水の空の物語 番外編 ある日の草花

近江結衣

第1話

 花が舞う春ヶ原で、草花は泉のほとりにすわっていた。


 いいこと考えちゃった。

 にこにこと優月ににじり寄った。


 彼は木蓮の根本で鹿の風鈴の毛づくろいをしていた。


「ねえ、優月」


 彼は笑顔で振りかえる。いつもの優しい優月だ。


「草花ね、竹とんぼとけん玉にはお母さんが必要だと思うの」


「お母さん?」

「にわとりのビー玉に聞いたの。ひよこはいつもお母さんと一緒にいたいんだって。ぴよぴよ鳴くのは寂しいからなの」


「草花は優しいな」


「だからね……」


 草花は両腕を広げた。


「第一回、お母さんになろう大会を開催しますーっ」


 そのまま、拍手をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る