第37話 不正選挙
「さぁ、私たちの船が動き出す。誰一人止められない。もはや誰一人として止める事は不可能だ。
私たちの船が出発する。荒波を乗り切ろう」
総理、準備はよろしいでしょうか。
「もう覚悟は決まっている」
はい、総理。
「分かっている。私の出番がまたきたか」
はい、総理。よろしくお願いいたします。
「ついにまたやってきた。またやってきてしまった。この瞬間が」
はい、総理。ついにやってまいりました。
「今回も嵐があるようだな」
はい、総理。逆風が激しいかと思われますが。根回しはいつもの如く私にお任せください。今回の準備は私がさせていただきます。
「まさか。あれを行うのか」
はい、そのまさかです。総理。
「ついにそこまで行う事になってしまうとは。ついにこの日が来てしまうとは。世も末だ」
申し訳ございません、総理。心苦しいとは思われますが、もはやこの方法しか手段がございません。
「本当にこの方法しかないのだな」
もはや打つ手はございません、総理。よろしいでしょうか。
「本当に他の方法はないのか」
他に手はございません、総理。ご決断を。
「別の方法を探そう」
しかし、総理。このまま選挙に突入したとしても与党も野党もバラバラです。もう皆バラバラなのです。
今のままでは、どの党も過半数など取れません。
「しかし、別の方法もあるだろう」
いえ、総理。もう他の道はないのです。
このまま通常の選挙に突入した場合Aがバラバラになります。
「Aがついにバラバラになってしまうのか。そんなまさか」
いえ、総理。まさかではございません。
「それだけは避けたい」
すでにかなりのバラバラ状態です、総理。このままでは誰もまとめる事ができません。改めてご決断ください、総理。
「そうか。Aには申し訳ない事を行ってしまう」
はい、総理。申し訳ございません。
「本当に他の方法はないのだな」
はい、総理。
今の私の力では他にどうする事もできないのです。私はこの日この時の決断が正しかったと信じて実行したく思います。
「実行か。この決断がのちのAのためになるとは。今の時点での判断は難しい。判断は難しいと私は思う」
しかし、総理。行う意義はあると思います。どうかご決断ください。これもAのためでございます。
「不正選挙か」
はい、総理。不正選挙です。
「そんな事が本当に可能なのか。私には可能だとはとても思えない。そんな事は不可能だ。
私には不可能としか思えない」
不可能を可能にさせるのが私の仕事です。総理。
「あり得ない。やはりあり得ない。不正選挙など行ってよいものではない。そんな事を簡単に決断などできるはずがない」
はい、総理。しかし、残す手段はそれしかないのです。どうかご決断ください。こちらですべての準備をさせていただきますので。
その点はご安心ください。
「そこまで行わなくてはならない日が来てしまうとは。なんたる事だ。なんたる事なのだ。
私は反対させていただく」
A国民には大変申し訳ない事を行ってしまいます。しかし、これが最善の策なのです、総理。もう他に方法はございません。もう他に方法はないのです、総理。
「私が決断しなくても君たちで行ってしまいそうな勢いだ」
いえ、総理。総理に内密でそんな事は行いません。総理にご決断いただきたいのです。
「私にすべての責任を負えとでも」
いえ、総理。実行する私たちに責任がございます。手を下すのは私たちです。
「しかし、知ってしまった私にも責任がある。もはや後戻りはできないのかもしれない」
はい、総理。もう後にも先にも戻れません。もはや行うしか手はないのです。
「そうか。これもAのためになると信じて実行しよう。
まさか。こんな日が来てしまうとは」
総理。心苦しいとは思われますが。実行して構いませんか。
「もはやそれしか方法がないのだろう」
はい、総理。
「では実行するしかない」
総理、かしこまりました。実行させていただきます。
「いた仕方がない」
はい、総理。申し訳なく思います。
「で、どのような方法で不正を行うのだ」
はい、総理。その点をいくつか確認したく思います。
まずメディアの操作を行いたいと思います。開票と同時に当確を発表いたします。
「そんな。テレビを見ればすぐに分かってしまうではないか」
はい、総理。見せつつ隠すのです。Aがその部分をおかしいと思わない限り気づく事はございません。気づかれる事はまずないと言えます。
「そんな事が可能なのか」
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