図書館主の弟子と金の騎士

高樹ヒナコ

第1話


 目の前には大きな獣。黒い大きなそれをおとうさんは「まもの」と呼んでいることは知っていた。熊とは違う、と絵で教えてくれたそれは、目の前にくると何が熊とは違うのか、よくわかった。こわい、と思った。「ころされる」と思った。おとうさんと叫んだけれど、向こうで倒れていることはわかっている。にげろと言われたけれど、どこへ行けばいいかもわからない。おとうさんと二人で暮らしているこの森にはほとんど人がこない。おとうさん、おとうさんを、だれか、たすけて。小さなこえは「まもの」にしか届かない。

 その時だった。「まもの」しか見えなかったシキアの目の前に、知らない背中が現れた。何があったのかわからないままに「まもの」はいなくなって、振り返ってくれたそのひとはきらきら光って見えた。

 金の髪に青い目のその人が十六歳にして「騎士」になったのだときいたのは同じく助けられた父親からだった。あれからその人はシキアの特別なひとになった。 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る