邪神の翼

春泥

プロローグ

 大須の老舗ライブハウス、Electric Lady Landエレクトリック・レディ・ランド(通称E.L.L.エル)から、ライブの興奮冷めやらぬ二人の若者、ミヤとヒロが、近くの白川公園にやってくる。敷地内に名古屋市科学館と名古屋市美術館を内包する大きな公園は緑豊かで、野外アートを楽しむことができる散歩道もある。


「木のまちかど」と名付けられた白川公園南西部の出入り口から二人は公園に入り、散歩道を通って、科学館前、噴水、美術館周辺を散策するうちに、あちこちに屋外展示されている彫刻や絵画などのパブリック・アート作品から、不穏な呟きを聞かされることになる。彼らは、「邪神の復活」と「空が落ちてくる」ことをしきりに心配していた。

 ライブの余韻に浸りまくっているミヤは、それらの言葉にまったく耳を貸さないが、ヒロは徐々に不安を募らせていくのだった。そして二人は、陸に打ち上げられたために力を失った邪神に遭遇する。

 オブジェたちからの忠告をきちんと聞いていたヒロのお陰で、邪神を復活させずに済んだと喜んだのも束の間、別の誰かが禁を犯したために、宇宙(科学館のプラネタリウム)が落ちてくる秒読みが始まる。

 二人は逃亡を試み、科学館前に展示されていた市電の車両に乗り込むが、それは屍者を乗せて賽の河原へと運ぶ電車だった。

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