盗賊狩り
セリは剣を抜いて近くにいた盗賊を斬り捨てる。
「き、貴様っ!!」
それを見ていたもう一人の盗賊が、斧を振り下ろしてくる。
セリはそれを軽い身のこなしで交わして、横腹に剣を突き立てた。
「くそっ!!」
更にもう一人の盗賊が、セリの背後から短剣を突き刺そうとしてくる。
背後からの攻撃も容易く避け、剣で盗賊の首を斬り落とした。
「
そのまま、セリは石の弾丸を射出して、更にもう一体の盗賊を仕留める。
今まで戦ってきた一級冒険者や王国軍、そしてストレイルに比べればまるで相手にならない。
所詮はゴロツキの集まりに過ぎない。
最後に残った一人も、セリが圧倒的な猛者であることに気付きその場に尻もちをついて後退りする。
「逃げるな」
逃げようとしていた盗賊に剣を向け、動きを止める。
「お、お金なら……渡します、い、命だけはっ!」
怯えた表情を浮かべた盗賊は硬貨が入った麻袋を渡してくる。
「食糧は?」
今後の事も考えると金品も欲しかったが、それ以上に今生きる為の食糧が欲しい。
「も、持ってないっ……です」
「あー、そう」
セリはそう言うと、剣を振り下ろそうとする。
「ま、待ってくださいっ!! 近くに、俺達の野営地があります!! そ、そこにはあります!!」
死を感じた盗賊は、死に物狂いの早口でそう言い放った。
「じゃあ、そこに案内して欲しい。そしたら命は助けてあげる」
「あっ、ありがとうございます……あ、案内させて……もらいます」
セリはそういい、盗賊の背中に剣の先をあてながら野営地とやらまで向かわせる。
少しでも逆らえば殺されると言う恐怖感から、盗賊はセリに従う他なかった。
剣を突き立てられながらも、二十分ほど歩いていると目の前に炎の光が見えてくる。
いくつかのテントが張られ、馬車が一台置かれている。それの中心には焚き火があった。
焚き火の周辺には、盗賊達が集まって談笑しているのが見える。
「こ、ここです……い、命は助けてくれるんですよね?」
「うん、案内ありがとね」
セリは、盗賊の問いを無視して首を斬り落とす。
『助けるんじゃなかったんですか?』
「最初からそんなつもりはないよ」
どうせ、ここで生かして置いたとして他人を食い物にするような人間だ。
生きていて価値など無い。
そう言う自分は、最もどうしようもない殺人鬼であることは理解しているのだが。
セリは、盗賊達の方へと向かう。
「何者だ、お前!?」
セリの存在に盗賊達が気付いたのは、かなり距離が近づいてからの事だった。
セリの外見はまだ10代半ばの少女ではあるのだが、その身体に負った傷と返り血を浴びた風貌から只者ではない気配を放っている。
当然、外見が幼いと言えど警戒はする。
その盗賊達の予想は当たっているのだが。
「な、なっ!?」
「た、助けっ……」
盗賊達を影が包み込み、一瞬のうちに貪り尽くしてしまう。
数百人を一気に飲み込んでしまう影だ。この程度の盗賊なら、1秒もかからず喰らい尽くせる。
辺りは静寂に包まれた。
盗賊達は、もう居ないと思っていた時だった。
「なんの騒ぎだ……たくっ」
天幕の中にいた一人の盗賊が、出てくる。
どうやら、盗賊の頭目らしそうな男だ。
泥酔しているのか、顔が赤く足取りもおぼつかない。
セリはそれを、瞬時に放った
セリは念のため
そこにあった生命の反応は二つ。
自分自身と、もう一人――馬車の中にいるようだ。
恐らく盗賊だと思われるが、物資が詰まった馬車を吹き飛ばしてしまうのは、勿体無い。
セリは中を確認してみることにした。
馬車の荷台は何処からか略奪してきた食糧、金品、衣服が山積みに置かれていた。
『あらら、誰もいませんね』
「そんなはずはない……はず」
確かに見た感じでは、人の気配ない。
しかし、荷台の奥へ少し進むと人影が見えた。
そこにいたのは、エルフと思わしき少女――いや、エルフよりも耳がやや丸みを帯びている。ハーフエルフだろうか。
ブロンドの長髪で、顔立ちは非常に整っていて、かなりの美形だ。
現状ズタボロの有様のセリと比べれば、天と地の差はあるだろう。
それが足を鎖で繋がれ、荷台の奥で拘束されていたのだ。
「だ、誰……?」
少女は怯えた表情をセリに向けてきた。
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