学生時代の中島みゆきのパクリ作品が黒歴史

逢坂 純(おうさかあつし)

中島みゆきのパクリ作品が黒歴史

黒歴史とは、何ぞやと自分の過去を振り返ってみると、僕には失敗の連続がそれに当たるのだと思いました。僕にとっては、消し去りたいぐらいの記憶も、また誰かにとっては忘れられない思い出なのかも、と思ったりします。だとしても、この話は、黒歴史を語るという今回の趣旨からは外せない僕の記憶の中の黒歴史だと思います。僕は大学時代、映画演劇研究会という部活に入っていました。部活なので、大学から部費も出る、しっかりした部活でした。その部活では、自主制作映画もやっていたのですが、年に一度、舞台演劇の発表をしていました。僕はその年の演劇の脚本、演出を任されました。僕はその一年に一度の舞台に、中島みゆきさんがライフワークとしてやっている音楽実験劇場と呼ばれる舞台をお芝居仕立てにして、脚本を書きました。

それは中島みゆきさんが好き過ぎてやったことでした。しかし、中島みゆきさんの感性と才能が詰まった舞台を僕が真似してやってみても、到底、面白いものなど作れませんでした。その舞台の意味もよく分かっていない部外者の赤の他人がそれを真似たとしても、いい作品などできなかったのです。舞台だけでなく、何を作るにしても、そこには大勢の人の力が働きます。そこにも部員の先輩後輩、同級生の協力がありました。スタッフ、キャスト、支援者、全ての協力してくれた力のお陰でそれは成り立つのです。

結果として、舞台は失敗してしまいました。観劇してくれたお客さんのアンケートには、「学芸会を見せるな!」と何とも厳しい言葉が書かれたものもありました。僕がその時中途半端な理解で始めたその舞台は、僕にとっては後ろめたいだけの作品になってしまいました。けれども、そこにはそんな事情も知らないキャスト、スタッフの情熱があったのだろうと思います。その情熱を僕は心底裏切っていたのだなと、今でもそう思います。僕の中では消し去りたい黒歴史も、他の部員にとっては、輝かしい記憶だったのかも知れません。だから、ごめんなさい。僕一人の勝手で始めてしまったことだとしても、それを駄作だとは僕には言えません。それは中島みゆきさんにとっては、不本意で失礼なのかも知れません。でも、その舞台に関わった全ての人にとっては、それは今でも単なる記憶でなく、とてもいい思い出なのかも知れません。僕が始めなければ、何も誰も何も思うところもなかったかも知れないけれど、だけれど、僕はあの時、始めずにはいられなかった、そんな黒歴史です。

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