第14話 平成元年

「輸血性ショックか」

 輸血性ショックでございます、総理。


 輸血性ショックの可能性がかなりの確率で高いと考えられます。


「やはりそうか。なんというお労しい最後か。こんな事態が、こんな事態が許されるのか。輸血性ショックだとは」


 はい、総理。まさか、こんな事態になるとは思い及びもしませんでした。まさかの緊急輸血があだとなって返ってきました。まさかの輸血性ショック。可能性は否定できません。


「私も同じくだ。しかし、輸血性ショックだとしたら、もう手遅れだ。

 延命など。延命など、ただの気休めではないか。陛下の最後がただ延命させるだけにあるのか」


 総理、お気持ちは分かります。お気持ちは痛いほど分かります。私も同じです。陛下の最後がただ延命されるだけのためにある。そのお気持ちはよく分かりますが、総理。総理のお考え通り年末前では、年末前では混乱が激しすぎるのです。

 このまま延命を続けるしか他に方法がございません、総理。


「陛下の最後が輸血性ショックとは。なんたる不運。この可能性をマスコミに知られるわけにはいかない。

 陛下の最後が、まさかの失態。輸血性ショックとは。

 医療ミスだと決して知られるわけにはいかない。なんとしてでも、この事実だけは隠し通さねば。例え事実をもみ消すことになったとしても」


 総理、お言葉ですが、マスコミにはそのような知識がないと思われます。総理の考えている以上にZに染まっているのです。

 そのZに染まったマスコミが、例え輸血性ショックの可能性があるという事実に気がついたとしても外に漏らすとは思えません。

 血液の闇は深いのです。輸血の危険性が分かってしまったら今後の輸血での大儲けができなくなるということになります。

 Zがそのような情報を外に漏らすとは、とてもじゃないですが思えません。マスコミにも自動的に圧力がかかり事実は闇の中です。

 私はマスコミですら、そこまで知っているとは思えません。今のAにそこまでの知識など持ち合わせていないのではないでしょうか。圧力などかけずとも、誰も気づかないのです。

 これが現実かと思われます。

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