第9話 能力を駆使した連携


【tearsは東京に向かうため、徒歩で歩いていた。】


「まず向かうべきは滋賀だな。」


「電車と新幹線が使えたらすぐに行けるが、そんな日常では出来たことが今ではほとんどできないからな。」


(私たちは国から追放されている立場だ。ただ外を歩いてるだけで命がその瞬間に狙われる。)


「まて、この先に敵がいる」


「俺のカラスで偵察させよう。行ってこい。」


ハヤトがカラスを飛ばした。


「すごい、ちゃんと指示に従うんだね。」


「野生のカラスはこうはいかないが、ちゃんと手懐けたら言うことを聞くんだ。」


すると1羽のカラスがこちらに帰ってきた。


「なるほど、敵の数は50人はいるそうだ。」


「カラスの言葉もわかるの?」


「ああ。たぶんこれが俺の力なんだと思う。 カラスだけではなく鳥の言葉なら理解できる。」


「これはすごい力だな。」


「ティナ、攻めるか?」


「もちろん。 ここを突破しないと、先には進めない。なるべく見つかりたくはないけど敵の数を減らさなくては意味がない。」


「わかった。ティナの指示に従う。」


「イオリは敵陣のライト類を破壊。ミオはドッペルゲンガーで敵をかく乱。ダイキはミオの守りをお願い。ダイチとレンはその隙に出来るだけ多く倒して。私は指揮官を狙う。」


「後のみんなはその後、援護して。」


「わかった。」


「ところでレンの力は何なんだ?」


「俺か…? 俺なんかできたっけか。」


「おい、ティナ。自分の力もわからないのに俺と組まして大丈夫なのか?」


「うん。ダイチとレンは相性がいいと私は感じた。信じて。」


「…。 わかった。 レン俺に遅れるなよ。」


「ああ。全力でついていくぜ。」


ウルハが私の服を掴んで言った。


「ティナ。私も行く。」


「ウルハはここで待機。 何かあったらすぐに援護して。」


「…。わかった。気を付けてね。」


それを見つめるミナ。


(なに?この子。 ティナのあなたは何なの?)


(いや、みんなティナを慕ってる。ただそれだけ。私ももっとみんなの役に立てるようになりたい。)


「じゃあいくよみんな。」


「ああ。任せておけ。」


「よし照明を破壊するぞ!」


「いいよ。」


パンパン! パンパン!


照明が次々と壊れていく。 


「なんだ?ショートしたか?!」


続けてミオがドッペルゲンガーを出した。 


「さあ始めるよ。 みんな突撃!」


「なんだ? 誰かがこっちに突っ込んでくるぞ! おい撃て!」


「うおおおおお!」


 すかさずダイキはミオの前に立ち銃弾を跳ね返した。


「なんだ?! 化け物みてぇなやつだな。」


「所詮は生身の人間だ。 撃ち殺せ。」


「ミオ被弾するなよ。 お前が食らったら流石に耐えれないぞ。」


「任せて! 逃げるのは得意だから!」


「ちっ。 なんて素早いやつだ。 しかも同じやつが複数人いるように見えるぞ。」


「あのおっさんも全然効かねぇ。化け物か。」


「後ろが がら空きだぞ。」


「な?!」


ダイチのかまいたちが男2人を切り刻んだ。


「なんだ? 今の?!」


「お前の相手は俺だ。」


レンが影のようなものを出し男を切り刻んだ。


「レン今の能力はミオみたいに自分を作り出せるのか。」


「無意識に何か出た。 これが俺の力か。 よし一気にいくぞ。」


ティナは指揮官の方に突っ込む。


「よし 私も行く!」


私は前に立ちはだかる民兵をなぎ倒し、全開で突破した。


「チョロチョロ動き回りやがってガキが!」


ティナは胸ぐらをつかまれ そして壁に叩きつけられた。


「うっ!」


「ティナ!」


「いまだお前ら撃て!」


するとウルハが銃を奪い、撃った。


「ティナ! 今のうちに。」


「ティナちゃん大丈夫?! 治療するね!」


「ありがとう。ヒマリ。」


ティナはすぐに立ち上がり、再び突っ込んだ。


敵は瓦礫の一部を投げた。


「させるか!」


セイジが瓦礫を粉砕した。


「ティナ相手は右に避けるぞ!」


トオルが叫ぶ。


そして相手は私のナイフを銃でガードした。


「っち お前なんて速さだ。」


「速さだけじゃない。 力だってある。」


私は後ろに回り込んだ


またガード。


そしてカラスが男をつついた。


「くそっなんだこのカラスは!」


「いまだティナ!」


「ティナ、私だって戦う。」


ミナが私の横に並んだ。


「ミナ…。 よし2人でやろう。」


「くそっ前が見えねぇ!」


「はああああ!」


ティナは前に立ち、ミナは後ろに回り込んだ。


クロスするように男を切った。 そしてティナとミナは振り返り銃で撃った。


男はゆっくりと倒れた。


「ミナ。私たち初めてとは思えないぐらい息がぴったりだったね。」


「私も。 ちゃんと戦えた。 役に立てた。」


「うん! ミナありがとう。」


「まだあっちは戦ってるみたいだな。」


「そうだレンたちは?!」


すごい戦いだった。 影が敵を襲い、それに続くかのように風の刃が敵を次から次へと切りつけていた。 ミオとダイキの相性がいいのかダイキがしっかりミオを守りながら敵を囲むようにして分身がなぎ倒していた。


「あいつらの戦い方も初めてとは思えないぐらい息が合っているな。」


「うん。戦いながら学び、それを即興で実戦に応用できている。」


「ティナの指示がこんなにハマるとはな。 この戦い方なら負けないぞ。」


そして50近くいた。 民兵たちは全滅した。


「はぁはぁ…。 思ったより力を使うって大変だよぉ。 結構擦りむいたし。」


「みんな、治療するね。 ダイキさんこんなにボロボロでよく生きてますね。」


「いやいや、俺もいてぇし死ぬ思いで受けてる。 ミオがやられないように守るので必死だ。」


「ありがとねダイキ。 おかげで私も戦いやすかったよ。」


「気にすんな。」


「レンお前の影すごいな。 あんな動きが出来るなら俺の能力と相性がいいな。」


「ああ。ダイチの動きも最高に良かった。」


(みんなちゃんと戦えてる。 それなのに私はまた無鉄砲に突っ込んでいって返り討ち合い仲間に助けれた。 情けない。)


「ティナ。 気にする必要ないよ。」


「う、うん。」


(そうだ。私の能力は戦いに全くもって役に立たない。 ただ、戦えてるような気がしてるだけ。)


「みんな この調子で先に進んでいこう。私はみんなみたいに切り札ってのはないけど 足手まといにだけは ならないようにするから。」


「何言ってんだ。 ティナの指示があったから乗り切れたんだ。」


「そうだ。 ティナの的確な判断はこれからの戦いで必要だ。 これからも頼むぞ。」


「うん。 みんなありがとう。」


ミナが私の手を握った。


「ティナはまだまだ強くなれる。ここにいる誰よりも強かったティナの記憶。 それだけは何故か覚えてる。」


「誰よりも…? うん。 そうなればいいね。」


(ミナはなにかわかってるんだ。私もこれだけはわかってる。ミナも強くなる気がする。 それまではミナをちゃんと守れるように私が頑張らないと。)


「ミナ。さっきみたいにまた協力して戦おう。」


「うん。 ティナと一緒に戦うから。」


するとウルハも私の手を掴んだ。


「私も戦うよティナ。ティナがいれば絶対負けないよ。」


「うん。ウルハもありがと。」


「若いっていいな。 俺は元組織の人間だが、あの時自決してすべてを終わらさなくて良かったと思っている。 ティナとそれにこんなに多くの仲間とまた正義のために戦えることを誇り思う。 娘も今の俺を見たら何て言うかな。」


「セイジさん…。 きっとお父さんのやり方を全力で応援してくれてると思います。私もティナちゃんがいなければ死んでたと思うので。 でもみんなを治療することができる。役に立てるってわかった時は絶対死ねないって思いました。 生きて何かをやり遂げたいって人に与えられた力だと思っています。」


「そうか。俺も生きようとして今の現状を変えたいって思ったから能力を得たのか。」


「敵で能力が使える人も覚悟を決めてる人なんだと思います。 考え方、誰に従うかで敵にも味方にもなります。 分かり合えなかっただけだと思います。」


「奴らからしたら国に忠誠を誓うことが正義なわけか。 俺も前まではそうだった。」


「今は東京を目指し、国と全力で戦いましょう。 ティナちゃんが導いてくれます。」


「ああ。そのためにも俺は全力でtearsのメンバーを守る。あの時できなかったことを成す。」


「ティナとミナの戦い方もすごかったな。 お前ら銃使えたんだな。」


「そういえば私たち自然に銃を撃ってた気がする。これも未来の記憶なのかな?」


「ティナと私は未来の記憶を体に宿してるからだと思う。 それで感覚が残っていてあの動きが出来たんだと思う。」


「そうだね。でも未来の私の記憶を借りなくても強くならないといけない。現世の私がすべてなんだから。」


「まぁ俺たちもいるから安心しろ。」


「うん。 ありがと。」


(でもこのままではきっと戦いで迷惑をかける。私も、もっと役に立つ力を見出さないといけない。なるべく早く…。)


「じゃあこのまま滋賀に向けて移動しよう。」


一方その頃ティナたちと戦った能力者4人は本部へ行こうとしていた。


「はぁはぁ。」


「お前大丈夫か? くそっ頭が痛てぇ。 あの小せぇガキが俺の最後何かかけやがった。」


「あんな子供まで能力を持っているのか。 それにあのティナとかいう女。 国が一番に命を取りたがってるやつだろ。 あいつの首をもっていけば俺は国の幹部になれるかもしれない。」


「だが、俺たちだけでは無理だ。 一旦東京に集められた民兵たちを連れてこないといけない。」


「俺はどっちにしても東京までは持ちそうもねぇ。滋賀であいつらの息を止めてやる。」


すると男は通信機を取り出し、組織の人間らしき人物と通話をした。


『俺は元民兵部隊【如月】のエイタです。部隊は壊滅しました。 そしてティナが今から滋賀に向かってきます。ここであいつの首を取ろうと思うので滋賀の民兵を全部集めてください。 俺が指揮を執ります。』


『能力は使えるのか?』


『はい。俺の力と滋賀の全民兵がいれば必ず首を献上出来る事を約束します。』


『わかった。すべてお前の元に集めよう。』


『ありがとうございます。 では。』


「ってことだ。俺はここであいつらを倒す。 お前らは東京に行き俺の帰りを待ってろ。」


「まぁ好きにしろ。 俺たちはまだあいつらとやり合うには力が足りない。ここは一旦東京に行かせてもらうぜ。 エイタ死ぬなよ。」


「ああ。わかってる。 お前たちも生きて東京に辿りつけよ。」


(くそ、この頭痛を直すにはあのクソガキを殺すしかないようだな。 まずあいつからやってやる。)


ティナとtearsは滋賀に向け前進していた。そこで滋賀全域の民兵と能力者エイタが待ち受けていることを今のティナは知らない。


【みんなここを抜ければ滋賀だ。 何か嫌な予感がする。今までと何かが明らかに違う。 そう。初めての大きな戦いが待ち受けている気がした。 少しでも油断すると終わる。そんな戦争だ。 でもみんながいるから大丈夫だ。私たちは後ろを振り返らず前に進んだ。】

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