第32話 誰の花?

某社を退職した時の話です。

翌日に実家に集まる用事があったので、タカナシは飲んだ足でそのまま帰省しました。


手には送別会でもらった花束。

なかなか自分で花束を買うことなんてないので、嬉しいものです。

しばらくはテーブルの上に飾って楽しもう、なーんてほっこりしながらお花を眺めたりなんかして。




実家につくなり、母がニッコニコの笑顔で出迎えてくれました。



母「わあ!綺麗!!ありがとう!!」


タカナシ「??」


母はタカナシの手から花束を当然のようにとりあげます。


母「嬉しい。ラッピングとって水につけちゃっていい?」


タカナシ「え…?…んと、それ、自分がもらったやつなんだけど…??」





母「え?」





タカナシ「え?」





2人「……」











母「なんだ!送別会の花だったの!」




母は若干がっかりしている様子。





タカナシ「え?プレゼントかと思ったの!?いやいや、今日、送別会って言ったよね?」










母「……今日、母の日なんだけど。」







—はっ!!しまった!!




律儀なタカナシは、毎年母の日には欠かさず花を送っていたのですが、飲み会があったので今回に限っては母の日のことをすっかり忘れてしまっていたのです。



タカナシ「あ、ごめん…また明日買っ…」





母「まあいいわ。これ、もらうからね?」





えっ、マジ!?

嘘でしょ!?汗




母の日を忘れられて怒っているのか、母はタカナシがもらってきた花束を、有無を言わさず自宅の花瓶に飾りました。




…ああ、1年間の思い出が…




タカナシの中で何かがほろほろと崩れ去っていく音がしました。





しかし、母の日をすっかり忘れていたタカナシは、強気な母に何も言い返すことなどできなかったのでありました…。涙




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