現実で数多の危険な冒険で力を得たが、他のメンツも濃いです。〜ダンジョンが出て来ても俺だけ配信します〜

木原 無二

前日譚 Everyday occurrence

第1話

世界の見え方は人それぞれだ。


だからこそ、僕の目に映るこれらの影に書かれた“文字”は僕にとっての世界の見え方だった。


ある意味、多様性の時代に適した目を持ったのかもしれない。

だが、ポリコレ。テメェは駄目だ。


“文字”が視界に入り始めたのは…恐らく、小学校5年生か6年生くらいだからだと思う。

気づいた時には影に文字が書かれているのに驚いて思いっきり、ぎゃああああ!?

と叫んだのは今でも覚えている。


周りはそれに驚いていたが、僕は何とか誤魔化していた。


影に書かれている内容は人それぞれで、例えばクラス1番の食いしん坊のフトシは白い文字で『三倍の昼食』と書かれており、フトシに遠回しに聞いてみると、どうやらいつもの給食の量だと全然お腹いっぱいにはならないので、給食の量を三倍にして欲しいと言う願望を持っていた。


バケモノか何かか?


そして、文字の色によって難易度が変わって行くと言うのも分かった。

担任の千鳥先生は影に黄色で『不倫の不始末』と書かれていてた。


なるほど。恐らく、本人もしくは他者含めて状況的に困難を解決するのが難しいほど、色は濃くなって行くらしい。

ちなみに千鳥先生はその後、不倫相手にはボコボコにされ、妻からは慰謝料と離婚最後のキスをされたんだとか。


そんな僕が、最初に人の困り事…これからはクエストと呼ばせて貰うが、クエストを解決させたのは中学一年生の時だった。


女の子のクエストで影に書かれていたのは『犬の失踪』。

その子に話しかけ、町中を探して犬を見つけ、女の子に届けたのだ。


生まれて初めてクエストを解決したのだ。それはもうワクワクしていた!

一体どんな報酬が出るんだろうか?何か変化が起きるんだろうか?


だが、何もなかった。


その女の子とはとても仲が良くなったが、別にそれに文句がある訳じゃない。


ただ、僕は期待していた事が起こらなかったことに憤慨していただけだったのだ。


けれど、僕はめげなかった。


色んなクエストをやって中学を卒業するまでの3年間、法則とパターンを体と頭に叩き込んでいった。


その結果、この僕が立っている世界には魔法や魔術の類があるのを知った。

まぁ能力を持っている時点で大体分かるか。


それに、クエストについても分かった事がある。


クエストの難易度は文字によって変わるらしく、英語でランク分けすると、



 E 白

 D黄色

 C橙色

 B赤色

 A青色

 S藍色

 EX紫


となっている。


E、Dは一般的な問題が多いが、CBAになってくると大抵が超常的なナニカが関わっている事が多い。


B、Aに至っては普通に死にかけた事もあった。


そのせいか、SとEX案件に関してはできるだけ関わらないようにした。

人通りが多い街中を歩いていると年に一回、影に藍色や紫の文字で書かれた人を見つけた。


最初はワクワクしてついて行ったが、僕の培われた第六感が“あ、これはヤバい”と本能的に察知して離れた。


その人がその後どうなったのかは、僕は知らない。


他に分かった事といえば、クエストの内容の変化だ。

C以上の難易度のクエストには当人が困っている内容ではなく、これから巻き込まれる事象の事を表している事が多い。


例えば、今、目の前にいる女の子の影に橙色で書かれた『薬物混入』と書かれている。


どうやら、僕の高校生活も楽しくなりそうだ。



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