王国を裏から支配する悪役貴族の末っ子に転生しました~「あいつは兄弟の中で最弱」の中ボスだけどゲーム知識で闇魔法を極めて最強を目指す。ところで姫、お前は主人公のはずだがなぜこっちを見る?~

ラチム

第一章

第1話 噛ませ中ボスに転生した

 アクションRPGプリンセスソード。

 セイルランド王国の姫が王家の陰に潜む巨悪に気づいて立ち向かう正統派の長編RPGだ。

 巨悪とは王国一の柱と名高い名門のバルフォント家のこと。


 その実態は王家の手に負えないもの、表立って実行できない作戦を遂行する闇の一族だ。

 バルフォント家なくして王家は存続できず、この一族は今や実質的な王国の支配者となっている。


 そんなバルフォント家の末っ子であるアルフィス・バルフォントは極めて傲慢だった。

 弱者を人とも扱わない性格で、彼によって人生のすべてを奪われた人間は数知れない。


 欲しければ奪う、犯す、殺す。

 そこに葛藤なんて存在しない。

 感情の赴くままに動く彼を人は魔王と呼んだ。


 そんなアルフィスだけど物語中盤に差し掛かる頃に主人公によって倒されてしまう。

 アルフィス戦はRPGの中でもっとも難易度が高いボス戦との声が多い。

 そんなアルフィスを倒したところで直後に出てくる兄弟の一人には「あいつはバルフォント家の中で最弱」と言われてしまう。


 で、オレはそのアルフィスに転生してしまった。

 最初こそ何がなんだかわからなかったけど、赤ん坊のオレを嬉しそうに抱き上げたのはバルフォント家の当主レオルグだ。

 なぜか意識があるし、そこにいるのがレオルグだとわかってしまう。


 オレにアルフィスと名付けたのはレオルグだ。

 大喜びするレオルグを見ているといい父親に見えるけど、こいつはラスボスなんだよな。

 最終的にバルフォント家の敵として立ちはだかった主人公に倒される悲しき存在。


 冷静に考えなくてもオレはこのままアルフィスとして育てられていく。

 アルフィスはクズキャラとしての呼び声が多い。

 命乞いをする村人同士を殺し合わせて勝ったほうを助けるのかと思ったら、勝ったほうも殺す。


――助けていただけるのではなかったのですか!

――誰がこのまま生かし続けるといった。同じ村の人間を殺すクズめが。


 なんて言ってさ。クソだね。


 あまりに突き抜けすぎていて悪役として非常に人気が高かった。

 オレも正直に言って嫌いじゃない。

 なぜかってアルフィスは明確に悪役として設定されたキャラだからだ。

 むしろ善人キャラとして登場したはずなのにナチュラルにクズ行為やクズ発言をする奴より好感が持てる。


 そんなアルフィスを生んだバルフォント家は王国の支配者一族といっていい。

 王国の手に負えない魔物がいれば討伐して、隣国との戦争になれば駆け付ける。

 王国にとって都合が悪い人間や組織があれば根絶やしにする。


 当然それらがバルフォント家の功績だと明るみになることはない。

 必ず何らかの事件として隠蔽されて終わりだ。

 そんな絶大な権力と力をもったバルフォント家だけど最後は主人公によってすべてを暴かれて滅ぼされる。


 つまりこのままだとオレは主人公に倒されて死ぬ運命にある。

 ハッキリ言って絶望したよ。


 だけどよく考えればこんな経験は誰でもできるもんじゃない。

 オレは前世で何らかの理由で死んだけど、普通ならそれで終わりだ。

 一回限りの人生なのに二度も与えられるなんて幸運と考えるべきだろう。


 それに今のオレには前世の知識がある。

 プリンセスソードはかわいらしい絵柄に反して難易度が高い。

 オレはそんなプリンセスソードの縛りプレイ動画をあげて再生数は数十万を超えた。


 更にプリンセスソードの攻略Wikiの大半を作り、内容は企業の攻略サイトより詳しいと評判だ。

 育成のコツや序盤の動きなんかもバッチリ、と言いたいことろだけど今のオレはアルフィス・バルフォント。

 主人公とはキャラ性能がまるで違う。

 主人公は主人公だけあって専用の装備や技があるし、全キャラクターの中でも最高に安定している。

 いわゆる主人公補正もあって、戦闘以外でも特殊な力を発揮していた。


 で、それがどうした?

 実はこのアルフィス、物語中盤でこそ倒されてしまうけど潜在スペックは他の兄弟を上回ると言われている。

 物語後半まで生きていたらラスボスになっていたんじゃないかという意見にオレも賛同した。

 そう言われるほどプレイヤーにインパクトを与えたボス戦でもあり、キャラでもある。


 アルフィスに生まれ変わってよかった。

 このチートスペックなキャラとオレのゲーム知識をもってすれば死の運命を回避できるはずだ。

 普通のゲームで考えてもボスを操作できるとなればワクワクする。


「リーザニア、その子を抱かせてほしい」

「えぇ。この子から力強い波動を感じますわ」


 父親のレオルグは母親であるリーザニアからオレを渡される。

 このいかつい顔の父親がラスボスの時にはとんでもないことになるんだよなぁ。

 『ヒャッヒャッヒャッ! これが世界王の力だぁ!』とか言い出すんだぜ?

 ちゃんとオレを丁重に扱えよ、世界王。


「うむ……確かに凄まじい波動を感じる」

「フフフ、将来が楽しみね」


 バルフォント家としてはそうでなきゃ困るだろう。

 バルフォント家が他の貴族を寄せ付けないのは卓越した戦闘能力にある。

 このレオルグは特に歴代最強と言われていて、単独で伝説級の魔物を倒している。

 今、身につけている大刀はその魔物の牙で作られているという設定だ。


 そんなチート一族に生まれたからには上を目指さない手はないだろう。

 普通の人生を送りたければ普通の人間でもできる。


 ただでさえ死の未来が待っているんだ。

 強くならなければ話にならないだろう。

 最低でも主人公以上の強さを身につけないとな。


 何よりオレは敵キャラを操作できるシチュエーションが大好きなんだ。

 ましてやオレTUEEをこの身で体感できるなんて夢のようだ。


「あなた、この子ったら笑ってるわ」

「まるでこの世に生まれ落ちたことを喜んでいるかのようだな」


 その通りです、世界王。

 あんたも意味不明に強いけどオレはきっとそれ以上に強くなる。

 だからぜひとも大切に育ててほしい。


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