殺したかったんじゃない。殺されたんだ。

しゅう

第1話 始まり

ずっと不思議に思っていた。自我とは何か。そして僕とは何か。


物心ついた頃には理解していた。僕の家庭は金持ちだ。一般的な家庭ではない。だが両親は違うという。

幼稚園に通っていた頃から美味しいご飯をたくさん食べて育ってきたから当然のように太っていた。金持ちの家の子はデブな容姿で描写されることがしばしばある。家に金があると高栄養でなおかつとても美味しい食事が何不自由なく食べられるのだ。当然の結果ではある。

ただ幼いとはなんとも残酷で、人間であり、同じ空間にいて、ただ違うのは体の大きさだけであっても理性の利かない彼らは本能のまま排除しようとする。

イレギュラーは彼らにとってただの癌なのだ。

程なくしてトゥレット症候群を発症した僕は1年の検査期間を経て正式に診断が下った。


トゥレット症候群。最近有名になってきたこの病気だが当時はまだまだ情報が少なく、知らない人も数多くいた。ここではあまり大きく触れないが現在の医療では改善することはあっても完治することはない。だがしかし難病指定はされていない。ただわかっているのは「ドーパミン」が過剰に分泌されていることが原因であることだけ。そしてそのさらに根本は謎に包まれたままなのだ。

つまるところトゥレット症候群は脳の病気だ。


幼稚園児の頃に診断されたこの病気をきっかけに僕の人生はただただ落ちぶれていった。

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