僕が君に出逢うまでの話。

髙橋。

第一話。マリーゴールド

マリーゴールドの花言葉:「嫉妬」「絶望」「悲しみ」

20XX年4月。人口減少が拡大し、日本の総人口は約一億人まで減少した。

日本政府は、対策として12歳から22歳までが対象のマッチングアプリ「ggrks(ググレックス)」を製作した。12歳になると政府からIDが記載された説明書が届き、所持しているスマートフォンやPCでインストールする。マイナンバーカードとの連携もでき、学校の授業の一環としてもアプリについて勉強した。街中を歩く人に尋ねると「出会いはggrksです。」という人が増えていると思う。僕自身も友達づくりに使っていた。

眞部弧斗(まとべ こと)16歳。この物語の主人公である。僕は、ただ普通に友達と遊んだり恋人と放課後にスターバックスに行ったりして家に帰れば家族に「おかえり。」そう言って貰えるのを望んでいた。なのに、僕は1番大切な家族に嫌われたのである。それは去年のことだ。当時、僕にはggrksで出会い付き合っている人がいた。その人の性別は男。単純に話していて楽だし同じ学校だったから仲が良かったからだ。

日本は既にジェンダー平等が世の中に伝わり、同性婚も認められていた為、両親も反対しないと思っていた。僕の家は、父と母、そして兄の4人家族だった。僕は元々理解者である兄には相談していて夕飯を食べていたある日、両親にも打ち明けることにした。

「父さん、母さん、僕今付き合っている人がいるんだ。」

「あらそうなの?いいじゃない!」

「そうなのか。どんな子なんだ?」

父さんも母さんも最初は嬉しそうに賛成してくれた。そして僕は告げた。

「実は、男の人なんだ。同じ学校の同級生なんだよ。」

僕は微笑みながら言った。でも父と母の顔からは笑顔は消え冷めきったような目で僕を見ていた。たった一言を言って。

「そんな....お母さんは反対よ。」

「弧斗、早く別れなさい。」

なんで。あんなに賛成してくれたのに。僕は一気に絶望した。受け止めてくれる。今思えば、両親に対してそう期待していた。

「なんで反対するの....?」

「そんなの周りに知られたらお前の立場がなるなるぞ。」

「弧斗。好きな人といたい気持ちはわかるけど、正直いって受け止められないわ。」

お母さんは、立ち上がり「体調が優れないから寝るわね。ご馳走様。」と言って寝室に向かう。僕は咄嗟に母の腕を掴もうとしたが、母に振り払われた。母は、「気持ち悪い。」と青白い顔で言った。まるでその目は僕を異物と見ているようだった。

それ以来、僕は家族との仲が悪くなった。父は、僕が話しかけてもあぁ。そうか。勝手にしろ。それしか言わないし、母はご飯を時間をずらして食べるようになった。彼氏ともそれをきっかけに別れてしまい、唯一理解者である兄とだけは話せた。僕は思い悩み、部屋にこもりがちになり精神科に通うようになった。何度も泣いてものを壊した。

僕はカミングアウト後、一人暮らしをする兄の家で住むようになった。 今も尚、両親とは話すことがない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕が君に出逢うまでの話。 髙橋。 @mu5021

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ