俺は君には似合わない

ʕ•̫͡•ポリエステル54杼ʕ•̫͡•

第1話

「陸!今日も一緒に帰ろ!」


茶髪のポニーテールを揺らしながら彼女は俺のほうに寄ってきて話しかけてきた。遠くから見ても分かる彼女の美貌は、近くから見るとより輝いていた。


「まあ、いいよ。帰り道同じだしね。」


「本当!?じゃあ今日の放課後にね!」


そう言って、彼女。霧宮真由は俺から離れてクラスメイトの女子と話し始めた。


霧宮真由は俺の幼馴染だ。家がすぐ近くというとこもあり、幼稚園の頃から一緒だった。


しかし、成長するに連れて、真由は綺麗になっていった。


そして、真由は勉強やスポーツもほとんどができる完璧な人間になった。当然、そんな真由のことを誰もが憧れた。


そして、必然的に勉強やスポーツが人並みぐらいで顔も普通の俺は真由と共にいるべきではない存在となった。


だから、最近は少し真由から避けるように行動してしまう。だけど、それが一番良い選択なのだろう。


真由が結ばれるべき存在は俺ではない。


それに、最近になってある噂が流れ始めた。


それは、クラスメイトの市山大地が真由のことを好きだというものだった。


市山大地は真由と同じ、勉強もスポーツもできて、なんでもできるイケメンで、俺とは次元が違う存在だ。


当然、みんなは美青年と美少女の恋が始まるかとほぼ毎日話題になっている。


だが、市山は良くて真由と少し会話をする程度だった。だから、あまり進展はしないと思ったが、ある日、市山は俺のところへやってきた。


「倉井だよな。お前、霧宮の幼馴染なんだろ。お願いだ。俺が霧宮と付き合うのを手伝ってくれ。」


市山はそう言って、俺に頭を下げてきた。


「え?い、いや頭をあげてくれよ。ていうか、付き合うのを手伝う?俺が?」


俺は思わず聞き返してしまった。


「ああ、霧宮を一番知っているのは倉井だと思ってな。俺が霧宮を好きなのは…不本意だが有名になってるから分かるだろ。俺は霧宮と付き合いたい。だから、手伝ってくれないか?」


市山は改めてそう頼んできた。


確かに俺はクラスメイトの中で一番真由を知ってると思う。だから、俺が恋愛を手伝うことになるなんて、、、


俺は市山のことを見た。改めて見ると、市山はやはり整った顔をしていて、やはり他の誰とも比べものにならないくらいだ。


(俺も市山みたいだったら、真由とずっといれたのかな。)


叶わない思いを心にしまっておく。


「倉井?」


俺はそう呼ばれてはっと気がつく。


「ああ、ごめん。少しぼーっとしてた。付き合いたいんだってな。もちろん、手伝うよ。」


俺がそういうと、市山は顔を明るくして喜んだ。


「本当か!ありがとう倉井!」


そう、これでいいんだ。真由は市山と付き合うべきだろう。市山は話していて、真由を利用するようなことはないと思った。だから、真由も喜ぶだろう。


「じゃあ今日はもう学校終わるから、また明日。」


「ああ、ありがとな倉井!」


そう言って、俺は教室を離れた。


教室の外では真由が俺を待っていた。


「ちょっと陸。遅かったじゃん!」


そう真由が顔を膨らませて怒っていた。


「ごめん。ちょっと用があってな。」


「ふふふ。別にそんな怒ってないよ。ほら、早く行こ!」


そう言って真由は笑いながら俺の腕を握ったまま学校の外に行った。


いつもの見慣れた通学路を凛と共に歩く。


通学路の途中にある公園から、子供の楽しそうな声が聞こえた。


「楽しそう、、、そういえば、小学生の頃私達もよくあそこで遊んだよねー。懐かしいな。ねえ、また外に一緒に遊びに行こうよ。最近行ってないじゃん。」


「それは、最近忙しかったから、、、」


「忙しい?ただ家でゲームしてるだけじゃん!」


「お前は他の人もいるだろ。」


「私は陸と遊びたいの!」


「ああ、わかった。わかった。暇だったら遊ぶよ。」


「本当!?言質とったからね。」


真由はそう言って嬉しそうに笑った。


他愛もない話を続けていたら、俺は手伝いを頼まれていたことを思い出した。


(無難にタイプでも聞いてみるか。)


「なあ、真由。」


「何?」


「お前の好きな異性のタイプって何?」


「ずいぶんと急だね!?どうしたの?」


「いや、、、少し気になって。」


真由は少し困ったような顔を浮かべた。


「好きなタイプか…。…陸みたいな人かな。」


「あっそ。」


「あっそ。って何!?せっかく答えたのに。」


真由は照れ隠しで冗談でも言っているのだろう。


(だけど、そんな冗談はやめて欲しいな…。勘違いしそうになる。)


真由がそんなことを言うと、億が一にも起こらない確率を期待してしまう。


そうこう話していたらもう、自宅の前に着いてしまった。


(結局、何も聞けなかったな。)


「じゃあな。真由。」


「ああ、うん。バイバイ陸!」


そう言って、真由は俺に向かって大きく手を振った。


そして俺はそんな真由を見ながらドアを閉めた。





「結構頑張って言ったんだけどな、、、好きな異性のタイプ。気づいてくれたらいいな。」


真由は顔を紅くしながら、少し顔を綻ばせて言った。しかし、その相手に想いが届くことは無かった。







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