていた。
私はつぶさにその黒い森を調べた。このままでは生態系に大きな影響を与えることは明らかだ。黒い森を成す植物は、現存の植物ではブラックベリーに似ていた。同じような黒い実を成らせ、鳥の食料になるのはいいが、既存の植物に巻き付いて育つため、巻き付いた植物を枯らす事態が発生していた。私はブラックベリーツリーと名付け、どうしたものかと悩んだが、対処方法は考えつかなかった。ブラックベリーの実はみな好んで食べたが、葉を食べる鳥は現れなかったのである。
また、そのうちにブラックベリーしか食べない鳥が進化し、鳥が実を食べ、飛んで移動して糞を落としていくので、辺り一面ブラックベリーの森となり、ついには大陸全てがブラックベリーの森になった。制御不能である。
しかも悪いことにあるときブラックベリーが巻き付く木々が絶滅し、同時にブラックベリーツリーが枯れ、ブラックベリーを主食としていた鳥は絶滅した。
一大カタストロフィである。
何故このブラックベリーが発生したのか、私は課金してブラックベリーの森が発生する寸前まで時を巻き戻した。時間の縮尺も千年単位から1年単位へ、1年単位から日単位へ、そして最後にリアル単位の進行にまでフォーカスし、ついに私はブラックベリーの森の発生の瞬間を捉えた。
その日、1000年後にブラックベリーの森になる場所の中心部に隕石が落下してきて、その隕石からブラックベリーが繁殖を始めていたのである。それは大気圏の突入に耐えるように進化したブラックベリーの実だった。
このブラックベリーは他の惑星からきた
他のプレイヤーの惑星を調べると同じようにブラックベリーの侵略を受けた惑星を複数発見した。こうなると答えは1つだ。どこかのプレイヤーがこのブラックベリーを進化させたのだ。どうやって重力圏を脱出し、宇宙に出たのかは不明だ。しかし酷寒と真空と何百万年という過酷な星の旅に耐え、私の星に落下し、私の鳥の惑星を滅ぼしたことは間違いない。
やられた。
これは最初からウォーゲームだったのだ。星間旅行を可能とする生命を発生させ、進化させ、他のプレイヤーの星を侵略し、破滅させるゲームだったのだ。
この日から、プレイヤーたちのプレイが一変した。ブラックベリーの侵略に耐え、かつ、反撃可能な生命を発生させること。それが至上命題になった。
私は生き残った鳥の中でもともと知的能力が高いカラスに似た鳥を選んだ。ブラックベリーを駆逐し、同時にそれを糧に文明を発達させ、星間飛行が可能になるまで進化させるつもりだ。
戦いは始まったばかりである。ブラックベリーを進化させたプレイヤーの星を見つけ、侵略し、カラス族を満腹にするまで、私のプレイは続くのだ。
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