狐娘・オブ・ザ・デッド〜私だけ免疫を持っていたので、人喰い狐娘を一匹残らず駆逐する〜

アカバコウヨウ

プロローグ ドーン・オブ・ザ・狐娘

「こやーん!」


「ごゃぁああああっ!」


「こややややややーん!!」


 そんな声と共にドンドン激しい音を立てて叩かれる扉。

 外にいる狐娘は三体、奴らは凄まじい力を持っているため、この鉄製の扉であってもそう長くは持たないに違いない。


「ひ、ひぃ!! もうダメだ! 俺たちはここで死ぬんだ!」


「だからこんなクエスト受けるの嫌だったんだ! 砦に立て籠ってる生存者の救出なんて……最初からみんな死んでるか、キツネコックスに感染してあの狐娘になっちまってるに決まってる!」


 と、聞こえてくるのはゴブリンとオーガの泣き言だ。

 たしかに状況は絶望的だ。


 砦の一室に立て篭もり、外には狐娘が三体。

 先も言った身体能力だけでなく、狐娘に噛まれればウィルス『キツネコックス』に感染し、個人差はあれどおおよそ1日以内に肉を食らうことしか頭にない狐娘に変化してしまうのだから。


(この時代に種族差別はいけませんけど、あの二人には泣き言はやめて欲しかったですけどね)


 と、クロエはそんなことを考えながら目の前にある鏡を見る。


 そこに映るのは黒髪ロング160センチほどの身長、大きくも小さくもない程よい形のお胸。

 服装は黒を基調とした旅装束。動きやすさを重視しているため、丈の短いスカートで防具なども最低限しかついていない。


(要するに私なわけですけど……か弱い人間の女の子が泣き喚いてないのに、強そうな魔物の男性二人が先にあんな……はぁ)


 などなど。

 クロエがそんなことを考えていると。


「もう狩人なんてやめだ! 狐娘を倒して金を稼ぐなんて、こんなクソみたいな職業についたのが間違いだったんだ!」


 頭を抱えてうずくまるゴブリン。

 さらに呼応するかのようにうずくまるオーガ。

 もう彼等の戦意は微塵も残ってないに違いな——。


 ドギャッ!


 と、クロエの思考を割くように吹き飛ぶ鉄扉。

 すると部屋の外側に立っていたのは——。


「こやーん!」


 狐耳、狐尻尾、金髪ロング貧乳低身長。

 そして特徴的な巫女服。

 狐娘だ。


 全く同じ顔。

 全く同じ体型の狐娘が三匹。


「うずくまってるお二人さん! 生きたいなら戦ってください! 私と同じ狩人なら知っているはずです! 戦わない者に待っているのは——」


 ダッ!


 と、クロエの言葉が終わる前に突っ込んでくるのは狐娘のうちの一体。

 残り二体はそれぞれゴブリンとオーガの元に向かっているが。


(援護はできない! まずこいつを倒しませんと!)


 考えたのちクロエは腰の刀に手をやり、突っ込んでくる狐娘に対しカウンター狙いで抜刀。

 だがしかし。


 バッ!


 目の前で消える狐娘。

 早い。


(いったいどこに……っ!?)


 視界の端に落ちてくる埃。

 上——視線を向けると、そこにいたのは四足で天井に張り付いてる狐娘。

 

 ビキビキヒギッ!!


 と、音を立てて膨らむ狐娘の両足。

 あそこから突っ込んでくる気だ。


(避ける……いや、間に合わない! 防御も刀ごと折られるのがいいところ……だったら!)


 ドンッ!


 爆散する天井。

 再び消える狐娘。

 見えなくてもわかる、やつは一直線に突っ込んできているのだ。

 迫って来る絶対的な死の気配……が。


 ビタッ!


 と、その絶対的な死はクロエの目の前で止まる。

 理由は簡単。


 クロエの魔法『重力操作』だ。

 現在クロエはそれを用い、狐娘の進行方向と反対方向に超重力がかかるようにしているのだ。


(私の全開の魔力ですよ!? 本来なら遥か彼方に吹っ飛ぶくらいの出力なんですけど、本当にこいつら!)


 化け物という言葉では済まないレベルだ。

 この状況が続けば死ぬ。

 クロエはガードしているだけで、『重力操作』魔法に凄まじい量の魔力が持っていかれているのだ。

 なんならすでに目眩がしつつある……故に。


「これはどうですか?」


 クロエは空いてる手で、腰のホルスターからリボルバー型の魔銃まがんを手に取る。

 銃弾は全部で六発——それらそれぞれには事前にクロエが込めた魔力が宿っている。

 それにさらに魔力を込めて。


 ダダダンッ!


 三発。

 狐娘の頭部に一発、腹部に二発打ち込む。

 同時、そこを中心に生じる三つの重力塊。

 人間や並の魔物なら絶命必至だが。


「ごやぁっ」


 生きている。

 身体はひしゃげ、血まみれだがまだ普通に動いている。

 しかもあろうことか奴は。


「ごやややややややっ!」


 クロエの『重力操作』が緩んだのを狡賢くも感知したに違いない。

 やつは地面を蹴って血を流しながら突っ込んできたのだ。


「っ!」


 クロエは咄嗟に魔銃を持った方の手を前に出す。

 すると。


 ゴキッ!

 ゴキゴキゴギャ!


 そこに奔る凄まじい痛み。

 狐娘に腕を噛み砕かれたのだ。


「こややややややっ! こやーん!」


 と、噛みつきながら狐尻尾を振り撒くる狐娘。

 なるほど、勝ちを確信しているに違いない。


「勝ち負けを認識する脳みそはあるんですね……たしかに『キツネコックス』ウィルスは噛まれれば感染し、逃れる手段はない……あなたの勝ちです」


 ただし。


「それは私以外の場合です。私にはあなた達の最強の武器は通用しない」


 固有スキル『キツネコックス無効化』。

 クロエにはあるのだ、生まれつきキツネコックスに対する免疫が。


「ようやく隙を晒しましたね、化け物……さっきのお返しです!!」


 クロエは噛まれていない手——刀を持った未だ自由な手を動かし。


 斬ッ!

 今度こそ間違いなく怪物にトドメをさすのだった。





——————————————————

あとがき


初めましての方、商業で知ってくれた方

どうも、作者のアカバコウヨウです。


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