異世界行ったら成功できるわけでもない!!

アゴラット

第1話「悲報、テンプレ暴走トラックに轢かれる」

「なんでこうなった?」



 沈みゆく夕日を見ながら1人街の中、悲壮感に暮れる男が1人。


 彼の名は「シュウマ・サイトウ」


 今日の昼にこの世界に異世界転生してきた一般人学生である。


 彼は下校中、前方不注意(歩きスマホ)により暴走突ラックに突っ込まれて呆気なく即死。


 その後転生し今に至る。


 転生と言っても、転生前に来ていた服のままだし、スマホも財布も教科書も、

轢かれる前に所持していたものは全てそのままなので、正直転生かそうかも怪し

かった。


 もちろん記憶もそのままだったので日頃から転生物のラノベを読み漁っていたシュウマにとっては見慣れた状況だった。


 中世ヨーロッパ風の街並み


 剣や斧、杖などを持ったいわゆる冒険者的な人たち


 冒険者ギルド


 でっかいヨーロッパ風の城


 そしてシュウマは期待した、自分に何か特別なスキルや魔法があるのではないかと。


 厨二病になったことのある男子なら一度は妄想したことのあるであろう、最強魔法に最強スキル。


 だが現実はそう甘い物ではなかった。


 一文なしで知らない街の中に放り出されたシュウマは、とりあえず生きて行く為の金を手に入れるため、質屋に行き教科書や制服、鞄などを売り払い、変な目で見られないように、この世界の服を買った。

 

 ここまでで5時間も時間がかかってしまった。


 主な原因は言語の壁である。


 何を隠そう、違う世界にきたわけなので当然使っている言語も違う。


 なんとなく英語に似た言語なので、少しは意思疎通ができるのだが難しい表現

などは当然伝わらない。


 こういう時転生物の小説だとご都合主義が発動して万能な翻訳スキルがあったりするのだが、残念な事に俺にはそういうスキルの類はなかったようだ。


 言葉が通じないとなってくると、異世界での生活のハードルはものすごく上がる。


 状況としては異世界転生というより、いきなり外国の知らない街に何も持たされず放り出された状況に近い。


 今の所持金は金貨3枚と銀貨20枚、銅貨5枚だ。


 宿を巡ったが安いところで一泊銀貨50枚。


 飯屋は腹一杯食おうとすると銀貨30枚。


 風呂屋は銀貨10枚。


 銀貨は100枚で金貨1枚銅貨は10枚で銀貨1枚なので、今の所持金では風呂は3日に一回、飯は控えめにするとしても一週間もしないうちに所持金が底を尽きる。


 状況は控えめに言って絶望といったところだった。



「どうすんだこれ…」


 

 この世界には、スキルやレベルといった概念は存在しないらしく、そうなると当然異世界物でよく見るチートスキルやレベル999の最強チートなんかも存在し得ないわけだ。


 現実で異世界転生して何そんな事妄想してんだよって話なんだが、どうしてもこの状況から目を背けたくて変な妄想をしてしまう。


 俺はこの状況からどうやって生き延びれば良いんだ…



 2日後…



 この世界に来て2日が経った。


 この二日間、生活は最低限度のものに抑え金銭の消費をなるべく抑えた。


 まず生き残るためには、この世界のこの地域の言語をマスターしなければならない。


 なので、俺は外国から来たばかりで言語があまりわからないという設定で、あちこちの道ゆく人にこの世界のことについて聞き込みをした。


 ラッキーなことにここら辺の人は大体みんな質問に親切に答えてくれたので、わからないこともあったが簡単なことはいくつか聞き取ることができた。


 聞き込みで分かったことをまとめると、

 

・この地域の言語のベースは英語に近い。

 →英語に近い言語だがところどころ文法が違うものだったり、単語も微妙に違

  うところがある。(例えばアップルはナップルだったりする)


・貨幣の価値は日本円に換算すると金貨一枚が十万円、銀貨一枚が千円、銅貨一

 枚が百円程度の価値。

 →制服や教科書、鞄は全て合せて金貨4枚で売れたので結構高値で売れていた。


・この世界で生きてゆく方法は三択で高い懸賞金のかかっている魔物の素材を集

 めギルドで売り払い一攫千金を目指すか、そこら辺の求人を探して堅実に働く

 か、いっそ誰かの奴隷として飼われるかの三択しかない。


・この世界での魔法とは学問の一種らしく、正しい知識を身に付け尚且つ魔法に

 適性のあるものしか使えないもので、ほぼほぼ魔法使いの家系の専売特許らし

 い。


・暗い路地裏を一人で歩くと、強盗か人攫いに捕まることがあるのでなるべく外

 出は二人以上でした方が良い。


 とのことだ。


 いろいろな話を聞き一通り絶望したのち、色々考えた結果覚悟を決める。


 生き延びるためにはやるしかない…


 どうせ一度死んだ身だ、2回死んだところで同じこと。


 そう自分に言い聞かせながら決心を決める。



「やるぞ、冒険者任務。」

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