その配信に命を懸けろ~【悲報】TS転生したワイ、借金のカタに売られた極道の元で美少女VTuberをすることになってしまう~
真嶋青
序
とある日の配信
私にとって、もはや日課となった開幕の挨拶。
「おーっす。お前ら元気か。
目の前にある画面の向こう側には、美少女が一人立っている。
任侠ドラマの若女将が着ていそうな派手な振袖姿。
サイドテールにされた真っ赤な髪。
たまに見える八重歯がチャームポイント。
彼女の名前は極道ミネネ。私の、VTuberとしての姿だ。
コメント欄:
『おーっす!』
『おーっす!』
『ミネネさんおーっす!』
『姉御!ご苦労様です!』
『待ってたぞ極東!』
『今日も可愛い』
………………
固定のファンが増えると、配信の流れはある程度コメントに身を任せるだけで済む。本当に楽になったものだ。
初めの頃は人が少なかったし、来てくれた数少ない視聴者たちをどうやって縫い留めるかで苦心した。
文字通り、死ぬほど苦労したのだ。
「お前らが応援してくれたおかげで、なんと登録者100万人が見えてきたぞ! いやー、初配信が懐かしい!」
コメント欄:
『言うてまだそんな経ってないやろ』
『爆速で登録者増やしたな』
『100時間連続配信とかいう蛮行が懐かしい』
『また100時間やってくれ』
『伝説の100時間をリアルタイムで見れた古参うらやま』
『今度は100万まで耐久待ったなし』
『伝家の宝刀100時間配信』
………………
「100万人まで耐久は流石に勘弁だわ。殺す気かよ」
100時間配信……トラウマを刺激されるコメントだ。
「あんな地獄はもうコリゴリだわ。ホントに人間やめる寸前だった」
コメント欄:
『初配信でとっくにやめてるだろ』
『ミネネは人じゃない』
『姉御は元からまともじゃない』
『まともな奴は100時間不眠で配信しない』
………………
好き勝手言ってやがる。こっちだってやりたくてやってない。
ただ、たしかに当時の私はまともな状態ではなかっただろう。
なにせ、
いや違うか、今だって私は配信の度に命を秤に乗せているようなものだ。
私が居る配信部屋を隔てるガラス窓の向こうには、明らかにアウトローな見た目のオジサンたちが待機している。
私が彼らにチラリと視線を送ると、その中の一人は少しだけ眉を潜めてハンドサインを送ってきた。問題が発生したか私に確認しているのだろう。
それを見た私は首を振って問題ないことを伝えると、配信に意識を戻す。
「ま、今日はお前らにちょっとした報告があってな。手短にそれだけ発表して今日の配信は終わらせる予定なんだわ」
コメント欄:
『えー』
『まさか……』
『今日短いのか』
『なんだ……?』
『100時間配信するの?』
『悪い報告じゃないなら何でもいい』
『すまん皆。ミネネは俺と結婚しました』
………………
「ある程度予想されてるだろうし、早速発表行くぞ!」
――ジャカジャカジャカジャカジャカ……。
配信内では私の発表に合わせてドラムロールのSE音が流れる。
私はSEの終わりに合わせて発表をする準備を淡々と進めた。
――ジャン!
「なんと! 極東ミネネが3Dになるぞー!」
コメント欄:
『やっとか!』
『おめでとう』
『やっぱり!』
『おー!』
『ついに……』
………………
コメントが流れる速度は急速に上がっていく。
かねてより話は出ていたから、ある程度予想はされていたみたいだけど、喜んでもらえたようで何よりだ。
問題はここから。
そう、問題は、ここからだ!
「えー、3D配信で何をするのかは、実は私もまだスタッフさんから聞いていません! 何をするんですかねぇ。できるだけ穏便であってくれぇ!」
マジで頼む! 命が懸かってない奴で!
コメント欄:
『絶対に鬼畜』
『極ライブのスタッフは鬼畜』
『過去一ヤバいの来そう』
『南無阿弥陀仏』
………………
「誰だよ念仏唱えてんの! まだ生きてるっつーの!」
全然洒落になっていないコメントに怒り散らかしていると、スタッフさんからテロップが出た。
その内容を見て、私は天を仰ぐ。
「……すぅ~…………。えー、今スタッフさんから報告がありました。なんと私、初3D配信で、24時間ソロライブするそうです……馬鹿なのか?」
コメント欄:
『100時間の4分の1以下じゃん。ざっこ』
『ライブきちゃー!』
『普通に考えたらヤバイ』
『体力大丈夫かよ』
『姉御なら余裕』
『やっぱ人じゃない』
………………
「いやいや、コメント欄にも馬鹿がいるなぁおい! 24時間配信しながら動き回るとか普通に死ぬわ! 『ざっこ』じゃないんだよ!」
ノリと勢いでコメントにツッコミを入れる。
マジで辛すぎる。何考えてんだよアイツら!
そんなことを思っていると、憎きスタッフから追加のテロップを見せられる。
『24時間でスパチャ1000万来なかったら、配信の最後に小指詰めろ』
ホント、なんでこんな仕事してんだろ、私。
話は時を遡る――――――。
───────────────────
第1話読了、誠にありがとうございます!
今後ともお付き合いいただけますと幸いです。
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