第6話 裏切りか正義か


【ティナたちは近代町に到着していた。】


イオリからメールが2件来ていた。


『もうすぐ病院につきそうだ。 そっちはどうだ?』


『大丈夫か? 今病院について無事父さんの友人にも会えた。こっちは思っていたように人がいたぞ。』


私は戦いに夢中で気づかなった。 すぐに返信を返した。


『連絡遅れてごめん。 今、近代町についたよ。もしかしたらミナのことがわかるかもしれないの。なるべく早く合流するね。』


「どうした? イオリからメールか?」


「うん。無事にお父さんの友人にも会えて仲間もいたって。」


「そうか。 それはよかった。 俺たちも早く合流できるようにしよう。」


「うん。」


私たちは近代町を一望できる場所で見渡した。


家が燃え、人の姿もなかった。


「ひでぇな。 俺たちの町がこんなことになってるなんて。」


私ははらわたが煮えくり返る、思いでいた。


「レン。 とりあえず生きてる人がいないか探そう。 もし組織の残党がいたら一人残らず倒すよ。」


「ああ。わかってる。 気を抜かずに行こう。」


すると私たちは2人の組織の人間を捉えた。


「ちょっとまって。あそこに人がいる。」


「あれは組織の人間だな。 ってあれはなんだ?」


目を疑った。 そこには山積みになった死体が積み上げられていた。 そしてその向こうでは生きている近代町の人たちがトラックに乗せられようとしていた。


「おい、ティナあれって…。」 


「ってティナ?! くそっ。」


私は体が勝手に組織の方に向かっていた。組織の人間が私に気付く前に背後から切りつけていた。


そして激しく倒れた。


するとトラックに乗せられようとしていた人たちがその光景を見て叫んだ。


トラックに乗せようとしていた兵士らしき男がそれに気づいたレンが間一髪で始末した。


私は2人を殺ったあと、山積みになった死体を見つめた。 その中にはすれ違ったことがある人、よく挨拶をしてくれた近所の人もいた。


あのときのみんなの笑顔を思い出し私はこみあげていた感情が爆発し、涙が溢れてきた。


「レンごめん。 私もう完全に自分を止められないかもしれない。」


「俺もだよ。」


横を見るとレンも涙を流していた。


レンが見つめる方向を見た。


私はすぐに気づいた。 その死体の中にレンのお母さんもいた。


レンが口を開いた。


「安心したよ。 母さんは最後も抵抗したんだ。 いまトラックに乗り込もうとしてたら俺は母さんを許せなかったが、ちゃんと戦おうとしてた。 でも来るのが遅くなってごめん。守れなくごめん。」


私は言葉をかけれなかった。 かけられるわけがない。 こうなったのも私のせいだと思ったからだ。

今、最後に私たちにできること。それは 国に持っていかれる前に私たちでこの住み慣れた地に埋葬することだと。


「レン…。」


するとレンがトラックに乗り込もうとしてた人たちに叫んだ。


「おい! 俺たちは国と戦っている! 俺たちについてくるやつはいないか?」


すると何人かが名乗りを上げた。


逆に勝ち目があるわけないと思う者も、もちろんいる。


私は言った。


「ついてくる人はここに残ってほしい。 でもこの国のやり方に従うなら自分の足で行けばいい。 でも次に会うときは敵だ。 容赦はしない。」 


すると


「ああ お前のせいだ! 俺は全部聞いたからな! お前がいなければこんなことにはならなかったんだ! 次会ったときは殺してやるからな!」


そうゆうと組織のトラックを運転して何人かは出て行った。


残った人たちは言った。


「君がティナだね? 最初はあの組織の連中がきて君の話を聞いたときは物凄い怖い人なのかなと思ったけど、普通の女の子じゃないか。」 


「そうだ、こんな女の子が戦おうとしてるのに俺たちが諦めてどうするんだ!」


「みんな…。」


「過去が見えるからどうしたって話だよな。 国がやろうとしてることの方がよっぽど残酷だろ。」


「とりあえずこれからまた増援がくるかもしれないのでみんな一緒に戦ってくれませんか?」


(例の人というのにミナの情報を得られるかもしれない。)


「俺も戦うぜ。」 「俺もだ。」 「微力だけど私たちも戦うよ。」


「みんな有難う。 あとこの殺されてしまった人たちの埋葬もしたい。 みんな手伝ってください。」


「レン、それでいい?」


「ああ。 母さんは俺の手で埋葬してやりたい。」


「うん。 わかった。」


「俺は母さんのためにも戦ってやる。」


私はレンの怒りを無言で見つめていた。


時間は夕方4時。


イオリにメールを送った。


【ごめん。ちょっと今、立て込んでて夜にはつけるようにする。こっちは大丈夫だから心配しないで。】


すぐに返信はなかったけど イオリたちは大丈夫なはずだ。


簡易的ではあったけど埋葬も終わり、例の人を待った。


「よし道の封鎖は大体これぐらいでいいだろう。」


「これで少しでも侵入できる人数を抑えられたら戦いやすくもなるだろう。」


「戦えない子供たちは公民館の方に避難してもらった。」


「了解です。」


あれから1時間くらい経っただろうか。 こちらに向かってくる何台かの車が見えた。


「おい、車が何台かこっちに向けてやってくるぞ!」


「きたか。」


すると車が一斉に止まり中から軍隊っぽいのが降りてきた。


そして後方に女性がいた。


「ティナ。 あいつか?」


「うん ここからでは顔は分からないけどあれが例の人だと思う。」


するとメガホンで隊長らしき人物が喋った。


「道をふさいでこれはどうゆうことだ? 従う人間の輸送はどうなった? 我々の仲間はどこへ消えた? 女の始末出来てるのか?」


近代町の人が胸ぐらをつかまれ尋問された。


「し、知らねぇよ! 俺はお前たちには従わない! やれるもんならやってみろ!」


「そうか。死にたいのか。」


一斉にその男性に銃を組織の人間は向けた。


『私は前に出た。』


「私はここだ。」


「やるなら先に私からやればいい やられるわけないけどね。」


「生きていやがったか。」


今度は私に銃口が向く。


「でもその前に後ろにいるあんたと話がしたい。」



「させる訳ないだろ 攻撃開始だ! あの女共々ここにいるやつら全員撃ち殺せ。」


『待って。』


するとその女が口を開いた。


「は、はい。」


組織の男たちは銃を下した。


「ティナ久しぶり。」


聞き覚えがある声だったが、私が知っている声とはかけ離れたぐらい大人の声だった。


「あんたはだれ?」


「私はミナ。」


「え…?」 


「おい ミナって…」


「でも今のあなたが知ってるミナではない。」


(そう やっぱりあれはミナだ。 でも私たちと同じ年のミナではない。)


「私が知ってるミナはどこなの? あなたは一体…?」


「こっちの話が先。 あなたはもう未来の自分には会った?」


「ええ。 私は未来の自分から助言をもらった。 だから今こうして戦ってる。」


「やっぱり。 もう全部知ってしまったんだ。 過去が見える…いや過去に行ける力が間に合ったということか。」


「今のあなたになら話してもいいか。」


「私は逆に未来を見ることができる。行くことだって できる。」


「え…? それって私と逆のことができるってこと?」


「そうゆうこと。 小さい時あなたが話したこと、私は興味本位で聞いていたわけではない。 私も悩んでいたこの力に自分と同じような人間がいるんだと正当化できた。

だからあの時は素直に嬉しかった。」


「でもなんでミナはそいつらの側についているの? なんで未来の姿でいるの?」


「今のあなたにはわからないよね。 あなたが未来で何をしたのか。 そして私を裏切ったことも。」


「意味が分かんない。 私はミナに会いたい。 ただそれだけのために戦ってきた。 そしてミナが国に手を貸し、戦争を起こしたんじゃないの?」


「私もティナと同じ考えで戦った。 ティナも最後まで国と戦っていた。 でもあなたは…未来のあなたは最後に裏切った。」


レンが横やりをした。


「黙って聞いていたら過去だの未来だのそんなの関係ねぇだろ! 御託ばっか並べんなよ。 未来のティナがどうこうって話は現代の俺たちには関係ない話だ。 そんな未来になるなら変えればいいだろ?」


「レンか…。 あんたも裏切られることに今は知らないか。正確にはあんたは裏切られたにもかかわらず最後まで信じ続けたが正しいか。」


「馬鹿言え。 おれたちは死ぬ思いで戦ってるんだ。 目的も一緒だ。 お前はミナなんかじゃねぇ。 これ以上 訳が分からないこというならお前も倒す。」


「やっぱり昔から変わらないか。 そうゆう男だったよね。」


「うるさい!未来の私が何をしたなんか今の私には関係ない。 それに未来しか見えないあなたが過去にいることがそもそもあり得ない。」


「そうだ。 ティナが過去にきたことは出来てもお前が来れるなんてあり得ねぇよ。」


「あり得ないか…まぁそう思うなら思えばいい」


「なに?! 答えになってないぞ。」


「でもこれだけ言っといてあげる。 この先、未来を変えたいなら自分とも戦わないといけないってことを。」


「あんたと話しても意味がない。 ミナを返して。」


「あんたがいなければ私はあんなことにはならなかった。 信じた私が馬鹿だった。過去のあんたを今ここで止めないといけない…。」


「おいティナこいつはミナじゃねぇ。やるか?」


頭の中に声が聞こえてきた。


『ティナちゃん…ティナちゃん…』


(だれ?)


『ミナ。 私を倒して。 助けて。』


(ミナ?!) 


「ちっ 過去の自分というのはいつも邪魔をする。」


「ティナ。 お前がいるからすべて悪いんだ。」


『あれは私なんかじゃない。未来のティナちゃんは正しい方を選んだ。こんなの私じゃない。』


(ミナわかってる。 私はどっちかではなくどっちも守るって決めたから。)


『うん。 信じてる。』



「もういい。 あいつを倒せ。」



「ミナ絶対助けるから。」



「よし俺たちもいくぞ!」


近代町のみんなも組織の連中と戦い合った。


私はその未来のミナであろう女とずっと目を合わせていた。


そして私はミナに向かって突っ込んだ。


「ミナーーー!」


すると組織のリーダー格ぽい男が私の前に立ちはだかった。


「ふっ 行かせねぇよ ガキが。」


私は首元を掴まれた。


「く、くそ。」 


すると横から大柄の男がタックルした。


「ぐはっ!」


「お、お前は誰だ?!」


私は咳込みながらも見上げた。


するとさっき自決したと思っていたセイジという男が殺気をまとい立っていた。


「遅れてすまなかったな。 もう大丈夫だ。 こいつは任せろ。」


私は軽く頷き ミナの元に走った。


ミナは堂々と立っていた。


(あの男は私の未来図ではティナが殺したはず…なぜ生きてる? 未来を変えたものは私の未来予知でもわからないってことか。)


拳を振ったがかわされ腹に蹴りをいれられた。


ぐっ…。


そして服の胸ぐらをつかまれた。


「弱い。 こんなに弱いなんてね。」



「うるさい!」



私は振り払いまた攻撃をしたが、すぐに返り討ちに合った。


「か、勝てない…。」


するとミナは銃を取り出し私に向けてきた。


「もう終わらせてあげる。 こんな弱いあなた見たくなかった。」


私は自分の弱さにそしてミナに殺されるぐらいならと覚悟を決めてしまった。


『大丈夫。 私はあなたに託したから弱くなんてない。』


(この声は…。 私…?)


『今度はちゃんとミナを助ける。もう失わせない。』


(そうだ。 やれる。 ミナを取り戻す。)


【私は未来の私と完全に混ざり合った気がした】


『自分にはどう映っているかはわからない。 でもこれならいける。』


【ミナを止められる。 ミナを取り戻せる。】


そしてミナは私に発砲した。


すかさず避ける。


「ちっ。」 


(この感じ…。 あの時のティナの動き…。)


「ミナァァァァ!」


私はミナの腹をけり上げ顔を殴った。


(ミナはティナの顔をじっと見つめ、さっきまでの顔つきが悲しい顔つきに変わっていた。)


そしてミナはまた銃を撃とうとしたが私はそれを弾き飛ばしまた殴った。


気付いた時にはミナは気絶していた。


私は手を止め、ミナを見下ろしていた。


するとミナの体が光輝きだんだん体が縮んでいった。


夢でもみているかのように。


後ろではレンたちがまだ戦っていた。


「ミナ待ってて。 戦いを終わらせてくる。」


私はレンたちの加勢に行った。


一方 組織の男とせいじが戦っていた。


「お前はどこの組織に属してるやつだ?」


「組織だって? 俺はもうそんなものには属してねぇよ。」


「そうか。 裏切者って訳か。」


「だったらここで始末してやるよ。」


「ああ本気で来いよ 国の犬が。」


本気で殴り合った。


だが、今の俺は前の俺ではない。


一度すべてを失った人間に勝てるやつはいない。


持っていたナイフで容赦なく首を掻っ切った。 


そして男は崩れ落ちていった。


レンたちの加勢にいったときには組織の人間はほとんど壊滅していた。


近代町の人たちも何人か犠牲が出ていた。


そして戦いは終わった。


「ティナ、ミナはどうなった?!」


「やったよ。 ほら見て。」 


「あれは現代のミナ…だよな?」


「うん。 まだ気絶してるから起きないとなんともだけど。」


「それよりせいじ…さんきてくれたんだね。」


「…」


「俺もお前たちについていっていいか? 俺もお前たちと一緒に戦いたい。」


「せいじさんがそうしたいならそうすればいい。」


「でも娘さんも一緒に連れてきてもいいし。」


「娘は死んだ。 殺された」。


「え…?」


「私たちは言葉を失った。 そう。 私を始末できなかったこの人はもう用なし。」


「すなわち家族も皆殺し。」


「いや、ティナのせいではない。」


「俺がもっと早く娘を連れて国と対立していればこうはならなかった。」


「俺の力不足だった。」


(私は自分を責めることしかできなかった。 誰かを救えば誰かを失う。両方を救うことがこれほどまでに難しいとは思わなかった。)


「ごめんなさい。」 


「ティナが悪いんじゃない。 この国がおかしいんだ。」


「だから今は次に備えよう。」 


「うん。」


「それでだ。 ティナはこれからどうするんだ?」


「病院に仲間が待ってるの。 だから早くいかないと。それとミナも連れて行く。」


(あれが例の人か…。 国が重要視するほど力があるように見えないが、それはこのティナもそうか。)


「わかった。まずは病院に行こう。」 


「ちょっと待っててね。」


「近代町の皆さんありがとう。 これから私たちは病院の方へ仲間と合流してきます。」


「ああ、 気を付けていけよ。」


「俺たちは子供たちがいるから行けねぇけどここにまた攻めてきても今のように戦ってやる!」


「ティナもうここは大丈夫そうだな。」


「ええ。」


(気づけばすっかり夜になっていた。)



「組織のやつらの車で行けば早くつくから俺が運転しよう。」


「さぁ乗れ。」


「せいじさん安全運転で頼むぞ。」


「任せておけ。 じゃあいくか。」


イオリからメールが来た。


『ティナに紹介したい仲間がいる。もうこれそうか?』


『今から行く。こっちも会わせたい人がいるから。』


【近代町に戻って来てよかった。 最初は敵対していたセイジさん。 娘を失い私と同じように国と戦うことを決意した。それにミナ。 やっと会えた。 未来のミナが言ってた言葉は今の私にはまだ理解できなかったけど、今はミナに会えたからそんなことはどうでもいい。 もう失いたくない。だから私が絶対に守る。早くこのことをイオリとヒマリに教えてあげたい。 私たちは急いで病院へ向かうことにした。】

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