第2話出航ヨーイ

呉鎮守府の辺に着き伊藤との待ち合わせの場所に急いだ、途中には朽ち果てた軍艦榛名と青葉の姿があり、どうしようもない悲壮感がそこにはあった、道端には乞食をする子供の姿一昔前ここは空襲があり親を亡くしたのだろう、そのうちの1人が寺内のもとへ駆け寄り悲鳴と思えるようなそんな声で詰め掛けて来た、「何故日本は負け俺らはこんな乞食をしなくちゃなんねえんだおめえら軍人がしっかりしていないからだろ将校さん」寺内は言い返すことができず静寂が走った、彼の言っている事は決して間違ってはいないそう彼が思ったからだ、彼は泣き始めてしまい寺内は抱きしめることしか出来なかったのだそしてその場を去った、呉鎮守府の正門についた鎮守府内は閑散としているどころかむしろ騒がしい程慌ただしい様子であった、私は正門で伊藤から押し付けられた紹介状を、海兵に私通してもらった、伊藤はどうやら呉鎮守府の岸壁に居るそうでそこへ駆け足で向かった。伊藤は私の顔を見るなり嬉しそうな顔をし、「よく戻ってきたな、まぁお前の事だ来るこたぁ分かってた」そう言われ自分が見透かされたようで少し恥ずかしかったが本題をすぐに聞いた、「なぜ私をこに?」

「そういえば伝えてなかったな、君には駆逐艦ユキカゼの艦長に再び返り咲いてもらう」それを聞いた瞬間なんとなく事態を察した、そして近くにあった木箱に海図を開いた、久しぶりに見る海図は少し新鮮だった、「ここが呉だ、君たちはまず最初に横須賀に行って戦艦長門と空母葛城と鳳翔、駆逐艦響、夕風そして後日シンガポールから高雄が回航される、今現状の主戦力はこれっぽっちだがなんとか本州上陸の手だけは鈍らすことが出来るはずだ、新鋭艦が出来るまで少々待ってくれ」私は軽くうなずき、ユキカゼに乗艦し出航用意に取り掛かった、まず軽く船員に挨拶をし缶を温め、準備万全にした隣にはちっぽけな駆潜艇が護衛でついてくるそうだ、私はここまで手ひどくやられ悔しく思えた、そして遂に機関が動き出しゆっくりと加速していった、動き出すとすぐに青葉が見えてきた、そして榛名、日向、伊勢と朽ち果てた日本の大戦力を見て虚しく思え艦橋でたばこを吸い、吸い殻を手向けの花のように海に投げた、私の戦争はまだ始まったばかりだ。

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