悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫

第1話

 詳細は省くが、どうやら俺は異世界とやらに転生してしまったらしい。

 そして、その異世界とはいわゆる〝悪役令嬢モノ〟の世界らしい。

 さらに言えば、よりにもよって俺はその〝バカ王子〟枠に生まれ変わってしまった、らしい。





 説明しよう。バカ王子とは即ちバカ王子のことである。

 身も蓋もない説明だが、実際、そうとしか説明しがたい連中なのだから仕方ない。悪役令嬢モノの漫画なり小説なりに一度でも触れたことのおありな方は「アレか」と即座にピンときて頂けるだろう。そう、そのバカ王子だ。冒頭で主人公たる悪役令嬢の婚約者として描写されるも、秒で別の令嬢(大概それは悪役令嬢とは真逆の可愛い系。乳もデカい)を侍らせて登場、悪役令嬢に婚約破棄を言い渡す。大概は王子や貴族の子息として設定されるが、それにしては無知無学、短慮の極みでおまけにキレやすい。辛うじてマシな容貌以外は全くもって救いがたいカスの権化である。

 で、悪役令嬢モノは多くの場合ざまぁ要素を含み、最終的にこのバカ王子は経済的、あるいは政治的に破滅するのがセオリーとなっている。どうして一介の、別にオタクでもない普通の男子大学生たる俺がこんな知識を有しているのかというと、俺の姉貴がその手のジャンルのガチオタであり、子分、もとい弟にも強制的に摂取させては反応(姉貴に言わせれば初見勢の新鮮な悲鳴)を喫していたからだ。……って、今はあのクソ姉貴のことはどうだっていい。

 何にせよ、いわゆる悪役令嬢モノについてもそれなりに履修させられた俺だが、その俺が、よりにもよってその作中最悪ポジたるバカ王子枠に転生しちまうとはマジで何事だ。ううっ、どうせ異世界転生するなら現代知識で勝ちまくりモテまくりのチートハーレムライフを満喫したかったよううう。




 だが。

 この時の俺はまだ知らなかった。俺が転生したのは、そもそも悪役令嬢モノの世界ではなかったということを。

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