第38話 生配信

「おーっす、お前らぁ…………。極東ミネネだぞー……」


 コメント欄:

 『おーっす!』

 『おーっす!』

 『テンションひっくwwww』

 『おーっす!』

 『可愛いー!』

 『マジで本人だったんか……』

 『リアル姉御すげーw』

 『ガチで顔出し配信するんか……』

 『ちゃんとしたスタジオでやってるんやな』

 ………………………………


 今日の配信室には複数のカメラが置かれている。

 様々なアングルから私を映すためらしい。


 無駄な事に金を掛けやがって! 死ね!

 

 なんで私は顔出し配信なんてしているんだろうか。

 もうこれVTuberの仕事じゃないだろ。

 

「はぁあ゛あ゛あ゛……チッ……」


 クソみたいな状況に溜息が止まらない。


 コメント欄:

 『舌打ち……?』

 『こわっ』

 『ひぇ』

 『投げキッス?』

 『ご褒美』

 『これは間違いなく極東ミネネだわ』

 ………………………………


「なぁ、お前らどう思う? 何でVTuberが顔出ししてんだよ」


 コメント欄:

 『こっちのセリフですが?』

 『急に何言ってんだ姉御』

 『可愛い』

 『可愛いからオッケー』

 『もうお前はVTuberじゃない』

 『リアルの姿も極東ミネネでいくの?』

 『どうしてこうなった?』

 ………………………………


「『どうしてこうなった?』だぁ? ウチのスタッフがエマの名前を売った落とし前を付けろとか言い出しやがったんだよ! ……最終的に、私が断らなかったからこうなってるんだけど」


 ってか、私が断れるわけない。

 こっちはライフラインを全て奴らに握られている。

 ふざけやがって……。


 コメント欄:

 『ドブラックで草』

 『極ライブ……どうなってんだ…………w』

 『てか姉御って未成年?』

 『全てがおかしくて笑う』

 『草』

 『断れよwwww』

 『落とし前ってなんだよwww』

 ………………………………


 今は私の顔がネットに公開された翌々日。

 あの写真の一件で極東ミネネはまたしてもネットニュースになった。

 これ幸いと矢崎から生身で配信するよう命令が下り、今に至る。


「なぁ、お前らどんだけ暇なの? そんなに私の顔が見たいか? 15万人も雁首揃えやがってよぉ」


 コメント欄:

 『見たい』

 『見たいぞ』

 『姉御の顔が見たくて来ました』

 『ニートだからめっちゃ暇だぞ』

 『視聴者に喧嘩売るなwww』

 『逆ギレがすぎる』

 『暇ですみません……』

 ………………………………


 私の不機嫌を隠さない配信状況を鑑みてか、田村からテロップが出た。


『もっと可愛くしろ』

 

「うるせぇぞ田村! テメェは黙ってろ!」


 田村なら名前を出しても良いだろ。

 私はお前が勝手に写真を撮ったこと、一生恨むからな?

 矢崎の命令があったとはいえ実行犯はテメェだ!


 コメント欄:

 『まーた誰かの名前出してらぁwww』

 『だから怖いんよ笑』

 『スタッフさんかな?』

 『今日の配信荒れてるなぁ』

 『てか、今日って何するの?』

 『配信来た瞬間にブチギレてて草』

 ………………………………


「ふぅ…………。いかんな、始まったもんは仕方ない。すまん皆、切り替えていくわ」


 田村に怒鳴り散らしたらちょっとスッキリできた。

 今度からストレスが溜まったら田村で発散しよう。

 素晴らしい妙案だ。


 コメント欄:

 『切り替え早すぎw』

 『情緒エグイなこの人』

 『今来たけどどうなってんだこれ?』

 『今日って何するの?』

 『ここって極東ミネネのチャンネルだよな……この子誰?』

 ………………………………

 

「えーっ、今日の企画だけど、今から私はをする。題して、『極東ミネネアイドル化計画』……ちなみにこれ、週一の定期企画らしいからよろしくな」


 コメント欄:

 『どうしてそうなった?』

 『もう訳が分からないんだよ……』

 『姉御、がんばれ……』

 『良く分からんが頑張れ』

 ………………………………


 こうして、私の顔出し配信は始まってしまった。


 

 ――――状況はまだまだ二転三転する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る