書き下ろしエッセイ募集! テーマ「もやもや」

 皆さんが考えるもやもやとは違うのですが、「もやもや」としか表現できない特殊な「疲労」が人体にはあるので、ご紹介したいと思います。


 長い間、ロードバイクにはまっていました。市民レースに出るくらいです。月間2000キロは走っていました。土日はもちろん、水曜日にも100キロ走るくらい。


 サイクリングと異なり、ロードレースに強くなるためには運動強度を高くする必要があります。運動強度が高ければ筋肉への刺激が増え、同時にパワーに変換される体内物質を蓄えて、長くパワーが出せるようになります。無酸素運動という奴ですね。あれを長くするためには継続してトレーニングする必要があるのです。1発だけパワーが出ても勝てません。2回、3回と勝負を掛けられ、耐えないとならないのです。


 私は常にレースで振り落とされる側の下手の横好きでしたが――


 さて、実はその無酸素運動以上の強度を出すトレーニングがあります。それは神経系のトレーニングです。筋肉に指令を出す神経信号を改善するトレーニングです。これにはロードバイクでは、互いに競い合ったりするような、アドレナリンがどばどば出ているときくらいしか到達しません(普通の人は、ですよ)。


 その神経系を改善する、もうそれこそ限界を超えた後は、筋肉のすさまじい疲労はもちろんのこと、意識や身体の感覚すら、狂ってきます。たぶん、神経が情報処理できずに、バグっているのだと思います。


 この狂った状態を「もやもや」するとしか表現できないと私は思うのです。


 魂と身体の間に、なにか「もやもや」したものがあるのです。たぶん、シナプスが新しく繋がって、こいつ、こんな運動強度を必要としてやがるんだ。次には対応してやろうぜ、と脳が工事しているのでしょう。


 人間の中で神経を通る各種情報の工事渋滞が起きているとでも言えばいいでしょうか。というかこれがぴったりですね。


 道路工事に出くわして、渋滞にはまったら普通の人は「もやもや」しますよね。同じです。


 なるほど、こんなところでふつうの「もやもや」と繋がるとは思わなかったぞ、と思いつつ、特異な「もやもや」した体験を思い出すのはこの辺にしておきます。

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