ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました
すみ 小桜
第1話
「見ない間に、大人っぽくなったな」
私の婚約者になる彼は、私の首の後ろに手を回し言った。
嬉しいけど少し照れ臭い。
本当は私、誰とも結婚する気などなかったのに、彼にほだされちゃったのよね。
私は、前世の記憶を持っていたけど、この世界では何も役に立たない。でも恵まれた事に貴族の娘として生まれた。
お陰でケーキを食べられる。でもこのままだと、将来が危うい。
結婚して嫁いだ先で、ケーキが買えなくなるかもしれない。だったら結婚せずに独身でってね。
もちろんその為の策も考えていたのだけど……。
「では、私から。彼女を幸せにします。何があってもファビアは、守ります」
そう皆に向かって宣言をすると彼は、優し気な瞳で私を見た。
今日は、婚約式。めでたく? 私達は、婚約いたしました。
◇
前世と同じストレートの黒髪にロイヤルブルーの瞳。鏡を見る度に、自分がハーフの様で不思議な気分になった。
けどこの世界では、黒髪もロイヤルブルーも一般的だ。
ファビア・ブレスチャ。子爵家の一人娘だった私に、継母とその娘の義妹ができた。
この世界の貴族は、片親だと体裁が悪いらしくお父様は私が8歳の時に再婚をした。
その時に一つ下の義妹ができたのだ。彼女は、マリーと言って、母親と同じ銀色の髪に赤い瞳で可愛らしい子。
どうせなら私も黒髪ではなく、銀色がよかったなぁ。
母親も、30過ぎとは思えない程若作りをした人だった。
大抵の令嬢は、18歳までに結婚し20歳頃までに第一子を産む。それを考えると彼女は、結婚が遅かったか子宝になかなか恵まれなかったのか。母親になった時には、25歳だったみたい。
私は産まれた時から前世の記憶があったので、変わった性格の子として育っていて、私の私生活を見た継母は大変驚いていて、マリーと一緒に淑女の勉強をさせられた。
彼女は、男爵家のご令嬢で最初の結婚した相手も男爵だったとか。
「あなたが変な行動を起こせば、マリーも同じ目で見られるのよ」
お父様がいない所で、いつもそう言うのだ。
外に出る時は、ちゃんとしているのだから部屋にいる時ぐらい、まったりしてもいいじゃないか。
そう言いたいけど、8歳の私には言えなかった。
お父様は、どうやら彼女の容姿に惚れたみたい。と言うか銀髪がいいらしい。お母様がそうだった。
そう私の黒髪は、お父様譲り。瞳は両方かな。
お父様が紫の瞳で、お母様は碧眼。
と言う訳で、彼女に言いくるめられていて、ドレスだ、宝石だと言われるまま買い与えていた。
もちろん、自身の娘マリーにもドレスを新調するのを忘れない。
一応私に「いらないわよね?」と聞いてくるから、頷いて返せば、マリーにだけドレスを買い与えていた。
その聞き方どうよ。と思うも、彼女と争うのも面倒くさい。
それについて彼女はお父様に、「ドレスを作りましょうと言ったのですが、要らないと頑ななのです」と言っていた。
元々変わった子だったので、その話をお父様は信じている。
娘に問えよ! 本当なのかって。
まあ別に今のドレスで十分なので、いらないけどさ。でも、彼女達にどんどんお金が使われていると思うと、勿体ないと思うのだけど。どうかしら? お父様。
ブレスチャ家は、領地を持たない貴族で王都の隣街に屋敷を持っていて、そこで暮らしている。
って、この世界では男爵家と子爵家は領地を持っていないのが普通だ。次男、三男が婚姻した時に頂く事ができる爵位で、もしその者達に娘しか出来なければ、嫁に行き廃爵になるのが一般的らしい。
夫人は、爵位を継げない仕組みみたいね。
なので、ブレスチャ子爵家もお父様の代でなくなる予定。
この世界ではお父様ぐらいの年齢だと子は作らない。
子連れでも男児がいる相手ならわかるけど、彼女を再婚相手に選ぶのだから、惚れこんだって事よね。
継母となった彼女は、お父様亡き後はブレスチャ子爵夫人ではなくなる。
まあ彼女がどうなろうと私は別にどうでもいいけど、そんな彼女が、意味不明の事を口走る。
「ねえあなた。心配なのよ。だからマリーと同学年にしましょう」
嫁に行けないと困るわよと継母が言い始めたのは、私が10歳になる年。
10歳から初等科の貴族の学校に通う事ができる。これは、義務ではないので通わない貴族が多いが、無料なので男爵家と子爵家の子供達は通う事が多い。
継母が言っているのは、私が11歳、マリーが10歳になった時に一緒に通わせましょうという事。そうすれば学年が一緒になる。4年制で、その後14歳から貴族学園に通うのが一般的。貴族学園は3年制で16歳で卒業して、大抵はその後に結婚する。
そうなると私は貴族学園に14歳から通えない。
なのでこの継母の案でいくと、早くても17歳の卒業後に結婚となってしまう。まあ私は、別にいいけどね。結婚する気ないし。
「ファビアはどうしたい」
珍しくお父様が私に問う。だから意気揚々にこう答えた。
「私は、魔法学園に通いたい!」
――と。
その答えには、流石に継母も驚いていた。きっと私は、いつも通り「それでいい」と答えると思っていたと思うからね。
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