第11話
「今日の授業はどうでした? ファビア」
ディナー時に、リサおばあ様が私に話しかけて来た。
「僕も知りたい!」
エメリック様も興味津々。
それについて、侯爵夫人が注意しないところをみると、話してもよさそうね。
「今日は、魔法を初めて使いました」
「まあ、それでどうだったの?」
「はい。詠唱を暗記しなくてはいけなくて、一回目は成功したのですが、二回目に詠唱を間違えてしまって発動しませんでしたわ」
「それって、色んな魔法の詠唱を全て覚えないといけないの?」
エメリック様が驚いた様子で聞いた。
そうなるとは思うけど、本来自分が使える属性のを覚えるだけだからね。言われて気が付いたけど、私は全て使えるから全て覚えるとなると、膨大だわ。
「そうなると思いますけど。私は魔法を使うと言うより、マジックアイテムを作る職に就きたいと思っておりますので、魔法陣を覚えればいいかと思います」
「え? 魔法陣って何? 魔法とは違うの?」
エメリック様が聞くも、全員知りたい様子。
「魔力を込めながら円の中に図形を描きます。それが発動させる為の下準備になり、また魔力を注ぐと発動するのです。マジックアイテムは、その下準備された魔法陣が描かれているそうです」
「まあ、そうでしたの。便利ですものね。そういう風に作っていたのね」
「面白そう……」
「エリック。あなたはこの侯爵家を継ぐのですから魔法学園には行けません」
エメリック様が興味を示すと侯爵夫人が釘を刺す。
昨日よりは幾分和やかなディナーの時間となった。
明日は、学園に行ってから初めての休日。まったりしようと思うけど、詠唱の暗記を明日もサボらずしないとね。
◇
「ファビア様。ご家族がお見えです」
朝食を終え、教科書を眺めているとローレットがそう伝えに来た。彼女には、専属だけど傍にいなくていいと伝え、リサおばあ様からの承諾も得ている。
なので、学園に行っている間に掃除をお願いした。
「お父様が来たのですか?」
心配で様子を見に来たのかしら。
「いえ。ご家族です。三人でお越しになりました」
「え……」
マリーまで連れて来たらしい。よく連れて来たわね。
彼女にとって、この屋敷にいい思い出などないと思うのだけど。
私はいつも美味しくケーキなど頂ける場所だと喜んできていたけど、ココドーネ侯爵家の血を一滴も流れていないマリーは他の子供達から無視されていた。
私の隣に来ては、一緒に話しに行こうと誘われて迷惑だったなぁ。
マリーの様に再婚で親族になった子供はいる。結局その子達と遊んでいたけど、数人しかいない。
子供達が、16歳未満の時に片親になった時に再婚をするので、実はそんなにいないのだ。
それに母親だけになれば、実家に戻る。つまり廃爵になってしまうのが一般的。
なので、お父様には私が卒業するまでは、元気にいてもらわなくては。
「ファビア。来たわよ」
部屋から出ようと立ち上がったのと同時にノックの音が聞こえ、ドアが開いてマリーが入って来る。
まだ、返事を返していないでしょう。ローレットも驚いているわよ。
「わぁ。凄く広い! ねえ、これなら私と一緒に使えるのではない?」
なぜに一緒に使わなくてはいけないのかしらね。
「何を言っているのよ。家主の許可なく他人が住めるわけないでしょう」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない。ねえ、屋敷を案内してよ」
「リサおばあ様が許可したらいいわよ。でも私、よくわからないわよ」
別に屋敷の中を案内してもらってはいない。
一応、リサおばあ様とエメリック様のお部屋は知っているけど。後は、自分が行った事がある場所しか知らないわ。知る必要もないし。
「いちいち、許可が必要なの?」
「当たり前でしょう。私は、部外者なの。善意で間借りしているだけよ」
しかも多分、無償で。
「でも私がいなくて寂しくない? 寂しいなら毎回来てあげるわ」
「……結構よ」
きっと、住むのは難しいとわかったのね。継母が言えば角が立つ。だからってマリーに言わせ、私からリサおばあ様におねだりさせるつもりね。
私の言う事なら聞くだろうと。
別に私は、リサおばあ様のお気に入りではないのだけど。
ただ珍しく魔法博士になる子ってだけよ。
今まで贔屓された事などないもの。
「わぁ。凄い! なぜこれ着ないの?」
気づけばマリーは、部屋の中をあちこち見て回っていて、クローゼットを断りもなく開けていた。
ローレットは止める事無く彼女を無表情で見つめている。
もうやめてよね! 常識がないと思われているじゃない。いやマリーにはないのかもしれない。
おかしいな。私と同じ教育を受けたはずなのに。
ここ侯爵家の屋敷なのよ!
マリーは嬉しそうに、用意されていたドレスを体にあて、姿見を見てうっとりとしている。
「マリー、やめて。汚したりしたら大変よ。借り物なのだから」
「もういいじゃない。ここって孫娘いないのでしょう? だったらここを出る時に頂けるのではないの?」
「その頃には小さくなっているわよ」
マリーから取り上げしまうと、クローゼットの扉をしめた。
「何よ! お母様に言いつけてやるからね!」
私は間違ってないから、お好きにどうぞ。
そうは思ったけど、大泣きしながらはちょっと、恥ずかしいのですが……。
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