リリスの目覚め - A Tale of Unholy Lust and Dark Desires -

ケバエロスキー

 正義は勝つ。

 この言葉は多くの人々に好まれ、多くの物語によって支えられてきた。どんなに強い悪が立ちはだかって苦境に立たされようとも、ヒーローは必ず乗り越え、さらなる力を手に入れて、悪を打ち負かす。ヒロイックファンタジーの高い人気がこの証左で、ベーオウルフ、西遊記、指輪物語、英雄コナン、ナルニア国物語、ハリー・ポッターと、古今東西、枚挙にいとまがない。ホラー映画だって、悪魔も悪霊もゾンビも殺人鬼も、最後にはたいてい祓われるか倒されるか封印されるかの結末を迎える。

 しかし、現実はどうか。殺人、詐欺、窃盗、麻薬の密売。どれも日常茶飯事、あって当たり前だ。被害者は泣き寝入りするしかなく、そればかりか、正義の味方であるはずの警察が犯罪組織と結託していたなんてこともあって、まったく正義が勝っているように思えない。「巨悪は倒れず」というほうが正しいのではないか。

 今回私が持参したのも、そんな巨悪は倒れずの物語だ。

 物語の扉を開く前に、予め警告しておこう。

 この物語は陰惨で、背徳的で、身の毛のよだつような結末を迎える。

 正義が破れ、悪が栄える。

 勧善懲悪こそを是とする紳士淑女諸君は席を立ち、そのまま離れることをおすすめする。

 

 ――さて。今なお残っておられるということは、覚悟はできているということだろう。

 それでは、物語の扉を開こう。

 醜く捻じ曲がった残虐で邪悪な物語をお楽しみあれ。

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