麻布十番でイケメンイラストレーター様への愛を書き殴る、トリあえず
Coppélia
第1話、大声で叫びたい【俺は、あなたのこと(イラスト)が大好きだー!!】
朝の麻布十番。
まだ太陽の光が差し込む前の、退廃的な酒の匂いと、深夜から早朝に掛けてゴミ収集車が満杯のゴミ袋を潰した匂いが混ざり合った網代公園の遊具の上。
最大4人なバネ遊具をひとりでポッピングさせながら、携帯電話の画面を見ては身悶えている。
画面の中で、これ見よがしな「イケメン」がこっちを見つめている。少し弧を描く唇は、今にも、俺を呼んでくれそう。
彼の手は、俺に向かって差し出されているはずなのに、何故か指で突いても画面が邪魔して触れられない。
勝手にスクリーンが捲られるが、こちらの絵には四コマ漫画。ぉあ、キャラデザがいい!こんな人が上司だったら!仕事の効率はガタ落ちだ!見惚れていて仕事にならない。
公園に光が差し込んで来る頃には、もう人が、公園の周囲を「動く歩道」の上を乗っているかのように、規則正しく歩いていく。
ひとりだからホッピングしても、沈むだけで戻らない遊具に飽きて、ブランコに座る。朝の光がもろに目に入るが、朝から先輩は「イケメン」を投稿!キラキラオーラの眩しさに第3の目が眩む。
画面を隅から隅まで見ると、やはり、この背中から腰に掛けての筋肉のつき方がいい。羽が生えそうな肩甲骨の出っ張りから無理のない適度な太さの腰に落ちる形がたまらない。
画面の外のお兄さん、おじさんたちの情け無いこと。体型に合わせた仕立てのよいスーツならまだしも、吊るしのスーツにヨレヨレのシャツ、弛んだお腹。
わかる。俺もそうだから。加齢にはそう簡単に勝てない。だから、だからこそ!二次元は、二次元だけは死守したい!心にいつも「イケメン」を!理想とは言わないが、そうありたいと思わなければ、落ちるだけ。
そうだろう?同志諸君!!
ブランコの上でスマホ弄りながら、心の声をこれから仕事に向かう同志達にかけているが、なかなか「イケメン」にお会いできない。現実はやはり厳しい。
お店が開き始めたのか、コーヒーの香りがしてきた。先輩のイラストにもコーヒーショップ店員の絵があった。あれも可愛かった。赤いエプロンがまたいい!
思わず、膝を打ったら、鳩が飛んで行った。
眩しい。そろそろ帰ろうと、地下鉄へのマップを開いた。
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