余命宣告〜俺が死ぬまであと一ヶ月〜
@sonryu
第1話 死神の出現
「いらっしゃーせー。」
テキトーに接客してテキトーに仕事をやる。最近輪をかけてやる気がない。
「ポイントカードはお持ちですか?」
「さっきも聞かれて出したけど。」
「あっ、すみません!」
最近こんなやり取りばかりしている。釣り銭を渡し忘れそうになったり、頼まれた作業をすぐに忘れたり。お客さんにも「あんた大丈夫?」と心配される始末。
「はぁ。疲れてんのかな。」
ぼーっとしてることが多い。リュックのチャックを閉め忘れて中身をぶちまけたこともある。さすがにバイト3つ掛け持ちしてるのは疲れるな。
家に帰っても一人。一人暮らしだから当然だ。誰と喋ることもなく淡々と毎日を過ごす。正直、何のために生きてるのかわからない。
手を洗いに洗面所へ行く。鏡の自分の顔を見たら何か得体の知れないものがうつっていた。
「うわっ!」
見間違いだと思ってもう一度見た。そこにはよくわからないちんちくりんな化け物がいた。ぬいぐるみ?後ろを振り向くと鏡にうつっていた化け物が見える。どうやら鏡じゃなくても見えるらしい。
「驚いたか?」
そいつは言葉を発した。
「そりゃ、まぁ、こんなもん見たら誰だってびっくりする。お前、何?」
「俺か?うーん、そうだなー…多分、死神だろうな。」
「死神?俺、死ぬの?」
「ああ。
「ふーん。俺、死ぬんだ。」
「何だ。薄い反応だな。」
「俺が死んだところで誰も悲しむ人もいないし。それに、何のために生きてるのかもわかんねーからもうすぐ死ぬって言われてもあっそうって感じ。」
「若いのに随分、悟ってるんだな。」
「まぁ来世に期待しとくよ。で、余命宣告して俺は何すればいいの?」
死神が現れたからには俺は何かしなければいけないのだろう。何か死ぬ前にやることでもあるのだろうか。
「いや、特にない。」
「は?ないの?余命宣告して終わり?」
「そうだ。」
「余命知って好きにどうぞってか?別に知らなくてもよかったんだけどなーっつーかそもそものお前の言うことも間に受けないけどな!」
わけのわからないものが見えたせいで信じそうになった。
「まぁ知っておいた方が色々準備できるんじゃないか?やりたいことがあればやっておけよ。」
死神のアドバイス。
「やりたいことなんかねーよ。強いて言えばゲームくらいだけど。俺、死ぬのがわかってるからって今までの日常変えたくないんだよな。一ヶ月後死ぬなら死ぬで別にいいよ。死ぬかも死なないかもどっちでもいいわ。」
「自分の人生なのに他人事だな。」
「自分の人生だからだよ。ちなみに死因って何なんだ?」
「それはヒ・ミ・ツ。」
「あっそう。じゃあ死ぬの楽しみに待ってるわ。」
俺はテキトーにあしらった。
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