トリあえず

アキノリ@pokkey11.1

第?章 逢いたくて

ヤドリギを見つけた渡り鳥

美しい鳥

まるで儚い鳥。

彼女には渡り鳥というあだ名が付いていた。

何故渡り鳥かといえば簡単だ。

3年間だけ日本に居るという形で日本にやって来た外国人と日本人のクォーターの銀髪の超絶美少女。


顔立ちはまるで人形のように小さく。

そして笑顔が絶えない。


だけど俺、山口康生(やまぐちこうせい)は外見を好きになったわけじゃない。

どこを好きになったかって?

その可憐な性格だ。

だけど俺は所詮モブであるから。

彼女には届かないと思い高校1年生の頃からずっと手が止まっていた。


時間は無情だ。

3年間結局俺は何も出来ず。

彼女と俺は卒業してしまう形になりそうになっている。


でもまあ。

最近はこれで良かったなって思っている。

愛が冷めた訳じゃないけど。

ただ手が届かないなって。


そう思いながら俺は日々を過ごしていた。

ホームステイして来た彼女の名前はサーシャ・イイハ・由奈という。

俺は彼女に対して初恋を抱いたけど。

それは直ぐに捨てた。

何故なら俺は...彼女の隣に立つ様な人間でない感じがするから。


俺と由奈は実は慣れ合う様な仲である。

どういう事かといえば高校生活が始まる入学式。

その時にあまり...慣れ合いが出来なかった彼女を救ったのが俺だった。


それから彼女は生徒会副会長を務めあげるまでになり今に至る。

由奈とは正直、疎遠の形になりつつあった。

それは...正直に言って彼女が輝いているせいだ。


だからこそ俺みたいなモブは近付かない方が良い。

そう思って俺はあまり関わらずだが...それでも家に帰る時はアパートで隣同士だったのもあり一緒に帰っていた。


恋人と勘違いされる時も数多くある。

だけどその度に俺は周りにこう説明していた。

「由奈は美しい渡り鳥だ。俺みたいなモブは鳥以下だよ」という感じでだ。

クラスメイト達はそれで納得していた。


そんな由奈だが何故か彼氏を作ろうとしなかった。

由奈は彼氏を作ろうとしても嫌がる。

そして告白されれば「御免なさい」と。

そういう感じで彼氏は居なかった。

俺は全く訳も分からず「?」を浮かべる日々だった。


その中で。

月日は無情である。

何故ならあっという間に彼女は...外国に帰る時期に差し掛かっていた。

彼女は3月の高校卒業と同時に一旦、外国に帰らなくてはならない。


何というかまあこのまま卒業してから彼女を見送っても良いが、と思っていたが俺は決意する。

どうせ高校最後だ。

また捨てた思いを。

ゴミ箱に捨てた思いを拾ってから。

最後にダメもとで告白してみようとだ。


俺はその決意をしてから外国に一旦帰る彼女の為に指輪を作ってみた。

所謂、銀で手作り出来る代物。

それを持ってから俺は...俺は考えたが。

「やはりモブが告白しても」と呟いてしまった。


そして俺は諦める気持ちが強くなり。

(気持ち悪がられる)と思いその指輪は廊下のごみに捨てる事にした。

それから俺は諦めた。

目を閉じて息を吸い込む。


「何をしているんだか」


そんな事を呟きながら俺はそのまま俺は卒業の日を迎える。

3月9日にだ。

それから俺は由奈を見る。

由奈は周りの大勢の友達と別れを惜しんでいた。

その姿を見ながら俺はその場から踵を返して去る。

すると声がした。


「待って」


と。

俺ははっきりその声を聞いてから背後を見る。

そこに由奈が立っていた。

由奈は俺を見ながら息を切らしている。

焦ってやって来た様だ。


「どうした?由奈」

「...これ何?」

「...え?」


ゴミ箱に捨てた筈の指輪とケースを由奈が何故か持っている。

俺は衝撃を受けながら「どうしたんだ!?これ!?」と唖然とする。

すると「見ちゃった。偶然...指輪と指輪のケースを捨てるのを。だから拾った。貰っても良い?」と言ってくる。

それから胸元に添える。


「...そうか。もう気にするな。捨ててくれ。それは。俺の初恋に創った代物だ」

「え...」

「...?...何でお前そんなにショックを受けているんだ」

「...は、初恋...誰?」

「え?...い、イヤ。それは言えない」


何でそれを言わなくちゃいけない。

思いながら俺は「と、とにかく帰るから」と踵を返す。

そして俺は去ろうとした時。

由奈が俺の袖を掴んだ。


「...その。言って」

「...何を?」

「好きな人」

「...言えない。俺は...うん」

「何で言ってくれないの?」

「...だってお前に関係無いし...俺はモブだから」


ショックを受けた様な顔をする由奈。

それから俯く。

「分かった。もう聞かない」と言いながらそのまま立ち去る。


そして友人達の元に戻る。

俺はその姿を見ながら俺の友人達とその場を後にした。

ファミレスで卒業パーティーをした。



そして...今日は本当の本当に最後の日。

3月11日にイギリスに飛行機で帰ってしまう。

俺は横断幕を掲げるクラスメイトに混じってから帰ってしまう由奈を見る。

由奈は何処か悲しげな顔で俺を見ていた。


「...楽しかったね。高校生活」

「...そうだな。由奈」

「...でもね。楽しくない部分もある」

「え?それは」

「...何でもない。じゃあ帰るから」


そしてスーツケースを持ってから手を振ってゲートをくぐって行ってしまうその姿を見ていると背中を押された。

クラスメイト達に、だ。


「渡り鳥はヤドリギを見つけた」と。

俺は「???」と意味の分からない言葉を発するクラスメイトを見る。

空港のゲートはもう直ぐ閉まる。


「お前良いのか。このままで」

「そうそう。俺も何だか察していたけど」

「そう」


男子も女子も「...由奈はお前が好きだったんだぞ」と言ってくる。

俺は「...は?!!!?」となりながらクラスメイト達を見る。

最後にアイツは...そんな。

まさか本当にか!?


「行けよ。後悔するな」

「そーそー。っていうか男を作らなかったのってこれか」

「だなー」


俺はその言葉に頷きながら駆け出す。

それからゲート先に居る由奈に「オイ!」と言った。

すると由奈が振り返って驚く姿を見せる。

そして息を切らして服装を乱れさせている俺に「何?」と聞いてくる。


「こんなみみっちい事するなよ。俺だってなぁ」

「...???」

「お前が好きだったんだよ!!!!!」

「え...?」

「お前がどんだけ好きか分かって無いだろ!めっちゃ好きだ!!!!!」

「...!!!!!」


そして由奈はスーツケースを落とす。

それから俺を見て涙を浮かべた。

本当にクソッタレ。

今まで気が付かなかったよ。

そう考えながら俺は「その今嵌めている指輪。お前に渡そうって思っていた」と言ってから立ち上がる。


「...好きだ。...由奈。付き合って下さいとは言わない。だけど...好きだ」

「...帰る間際に言わないでよ...そんな言葉。帰れなくなっちゃう」

「...」

「...私だって貴方が好きだよ。大好きだよ」


そして由奈は俺に駆け出して来た。

それから胸元に手を添えて来る。

飛行機の時間が間に合わなくなる。

そう思い俺は「由奈。飛行機」と言うが由奈は「もう帰らない」と言う。

いやいや。3年前からの約束なのにそんな我が儘通用しないだろ。


「...帰りたくない」

「...」

「...好きな人だから」

「...なあ。由奈」


俺は由奈を剥がす。

それから「卒業旅行で必ずイギリスに行くよ。今度。絶対に。だから今は...」と言うと由奈はキスをした。

まさかの展開に俺は目を見開く。


「...約束だよ。トリあえずでもない。絶対に来てよ。私達、恋人なんだから」


周りに人が居るってのに。

そう思いながら俺は由奈を見る。

すると由奈は「えへへ」と言いながら最高の笑顔を浮かべる。

それから「もう未練なく帰れる」と笑顔のまま俺にハグをした。


「...じゃあね」

「...今月必ず行くから」

「うん。待ってる」


そして俺は由奈と別れ。

その...半月後。

俺は直ぐに由奈の元に向かった。

そして俺達は再会のキスを交わした。


fin

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