第8話 tears
ティナたちはセイジの運転で病院まで向かっていた。
「ティナ、ミナの様子はどうだ?」
「大丈夫。 ちょっと眠ってるだけ。 でも疲れた顔してる。 まるで何年も何年も戦ってきたように。」
「恐らくその子は国でずっと利用されてきたんだろう。」
「ミナが国を使っていろいろしてたんじゃないのか?」
「俺も任務上はそう見ていたが、もしその子が国にとって重要ならば使い捨てのような護衛だけでやってきたりはしない。 恐らくその子の意思だけできたって感じだ。」
「国からしたらもういらない存在と捉えられた可能性もあるってことか?」
「これだけ重要人物ならトップの護衛レベルがついていてもおかしくないってだけの話だ。」
「そんなのどうだっていい。 もうミナはここにいる。それにミナは私に助けを求めていた。」
「未来の私がしたことがミナを傷つけていたのなら私は未来の私を許さない。 でも国が仕組んだことによってそうゆう未来が起こったのだとしたらやっぱり矛先は国の連中だ。」
「そうだ。 国の連中がやろうとしていることが一番問題なんだ。」
「ミナは戦えないかもしれない。それでもミナが生きて側にいれくれるだけで安心して戦える。 一番怖いのは私の戦いに巻き込んで大切なものを失うことだから。」
「大丈夫だ。俺がティナを…ミナも守ってやるからな。」
「俺たちだ。ティナ。 こんなに年が離れたオヤジがこんなこというのもおかしな話だが、俺はティナお前に忠誠を誓った。 だから共に国の連中を倒そう。」
「レン。セイジさん。 有難う。」
私はイオリ達にメールを送った。
『もうすぐ着く。』
すぐに返信が返ってきた。
『俺たちも近くまで迎えに行く。敵の遭遇に気をつけろよ。』
「見えてきたな。 あのデカい病院だな。ん?」
目の前に光が見えた。
そして…
『そこの車止まれ。 我々は民兵部隊【如月】だ。』
「民兵隊だって?あいつらの肩に国のワッペンがついてるな。敵か。」
『こっち側の人間なら今すぐ車から降りてこっちへこい。3秒だ。』
「ティナ、相手は何人いる?」
「50…60ってとこかな。」
「そんなことまでわかるのか。 60はちょっと厳しいが、仲間と援護にくるんだろ?」
「それまでにある程度減らせればいいけど。」
『カウントを始める。 3!』
「カウントの終わりと同時に車から降りて暗闇に紛れよう。 後は隙を狙って殺っていく。セイジさんはミナを担いで安全なとこまでお願い。」
『2!』
「わかった。 任せておけ。」
『1!』
「俺も大丈夫だ。 いくぞ!」
『0! 裏切者だ! 撃て!』
銃弾が車を目掛けて一斉に放たれた。
3人は車から飛び出し、その後車は爆発した。
反対側の路地にミナを置いたセイジさんが見えた。
「ティナ、一1人ずつ的確に倒していくぞ。」
「ええ。」
セイジさんにグッドサインを出した。
すると向こうも返してきてそのまま敵陣へと突っ込んでいった。
私も後を追うように突っ込んだ。
(山で戦ったような動きでやれば大丈夫。)
『女2人男1人車から飛び降りた。 あいつらは生きてるぞ!』
私は1人の兵士を機敏な動きで背後からやる。
そして私の姿見た兵士は撃つ前にレンが暗殺した。
すごかったのはセイジさんだった。
2人の兵士の首を掴み持ち上げ窒息させていた。
この時点で無力な兵は恐ろしくなり、逃げ出していた。
「所詮は出来たばかりの民兵だ。 大したことないな」
【そして奥にいる兵士にティナが攻撃を仕掛けたときだった。】
体が一瞬、宙に浮き飛ばされた。
「きゃあああ。」
「ティナ!」
「おい!ティナ!」
「何が起こったの?! あいつに近づこうとしたら吹き飛ばされた。」
「うおおおお!」
セイジさんが突っ込む。
「ぐはっ!」
次はセイジさんの体にバイクが飛んできた。
「おい セイジさん大丈夫か?!」
「俺は大丈夫だ。それよりあいつらも何か使えるのか?」
『なんだ 大したことない奴らだ。 さっきやられた奴らは力がないから呆気なかったが、俺らは違うぞ。』
「そんな情報知らない…。 あんなことができるなんて…。」
すると1人の男が転がっていたトラックを持ち上げもう1人の男が吹き飛ばすか前に入った。
「あんなもん食らったら流石に俺でも無理だ。」
「それだけじゃないぞ。 体も動かねぇ。」
「本当だ…。 足が石のように重い。」
横を見るともう1人の男が私たち何かしていた。
「あいつが体を動かさないようにしてるのか。」
『女は生かせ。男は殺してもいい。女はいろいろ使い道があるからな。』
「ティナに手を出したら許さねぇからな!」
『まずお前から死ねよ。』
「ダメだ。いつもならこうゆう状況の時、体が勝手に動くのにあいつの力には勝てない…。」
『トラックでグチャグチャにしてやれ。』
『任せとけ!』
トラックがレンの方向に飛んでいった。
「やめろおおおおおお!」
するとトラックがいきなり爆発した。
男たちは間一髪で後方に回避した。
『なにが起こったんだ一体?!』
「間に合ったか。」
「お嬢ちゃんたち無事か?」
「ティナ! 無事か?!」
イオリの声だった。
「イオリ!それにトオルもヒマリも…。」
「ティナちゃんあいつらはティナちゃんのように能力を使えるの。それは後でゆっくり説明するけど今はあいつらをなんとかしよう。」
「…わかった。」
「ちっ あいつらまで力を使えるのか! ここは一旦避難だ。 上に報告だ。」
「逃がすか!」
ミオがドッペルゲンガーを使い3人の男に襲ったが動きを止められ妨害された。
「ちっ 体が動かない!」
「俺のスピードなら、あいつらに力を使わせる前に捉えられるぜ!」
ダイチは宙に浮き飛ばされた。
「うわぁぁぁ!」
ドンっ!
ダイチは吹っ飛んでいった。
『ちっ こんなに力を使えるやつがいるのか。』
『おいマサキさっきから見てないで手伝え。』
すると4人目の男が暗闇から現れ何かブツブツ言っていた。
『おい あれをするのか仕方ねぇな。 死ねお前ら。』
ウルハが叫んだ。
「みんな急いでここを離れて! そしてあいつはタダでは逃がさない。」
ウルハが1人の男に何かをした。
みんな一斉に後ろへと逃げた。
バーン!
急にさっきまでいた場所が爆発したのだった。
「みんな大丈夫か?」
「ああ あぶなかった。」
「あなた、なんで離れた方がいいってわかったの?」
「ただ、そんな気がしただけ。普通に感。」
「でも教えてくれてありがとう。おかげで助かった。」
「私はティナ。 あなたは?」
「…。私はウルハ。」
「そっか。小さいのに強いんだね。」
「…。 うん。」
(これがティナ?私が知ってるティナはもっと大きかった。やっぱり違うよね…。でも雰囲気は似てる。)
「あぶねぇとこだったな。」
「それにしてもお前たち3人で挑むなんて無茶しすぎだ。」
「すまねぇ。ここ来るまでに相当戦ったからいけるって思っちまった。」
「てか 後ろにいるの組織の人間じゃねぇか!」
何も知らないみんなは一斉にセイジさんを見て構えた。
「違う。 セイジさんは組織を抜けて私たちの味方になってくれた。だからもう組織とは何も関係ない。」
「そうだったのか。おっさんすまなかった。」
「セイジだ。」
「ああ セイジよろしくな。」
ひとまず病院へ行こう。 話したいこともいろいろあるからな。
「そうだね。 後、トオルとイオリとヒマリに会わせたい人がもう1人いるの。」
「ティナちゃん会わせたい人って?」
セイジは状況を把握したのか ミナの元へ行き担いで戻ってきた。
「おい こいつって…」
「そう ミナだよ。 近代町で会えた。でも私が会ったときは大人のミナだった。」
「そして私は大人のミナと戦って本来の姿に戻した。」
「ちょっと話が読めねぇけど、とりあえずミナは無事だったんだな!」
「うん。今はまだ眠ってるけど起きたらまた話せると思う。」
「ミナちゃんすごく疲れた顔してる。 早く病院で休ませてあげないと!」
「うん。だから早く病院にいこう。」
「よし、詳しい話は後だ!一旦引き上げるぞ!」
ウルハは担がれた女性をじーっと見つめていた。
(あの子も見たことがある。 すごい嫌な気を感じた。 【ティナを奪われた。】 そんな気持ちになるほどに。)
ティナたちは病院へ着き、これまでの経緯を話した。
「なるほど。 近代町でそんなことがあったのか。」
「例の人…いやミナって娘が近代町に来るのはティナの身柄確保の為とまでは聞かされていたが、本来の目的は自らの手でティナを始末することだったんだな。」
「組織の連中ではティナを始末できないと見越しての訪問だったってことか。」
「でもそれは未来のミナちゃんがって話で、現代のミナちゃんはそんなこと望んでいなかった。」
「どっちにしてもミナは私に助けを求めていた。 未来でも助けてくれなかったと言っていた。 今の私ができるのはそんな未来にさせないってことだけ。」
「そうだな。」
「大事な話してるとこすまないが、俺からも話がある。」
ダイキが割り込んできた。
「お前たちのリーダーはこのティナってことでいいんだな?」
「ああ。 俺たちはティナに忠誠を誓った。」
「レン 私はそんな柄じゃないって!」
「いいや、ティナがいなければとっくに俺は死んでたと思う。 ここにいる トオル、イオリ、ヒマリだって同じはずだ。」
「そうだな。ティナがいなかったら俺も国に従ってたかもしれない。こうして戦えてるのもティナがいるからだ。」
「だからティナちゃん、私たちをもっと頼ってほしい!」
「みんな…。」
「国にとって一番先に目をつけられたぐらいだ。お前ならこの状況を変えることができるんだろうな。 それなら俺たちもお前を信じ、お前についていく。 他のやつらもそれでいいか?」
「ああ、いいぜ。 会ったときからついていくならこの人だってなんかわからないけど思ってしまった。」
「私も。ティナを見てるとなんだか不思議な気持ちになった。 私の命をあなたに捧げる。」
「俺も異論はない。」
「俺もだ。」
「ありがとう。みんな。 どこまで期待に応えられるかわからないけど、全力で戦おう。」
そして最後にウルハが私の前に立った。
「ティナ…。」
「どうしたの?ウルハ。」
「もし、ティナが負けそうになったら私を犠牲にして。」
(…)
「私はやられない。 ウルハも守る。 だから私を信じて?」
「…。 うん。 信じてる。」
(ウルハがこんなにまで慕うとは本当にこのティナは俺たちの希望なのかもしれない。)
「それと、さっきの民兵の連中も組織化してたのを覚えてる?」
「ああ。如月だったか。」
「私たちもわかりやすいように組織化しようと思ったんだけどみんなはどう思う?」
「アリだと思う。 そっちの方がもし仲間がいたときにまとめやすいからな。」
「じゃあティナ名前考えてくれ」
…。
「tears。 うん tearsがいい。」
「tearsか。 ああ それでいこう。」
ウルハがティナを見つめながら思った。
(やっぱりこの人は夢で見たティナだ。tears…。 間違いない。 姿は違うけどあれは未来のティナなんだ。)
『私も行くよ。ティナ。』
「え?」
ミナが目覚め起き上がっていた。
「ミナ?! ミナ!」
私はミナを抱きしめた。
「ティナ今まで心配かけてごめんね。」
「気にしなくていい。 ミナがこうして生きて私の前にいてくれてる。 それだけでいい。」
「レン。トオル。イオリ。ヒマリもごめん。 未来の私が迷惑かけちゃった。」
「気にすんな。 ミナ戻って来てくれてうれしいよ。」
「ミナちゃんこれからはずっと一緒だからね。」
「うん。 自ら未来が見える力を断ち切ったの。 それと引き換えに未来の私を閉じ込めた。」
「ってことは未来の記憶は?」
「ごめん。ない。 私が何をしてきたのかもわからない。」
「記憶喪失とはまた違うってことだな。 未来のミナ支配していたから 現世のミナはまったく何も知らない状態ってことだな。」
ウルハはミナを見つめ思った。
「ミナ…。今はなにも感じない。 信じて大丈夫なのかな?」
「それじゃあ、ミナも回復したことだし、本格的にこちらから攻め込もう。」
「ここにいる人たちには俺から伝えておく。 力がないものを俺たちのような能力があるやつと戦わすわけにいかないからな。」
「うん。 そのとおり。 戦えない人を無理矢理戦わすわけにはいかないからね。」
私たちは次どうするかみんなで考えた。
するとイオリのお父さんの友人が提案した。
「もし国と本格的に戦うなら本拠地がある東京にいくんだ。」
「東京か…。 とんでもない数の敵が待ち受けてるはず。」
「もう東京内で国と戦おうと考えてる人はほとんどいないかもしれない。だが、君たちの本来の目的を達成するなら東京に乗り込むんだ。」
「じゃあ目指すは東京か。」
「道も封鎖されていたり、組織の連中が阻止してきたり一筋縄ではたどり着けないってことも忘れないようにな。」
「あと、トオルのお父さんとバニラもこっちに呼びたい。」
「それなら俺たちに任せてくれ。」
待合室にいた人たちがやってきた。
「君たちほど我々は力がないが、君たちの助けに少しでもなれるなら責任をもってここに連れてくること保証する。 だから君たちは東京に向かってくれ。」
「俺たちはそういった力はないが、普通の民兵ぐらいなら対等に戦える。 連れて行ってくれ。」
「ありがとう。共に戦おう。」
『tearsの未来に栄光あれ。』
「俺たちもようやく組織化してきたって感じだな。」
「ある意味 国に近い気もするがな。」
「ティナちゃんについていけばきっと明るい未来がある。だよね?ミナちゃん。」
「う、うん。」
(ティナは変わった。いい意味で。今のティナなら間違った道にはいかないと思っていいよね…?)
「私を信じて。 未来ではどうなっていようが、関係ない。塗り替えればいいんだから。」
(もし国を説得しても通じないようなら私はこの国を捨て自分の国を作る。)
(それがいい方向にいくのか悪い方向にいくのか今はわからない。 でもいい方向に向かわせるしかない。人を選別なんかしたりしない国を作りたいだけ。)
(じゃあ、みんな行こうか。」
【こうして私たちは敵本陣がある東京に向かうことにした。長い旅路となるはず。そして犠牲は避けられない戦い。 みんなもそれをわかった上で私についてきてくれる。だから私も全力で戦うから。 ミナ。あなたを失わない未来を絶対に切り開くから。】
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