夏とか殺人とか

鶏殺臓物地獄

死体処理とか焼肉とか

 某市とあるアパートにて。

 「ねぇ先輩、そっちの足切ってくれない」

 「嫌ですよ、お前が足は切るって言ったから手伝ってんですから」

 「ケチだなぁ先輩は」

 血抜きをした際バケツに入れた血も煮え立ちそうな程の猛暑の中、蒸した風呂場で殺人鬼二人は『処理』をしていた。

 「まあ、内臓は俺がやるけど」

 「どうせオナホール代わりにもするんでしょう、趣味が悪い」

 「俺そんな風に思われてんの!?事実だけど」

 「だと思いましたよ、死体愛好者が」

 「それは先輩もだろ」

 死体は大抵、加菜子さながら四肢を削いで臓物を取り除いてから、俺が臓物を貰って、先輩が四肢を受け取るといった感じだった。

 先輩は手足に執着しているけど俺のほうが切断は上手いし、実際それを買って先輩は俺にそれをさせているようだ。

 どっちかって言うと、俺等は人体のパーツが欲しくて人殺しをしているのであって、殺すのはそんなに、おまけかなってくらい。

 だけど、事切れる瞬間の顔にその子のこれまでの人生の全てが詰まっているな、とは思うし、見てて気分の悪いものでは無かった。

 それが死体でアレコレする時のエッセンスにもなるし。

 って事を思い出して『処理』のモチベを上げていく。

 「どーする、首は」

 「首姦、というのも悪くは」

 「趣味わっる」

 「……」

 無言で先輩は頭部を洗面器に浮かべた。

 「逆犬神家じゃん」

 ブフォッ、と先輩は吹き出す。ツボ浅いな。

 「まぁ、胴体はさっさと肉削いで生ゴミにでも出そうぜ」

 「そうですね」

 「つか今日講義サボっちゃったな、俺等。単位大丈夫?」

 「全く大丈夫ではないです」

 「はは、次留年したら俺と同級生だよ」

 先輩は本当に嫌そうな顔をしながら胴体の肉を骨から削いでいる。

 肉は小分けにしてジップロックに入れて冷凍、ってことでその作業を俺はする。

 先輩が削いだ肉を詰めて、詰めて、冷凍庫へ。

 キッチンから帰ってきた時、先輩はかなり顔色が悪かった。

 「脱水っぽいです」

 「マジ?俺やっとくから水飲んできていいよ」

 ここで飲んだら感染症か何かにでもなりそうなので、とりあえず手を洗わせてからキッチンへヨロヨロ歩く先輩を眺めた。

 あっついなー、しかし。

 ブヨブヨの腸やら肝臓やらが腐らないように早めに作業しないと。

 とりあえず、先輩のために手足を綺麗に切断することにする。

 肉断ち包丁で、繊細に、切り口を目立たないように切っていく。

 それを掛ける4回。

 切り終わったらまとめて、床においておいた。

 「おお、中々良いではありませんか」

 戻ってきた先輩は愛おしそうに手足を持って脛にキスをする。

 「本当に理解できないなぁ、手足に愛着を持つの」

 「人間が唯一移動するための部位なんですから、各地に赴いた思い出も何もかも足に詰まっているんですよ」

 「へー、腕は」

 「愛する人を抱きしめる部位ですし」

 「ロマンチストなんだ」

 やっぱり理解できないなぁ、と思いつつ、全ての作業を終えた。

 各々の部屋で好きな部位でアレコレしてから、俺等はリビングへ集った。

 今日は焼き肉にする事にした。夏だし。

 ジュワー、と焼ける肉を眺めつつ、乾杯してからビールを煽る。

 「いやー、同じ大学に人殺しが居るなんて思いもしなかったなぁ」

 「まぁあれだけの人数がいれば一人くらい居ますよ」

 「そんなもん?」

 「そんなもんです」

 先輩は肉を咀嚼して、ビールで流し込む。

 「でも会えて良かったな」

 「そうですね」

 肉は当然、ね。冷凍はしてないけど。

 子どもの肉って柔らかいんだな。

 いや、ちょっと柔らかすぎない?

 「……腐ってませんか、これ」

 「あ、やっぱり?」

 次の日、二人揃って体調を崩したのは言うまでもなかった。

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