お題企画『おもしろいテープ』【2000字以内】
ひたすら悔しい!
きちんとしたSFにまとめようと考えたんだが、どうやってもきちんとしたSFにはならない。なので、これは思考実験ということにしていただきたい。ツッコミ無用(泣
カセットテープの記録方法をご存じだろうか。音を磁気信号に変えて記録するので、磁力を見える(または感じられる)動物が、どういう風に聞こえるかは別として、カセットテープの磁気に反応できるくらい敏感であれば、カセットテープの音楽を見る、または感じることができるわけだ。
しかしそこまで敏感で、かつ、直接読み取れるほど進化しそうな動物は地上にはない。しかし海にはいる。それはタコである。
ご存じかもしれないが、タコの知能は極めて高く犬や3歳児と同程度、また別分野では彼らを遙かに上回る能力を持っている。しかもその触手には電気信号刺激の受容体があるかもしれないというではないか。
タコにカセットテープを読ませることはできないだろうか――そう考えついたのである。そうすれば「おもしろいテープ」か「おもしろくないテープ」か、きっとタコたちの間で議論になるはずなのだ。
しかし単にタコたちにカセットテープを与えてそんなことをしてくれるはずもにない。もっともっと、人類が滅んだ後に進化したら――実際にそう考えるSF屋は大勢いた。しかしながらタコの血液は脊椎動物のように鉄分(要するに赤血球だね)を利用せず、鉄より酸素を運ぶ効率の悪い銅を利用している(ということは赤銅血球?)ので地上に出るのに支障を来すので、思いっきり知的生命体に進化しても地上に進出することはなさそうなんだな。
まあ、なんで銅でよかったかといえば、太古の地球はもっと酸素濃度が濃かったから困らなかったんだね。昆虫が大型化できた時代の話だ。
おいておいて、ならば無理矢理地上に出なければならない理由を作ってあげないとならない。実は遠い未来の地球には、それにはおあつらえ向きな大変動が待っている。
大陸移動説ってご存じだろうか?
太古の地球は1つの超大陸があって、地殻変動で分裂したってアレだ。
実は2億年もするとまた1つの大陸に戻ることが予想されている。となると大陸に挟まれた海は干上がるわけで、知性が高いタコたちは地上への進出を余儀なくされるのだ。
2億5千万年後――だいぶ遠い未来だね。
こんな遠い未来に人類の痕跡があるはずがないよね。でも、正に天文学的確率として、残っているかもしれないところがある。
それは宇宙だ。
低軌道では無理だが、月軌道や静止衛星軌道上の衛星、しかもカセットテープを記録媒体として使っていた時代のものがもし、この時代に進化したタコたちのもとに落ちてきたら――
きっと、内部を解析しようと努め、カセットテープを発見し、その脚で読むはずなのだ。その記録はおそらく無数の宇宙の観測記録。
宇宙の概念くらいは余裕で理解している彼らのことだ。太古の、地球の知的生命体の大先輩である人類の遺産であるテープを競っておもしろく読んでくれるのではないかと思うのだ。
うーん。
SFにはならんな。残念だが。あまりにも奇跡×奇跡すぎる。
やっぱり思考実験止まりだ。
2億5千万年後も、荒廃した地球の上、おそらく凶悪にして最強の社会的生物である蟻も知性を得て、支配している地球で、地表への新参者であるタコたちが、自分たちタコ族の生存権の確保のために探検を続け、そして宇宙から降ってきた船を見つける――蟻たちは知性を持っているとはいえ、己のコロニーの生存が最大命題。宇宙船の残骸など気に掛けるはずもなし。しかしタコたちはその先祖から引き継ぐ好奇心と探究心で宇宙船の内部を危険を顧みずに探索し、ついにカセットテープを発見し、宇宙の声を聞く――おもしろいと思うんだけどなあ。
ねえ。おもしろいと思いませんか?
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