内閣

佐倉明人

第1話 プロローグ

 総理、やはり貴方様は誰が総理になろうとも世界の1%の闇に操られる。

 操られながらも総理大臣を演じなければならない。お伺いをたてながら政治を動かしてゆく。裏には常に闇がいる。総理大臣でありながらも、闇世界の言いなりにならねばならず、歯向かうことなどもってのほか。歯向かうことなど許されない。


 総理とは、そういう運命に、そういう宿命にあるのだと私は思います。

 世界の1%の闇。

 総理、貴方様はそういう世界に足を踏み入れてしまったのです。禁断の扉を開いてしまいました。

 そして、これからも禁断の扉を開き続けながら総理は総理を、私は秘書を演じてゆくのです。


 世界はなんと残酷なものなのでしょう。

 国のトップである総理でも歯向かうことはもってのほかであり、逆にご機嫌とりをしなければならないというのが現状でございます。


 こんなことを次期総理に打ち明けるに早すぎる。早すぎるということは重々承知の上です。

 しかし、私はお伝えするという選択をしてしまいました。


 総理、貴方様が総理になられる前に、こんな話は本来ならばすべきではございません。私はそれを重々承知いたしております。


 重々承知いたしてはいるのですが、私は知ってしまったことを一人で抱えきれなくなってしまいました。

 私一人で抱え込むには荷が重すぎます。


 貴方様に打ち明けるべきかどうか、私も迷いました。

 迷いましたが、お伝えすべきだと思ったのです。総理が総理になる前にお伝えすべきことだと。

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