第6話

初めは、ただただあなたのことが好きでした。大切でした。見返りを求めることも、相手からの気持ちを期待することも無く、ただ純粋にあなたのことが好きでした。こんな私でも、人を本気で好きになることが出来るんだと、それだけで満足でした。

でも私は、好きになれたということに満足すると、次は相手の気持ちが私と同じであればいいのにと思うようになった、欲張りな人間です。私があなたを大切に思う気持ちと同じぐらい、あなたもそうであって欲しいと、私があなたに会いたいと思う気持ちと同じぐらい、あなたも私に会いたいと思って欲しいと。

あなたにこの気持ちを打ち明けてしまいたい、何度そう思ったことでしょう。でも私は、あなたに拒絶されるのが怖くて、あなたともう連絡が取れないかもしれないと恐れて、言えませんでした。

私は欲張りで、ないものねだりで、怖がりなのです。相手の気持ちが私と同じでないことは分かっています。そんな相手に私の一方的な好意を、身勝手なこの気持ちを伝えることが正しいのかと葛藤しました。私は結局、あなたが東京に帰ってしまうまでにこの気持ちを伝えることはできませんでした。

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