第3話 夜明け
この間に情報を整理しよう。
現在意識があるのが自分だけ。ゲームが趣味だという少女は起きそうだが戦力にはなりそうではない。
(文字通りの死屍累々…まぁ死んでないだけマシか。)
障子の開けられた穴をよくよく見ても真っ暗な闇。
そう、闇が広まっている。
宇宙とかより、深淵や地獄の奥深くみたいに見える。
闇は奥深く、ただ何も見えなかった。
お地蔵さんの方に顔を向けてみる。
眼から流れた血はいつの間にか乾いており、流れた跡が茶色くなっていた。
それだけじゃなかった。
微笑んでいる顔をしていた地蔵の顔は苦悶に満ちていたのだ。
(…なんかうんこ我慢しているようにしか見えねぇな…涙の跡が茶色いし…)
ばっちく感じ始めた無常はそそくさと畳に地蔵を置いて二、三歩離れた。
「…さて、使えるかな…」
『目星』っと。
サイコロの音は響く事なく空いた穴の闇に吸い込まれていく。
数字は71。自分の技能値は75なので成功だ。
『あまり類を見ないお地蔵さんだとわかるだろう。』
まぁ血涙流して苦悶の顔してるお地蔵さんなんてあんまりいないだろう。
ほい、『オカルト』っと…48やと…やっぱりサイコロはクソやな。
『何もわからない。』
(………スピリタス何本あったっけ…?)
懐の影をまさぐっていると視界の端っこでゲームが趣味だと言う女の子が起き上がった。
「………ん………どうなったんだっけ…?」
「…君、本当にタイミングが悪いね…」
少女はこちらに顔を向けて寝ぼけた顔でさらに惚ける。
「来るよ、こっちに。」
その瞬間障子で区切られていた聖域がパズルみたいに崩れる。
懐から武器をだそうと考えたが、やめた。
(…なるほど、さっきの場所は待機場所って事か…考えるだけ馬鹿みたいだ。)
指で中の確認の為に穴を開けて眼で全員の行動を静止させる。そして、風を送り燭台から火を消してこうする予定だったのに俺のせいでそうはいかなかったと言う訳か…
(…まぁこのまま即死ルートだとしても技能の『回避』が強制発動するし、他にも方法がある。…この状況に身を任せようか…)
深く、深く堕ちていく。
そう、身に任せて…(そういや、明日は学校初日なの忘れてたな。まだ用意もしてないしもう終わらせようか。)
懐から火がついたランタンを取り出す。
燃料のスピリタスは満タン。地蔵も視界に闇に消えていこうとしているが関係ない。
恐らく、この化け物と地蔵は倒す順番がちゃんとある。
先に、この暗闇の化け物を倒して地蔵を破壊するの事によって殺せるのだ。
先に地蔵を破壊した場合、あの場所が崩れて此処ではない場所に連れて行かれるのだろう。
今の状況の様に。
もしくは、罰当たりな事をしたとしてペナルティーが与えられるかも知れない。
故に、
「燃やせ、火の精よ…!」
暗闇の中、ランタンに詰め込まれた数百の火の精が吹き荒れる。
火の精が放った炎は対象から魔力を奪い取る性質を保有している。
邪視の類いもこれで使えなくなるはずだ。
燃えれば燃えるほど、暗闇中の怨嗟の叫び声が聞こえる。耳栓すればよかったよ。
落下が続くのかいつまでか分からないのでランタンをすぐに直してある物を取り出す。
その名前はヘカートII。
自分が持っている銃火器の中でも最上位に位置する火力を誇る
もちろん、自分にこんな化け物銃は自由落下中に扱えない。そう、普通なら。
「『銃火器 ライフル』!」
自分では出来ない。だが、ダイスは不可能を可能にする…!
技能値は40。さて…出た目は…
『41』
弾丸は地蔵の横に向かっていく。地蔵は闇に消えていった…。
ダイスは糞。分かりきった事だね。だけど、
「プッシュロール!持ってけ泥棒…!」
その瞬間、自分以外の全てが巻き戻る。
一日に一回だけ使える特殊技能…それがプッシュロール。時間遡行によって出て来た地蔵にもう一回打ち込む…!
「『銃火器 ライフル』…!」
銃口から弾丸が放たれる。
出た目は、『22』だった。
さぁ、夜明けの時間だ。
学校に行かないとな。
地蔵は弾丸が貫通し、砕けた亀裂から太陽のような光を溢していた。
『コソコソオカルト話』
無常仮寝の技能値は以下の通りになっている。
目星75
聞き耳90
近接戦闘98
日本刀90
回避99
拳銃70
ライフル40
ショットガン40
オカルト40
運転(バイク)55
運転(車)50
医学45
電子工学40
図書館20
コンピューター60
サバイバル70
説得25
威圧70
薬学30
暗号学40
鑑定30
読唇術60
英語60
ルーン文字12
古アイスランド語15
古代ギリシア文字17
ラテン語25
ヒエログリフ18
クトゥルフ神話技能60
残り5ポイントの技能を振る事が出来る。
技能は振られると振り直しが出来ないが、振った分だけ脳に知識が植え付けられる。
その為、たとえサイコロ振らなくてもある程度慣れたら技能を振らなくても成功させる事が出来る。
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