隣の部屋の事
斎藤 三津希
203号室
「借金返済…俺いるのは四畳の世界…えぇと…やっぱ無理、俺才能ねぇわ。」
自分自身に言い聞かせるように
『ギシッ…ギシッ』
明とスマホのにらめっこの最中に微かに聴こえてくる
さらに、追撃のように聴こえる喘ぎ声に「学生の本分は勉強だろうが!隣の部屋まで聴こえる音で盛る事が本分なのか?」という本音が漏れかけるが、一旦おいておき、心を落ち着かせると
『ドンッ』
いつも通り冷静に隣に聴こえる程度の壁ドンで対処する。
『キリキリキリ…』
耳をすまして聴こえるのはコオロギの声、どうやらボーカルはカップルから虫に交代したらしい。
しかし、今は慣れたが隣が越してきて一ヶ月経つがすでに四回、今回を含めると五回目で、さすがに堪忍袋の緒が切れかける。
「次うるさかったら絶対文句言お…。」
そういうと明は求人サイトを目を通しながら眠りについた。
『ギシィ…』
隣人は一日たったら、騒音で壁ドンされた事実をどうやら忘れるらしい。
これでまた喘ぎ声が聴こえようものならばもはや怒りを通り越し呆れが勝つだろう、などと考えていると予想外の音が聴こえる。
それは喘ぎ声などと呼べる甘い声ではない男の声で、そして隣人の声でもなかった。
隣人が男なのは越した時に知っているが、その時の声とは似ても似つかない声が今、隣の204号室から聴こえている。
彼女と声真似でもしてふざけあっている可能性もあるが、だとしても違いすぎる、これはいったい誰の声だろう。
まぁ、触らぬ神に祟りなしだから関わらないのが吉なんだろうが、万が一の事があるし、明日にしよう、明日に。
明は考えてるのをやめて眠りについた。
『ピンポーン…』
鳴らしたチャイムに返答はない。
「あのー、下の階の者ですが、こちら宛の荷物が間違って届いちゃって、今いますかね。」
念のために声をかけたが返答はない。
出掛けているだけか何かあったのか、もし後者だとしても大丈夫、護身道具がある。
大丈夫、大丈夫。
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