第2話 裏
(『薬物混入』か…しかも
初めてクエストを受けた3年間で僕のクエストを受ける理由は変わった。
クエストには報酬はない。だが、無いのなら作ればいいのだ。
Cランク以上のクエストを受けていくと、いつの間にか僕は相手からアーティファクトや呪物を奪いとり、書物から呪文を手に入れて力をつけて行った。
罪悪感の類は全く感じられなかった。何せ大概が外道か人外なのだ。手を緩めてやる必要性は感じられなかった。
早速、入学初日に同じクラスの女子二人をストーキングして行く。
影に書かれる内容は2、3日以内に起こる発生する。だから、こうやって今から行動するのだ。
「レストラン開業しました!どうですか?」
「あ、どうも。」
チラシを受け取ってさり気無く後をついて行く。
「へぇ〜新しいレストランか…うん?」
女子達の近くにいるおっさん…目の焦点があってないな…それに手が震えてるし…とりあえず『目星』っと。
『薬物中毒者のように見える。』
…ん、08か…今日1発目の出目は高いなぁ…後でWebサイコロで乱数調整しとこっと。
それにしても薬物中毒者か…関係がないとは言えないなぁ…あ、なんか僕のサイコロの音でグチャグチャ言ってるようだ。もう少し様子見…
その時だった。突然何も無い空間から銀髪の美少女が出て来たのは。
(…またアイツか…今回は関わっているのか…?)
APP19の化け物。這い寄る混沌。そして、ユゴスに奇異なるよろこびをもたらすもの。
その名前はナイアルラトホテップ。人類史に暗躍してきた外なる神の矛盾する存在、それが銀髪の少女の形をしたモノの正体だ。
ナイアルラトホテップは千の貌を持っていると言われており、その異名だけでも数は数えられない。
ナイアルラトホテップと薬物中毒者が消えたのを確認して後ろを振り向く。
そこにはニコニコとしたナイアルラトホテップが立っていた。
「おっさんは?」
「白い部屋で精一杯頑張ってるよ。」
クローズドか。最悪死ぬな。
「それで?君は何故此処にいるんだい?」
「レストランに行こうと思ってな。来るか?」
ニコニコとしていたナイアルラトホテップの顔が渋る。おいおいAPP19がそんな顔するなよ。寒気がするぞ?
「…んーどうしようかな…無常くん、ここは僕の加護を受けているのに免じて大人しく家に帰ってくれない?」
「え?やっだ〜♡」
思わず口元がニヤニヤしてしまう。
確かに僕はナイアルラトホテップの加護を貰っているが、邪神が企んでる事柄に手加減する理由はない。
なんならぶっ壊して笑ってやりたい。
「えー無理〜?」
「うーん、何企んでるかによるかな〜」
ナイアルラトホテップは少し考えた後、話し始めた。
「ネタバレは嫌なんだけど…薬物を使って大規模な探索者作りをしようと思うんだ!」
「…剪定で何割くらい死ぬんだ?」
「さぁ?」
んー邪神やなぁ…
「それをレストランで?」
「そう!あそこは僕の信者が作り出したレストランでね。今日の運営が終わったら撤収する予定さ!」
(…どうっすかなぁ…)
止める?いや、俺がそれに命賭ける理由ないしな。
「けど、なんで薬なんだ?お前なら魔術でそれくらい簡単に出来るだろ?」
「…信者の一人が折角作った薬だからね。使ってあげたいのさ!」
(ダウトだ。こいつにそんなヒトの心はない。)
「で、薬の効果は?」
「うーん、此処まで結構教えてるから、これ以上聞くなら何かペナルティーか対価を支払って貰おうかな。」
うわ、だる。
やっぱり邪神だわコイツ。
「…ペナルティーは?」
「今日一日中僕の加護使用不可。」
僕が貰ったナイアルラトホテップの加護は『上級探索者の加護』だ。
内容はまず、普通の『探索者の加護』だと自分のステータスを数値化して100分率のダイスで結果が決まる様になるが、『上級探索者の加護』は自分の影が入る分だけアイテムボックスになるという破格なモノになっている。尚且つ、ナイアルラトホテップの化身が一目でわかり、アーティファクトのプレゼントとして『無貌のニスデール』が送られるのだ。
『無貌のニスデール』はナイアルラトホテップの名に相応しく、着ている間は第三者に正体がバレる事はなく、燃えたとしても魔力を使う事で再生させる事が出来る優れモノなのだ。
「今日一日中、か…」
幸い、今日はもう終わる。
聞いてみる事にしよう。
「わかった。ペナルティーを受けよう。」
「…はぁ全く。君は確かに僕の加護が一時的になくても強いからね。」
本当に君たち人間って狂ってるよねーとゲラゲラ笑いながらナイアルラトホテップは手のひらから薬を取り出した。
「この薬を飲むとその人の身体が異世界の初心者向けダンジョンの入り口に転移されるのさ。武器はランダムで与えられて最下層の奥深くに辿り着いた者にのみ僕の加護が与えられるのさ!」
「帰る時は?」
「その者が帰りたいと思った場所に帰れるよ。って事で君必要ないよね?」
…まぁ必要はないが…
「ちょっとくれない?」
「え〜ほんのちょっとだけだよ?」
そう言ってナイアルラトホテップは薬の入った瓶一つをくれた。
「もし有望そうな探索者がいたら盛ってね!」
「…聞かなかった事にしとこうかな。」
さて、それじゃあ僕は用事があるからねと言いナイアルラトホテップは何処かに消えていった。
さて、僕も今日は消えることにしようか。
『コソコソオカルト話』
実はこのナイアルラトホテップ、よくクトゥグアの関係者と一緒に主人公の無常くんに燃やされたりしているため、無常くんはクトゥグアからは中立の人間に見えている。
まぁクトゥグアからはどうでもいい存在に産毛がついただけにしか見えないが。
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